2019年09月13日 (金)知らなかったわ、年金保険料免除


※2019年6月17日にNHK News Up に掲載されました。

“知らない人が損をする”
そうしたことは世の中にたくさんありますが、「えっ、知らなかった。始まったならもっとしっかり伝えてよ!」とネット上で話題になっている制度があります。それが4月からスタートした「妊娠したら国民年金保険料が免除される」制度。知らないままでは、全く免除されない制度です。


ネットワーク報道部記者 野田綾 ・ 松井晋太郎

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忘れるなよおおおおお!!

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今月に入って飛び込んできたツイートです。多くの人に知ってほしいと、こうしたツイートが一気に拡散します。

注意点を呼びかけるツイートも登場しました。

shiranakatta190617.3.jpgおよそ6万5000円が免除されるものの、手続きが必要で自分が申請しないと全く免除されないのです。

話題となっている年金保険料免除の制度、詳しく調べてみました。

双子以上は6か月免除

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Q どんな人が対象になるの?

A 対象になるのは、国内に住む20歳から60歳未満の「国民年金の第1号被保険者」
わかりやすく言うと、妊婦本人が自営業やフリーランスで働いている場合、企業で働いているが厚生年金の対象にならず国民年金を払っている場合などです。
自分が第何号の被保険者なのか役所や年金事務所、ねんきんネットからのはがきなどで確認してみてください。

Q いつから、どのくらいの期間、いくらくらい、免除されるの?

A 出産する子どもの人数により異なります。出産予定の子どもが1人の場合、免除されるのは、出産日または出産予定日の月の前の月から翌々月までの4か月間です。

たとえば、6月17日が出産予定日の場合、前の月の5月、予定日の6月、そして7月、8月分が免除されます。また、双子以上の場合は出産日または出産予定の3か月前から出産翌々月までの6か月間免除されます。

この場合は月額の保険料は1万6000円余りなので、4か月から6か月で免除されるのは6万5000円から9万8000円くらいになる計算です。

shiranakatta190617.5.jpgQ いつの出産から対象なの?

A 平成31年、2月1日以降の出産からが対象です。2月に出産した方が免除の対象となるのは4月分のみ、3月の出産では4月と5月分などとなります。

Q 免除された期間の保険料の扱いはどうなるの?

A 受け取る年金が減ってしまうか心配ですよね。大丈夫です。免除の期間は納めたものとして老後の年金に反映されます。

shiranakatta190617.6.jpgQ 保険料を前納してしまった!

A 申請すれば免除される期間の保険料は還付されます。

Q 知らなかった!出産後に申請しても大丈夫?

A 大丈夫です!出産後の申請の場合も同じ期間の免除が受けられます。知らずに保険料を納付した場合は還付されることになっています。

Q 免除になった分の保険料はどのように賄うの?

A 国民年金保険を支払うすべての人が、月におよそ100円負担することになっています。妊娠された人を社会全体で支える仕組みです。

shiranakatta190617.7.jpgQ 免除されるのは自営業やフリーランスの人だけなの?

A 実は企業や団体に勤めている人はすでに平成26年4月から免除されているんです。自分で申請しなくても会社が手続きをしてくれるので、免除されていることに気付いていない人も多いかもしれませんね。今回対象になる人たちは、自分で申請しないかぎり免除されないので注意が必要です。

ネットで拡散
新しく始まった国民年金保険料免除の制度。制度ができたことをネット上で知らせる動きはいまも広がっていて、中にはマンガを使って制度をわかりやすくまとめているものもありました。
「偶然、制度を知ってこんな制度があったんだと思いました。知っている人ってあまりいないと思って自分で調べてみたんです。公的な機関の文書も分かりづらかったので少しでも分かりやすくできないかと描いてみました」(マンガを掲載した男性)。

大切なことを知らせる社会に

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いま、さまざまな公的な制度の中には本人の申請が基本になっているものがたくさんあって、“たまたま自身で気付いたり、知っている人が近くにいたり、役所の人が教えてくれたりしたから、制度を利用できる”、そんなことがよくあります。

気付かないと、利用するいわば資格を持っているのに利用できず、金銭的な面で損をしてしまうこともあります。

今回の制度も妊娠した人の負担を減らす目的があって、その目的が達成されるためには“知らされている”ことが大前提になりますが、現実はまだ十分に知らされてないようです。

そして“まだ知らされていない”人が多い中、ネットを使って制度からこぼれ落ちる人を救おうという動きが出ているのは、新しい流れだなと思います。

そして恥ずかしながらネットの声に気付くまでは、私たちもこの制度を知りませんでした。大切なことを伝える立場にある者として、自戒も込めて今回は書かせてもらいました。

投稿者:野田 綾 | 投稿時間:11時03分

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