2019年12月20日 (金)運動会もパブリックビューイングの時代?
※2019年10月2日にNHK News Up に掲載されました。
秋の運動会シーズンを迎え、あるキーワードがネット上で話題になっています。それは「パブリックビューイング運動会」。新しい在り方、調べてみました。
ネットワーク報道部記者 大石理恵・高橋大地
あったらいいな
「運動会のパブリックビューイング。そんなのあったらいいな」
先日、小学3年生の長男の運動会に行ってきたばかりの私(大石)の正直な感想です。
というのも連日の残暑。私が行った運動会では、直射日光が当たらない体育館がお弁当置き場として解放されていました。
あそこで応援できたらと思ったのでした。
調べて見るとありました。
千葉県流山市の小山小学校です。
映像見ながら進行チェック
この学校では数年前から運動会のパブリックビューイングを実施しています。
理由は、1300人を超える児童数。
児童とその親、祖父母などを含めると運動会の日に集まるのは5000人前後にも上るそうです。
グラウンドに敷物を敷くにもスペースが足りなくなったため、学校では、保護者向けに教室や体育館を開放。
そのうえでグラウンドの様子をカメラで撮影し、既存の校内放送の設備に接続して教室のテレビや体育館の大型スライドに映像を映し出しました。
保護者はその映像を見ながら進行状況をチェック。
自分の子どもの出番になるとグラウンドへ出て、応援や撮影をするそうです。
学校によると例年、お父さんたちの利用が目立つそうで、室内で休みながら、わが子の出番が近づいたら撮影係として繰り出す姿が見られるようです。
ことしも9月28日に運動会が開かれましたが、残暑をしのぐ意味でもこの仕組みが役立ったそうです。
「児童からも保護者からも大きな不満の声は上がっていません。数年でこの仕組みが定着し、人数が多くても混乱なく運動会を実施できています」(山口謙校長)
人気のベッドタウンで
流山市は、鉄道や高速の整備で都心へのアクセスが向上したことなどで人気が高まり全国の自治体の中で人口増加数のランキングがことしは9位。
特に30代から40代が多くこうした世代の子どもたちも増えているのです。
流山市ではもう一つの小学校でも運動会のパブリックビューイングが行われていました。
流山市に引っ越して来て、実際にパブリックビューイングを体験した父親は、「涼しい室内で過ごせて熱中症の心配もなく安心して楽しめました。弁当も砂ぼこりがかかることなくきれいな状態で食べられて快適でした」と話していました。
成長するベッドタウン、ここで注目されているのが、「パブリックビューイング運動会」なのです。
広まるパブリックビューイング
このパブリックビューイング、東京の荒川区立ひぐらし小学校でも数年前から導入しています。
理由は、混雑に加え年々厳しくなる暑さです。
この学校では毎年5月に運動会を行いますが、ことしの開催日は、東京の都心で日中の最高気温が31度9分の真夏日となりました。
種目や学年を字幕で表示
この学校のシステムは、少し本格的です。
撮影するのは学校の教員ですが、映像はカメラがつながったパソコンを通じてサーバーに送られ、その映像が教室の中に設置されたテレビに映し出されます。
今、行われている種目や学年を字幕で表示することもできます。
このため自分の子どもが参加する種目が近くなったのを確認したうえで、会場に移動することもできるということです。
「運動会は5月に行っていますが、気温が上がることも多く、熱中症の心配などもあるので、ご高齢の方も含めて涼しい環境で見てもらうことができるので役立っています」(荒川区立ひぐらし小学校の柿原直昭副校長)
IT環境整備が契機に
運動会のパブリックビューイングは、さらに広まっていくと見られます。
この学校にあるシステムを開発した、ソフトウェア開発会社の「富士ソフト」によると、きっかけは、教室にIT環境などを整える「スクール・ニューディール」という10年前の国の政策にあったといいます。
この時に、全国の学校にデジタルテレビが整備されましたが、その活用方法の1つとして、ライブ映像の配信が提案されました。
当初は、児童が全校集会で体育館などに集まらず、教室で開くことなどに利用されていましたが、その後、運動会でも活用されるようになりました。
これまでにこのシステムを導入している学校は全国でおよそ900校。
会社では、「教育ICT設備の導入が進む中で、電子黒板に素早くデジタル教材を表示したり、ハイビジョンで参観の様子を配信したり、さまざまな用途に対応できるようになっています。運動会でのライブ映像配信も今後さらに広がるのでは」と話しています。
YouTubeでも!?
運動会のパブリックビューイングについて、ネット上では地元の学校での実施を望む声が目立ちました。
「英断。これパラダイムシフトですね!」
「うちの小学校でも実施してほしい切実に!!校庭に人いすぎ。人数いすぎて自分の子見つけらんないんじゃぁぁ!」
さらに一歩進んでこんな声も。
「YouTubeなんかでライブ中継やればいいのにって思います。自宅で見たりスマホでチェックもできる」
これなら離れて暮らすおじいちゃん、おばあちゃんも見ることができます。
一方、「親の立場としては嬉しいんだけど子供たちのこと考えるとかわいそう。暑い中練習、本番と頑張っているのに…」とか。
「ここまでするくらいなら運動会をそもそもやめたらいいと思う」といった意見もありました。
時代と共に変わる運動会。
IT化の波がさらにその姿を変えるのでしょうか?
投稿者:大石理恵 | 投稿時間:14時20分