2017年12月25日 (月)米国発"ユニコーン"上陸


※2017年12月7日にNHK News Up に掲載されました。

インターネット上でユーザーどうしが質問や回答をやり取りし合うQ&Aサイト。使ったことがある方も多いかもしれません。便利な一方で回答が本当に正確なのか? と気になったこともあるのではないでしょうか。ネット上で偽情報が拡散する「フェイクニュース」も社会問題化しています。こうした中、ベンチャーの聖地、アメリカのシリコンバレーに本拠を置き、世界で2億人が利用するQ&Aサイトが日本でサービスを開始しました。高い成長力に期待が集まる企業を指す“ユニコーン”に挙げられる、このサイト運営会社。日本上陸の狙いについて、フェイスブック社の幹部も務めた33歳のアダム・ディアンジェロCEOを直撃しました。

ネットワーク報道部記者 伊賀亮人

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<世界で利用Q&Aサイト>
Q&Aサイトは、インターネットのユーザーが知りたいことについて、質問を公開して回答を募り、それに対して別のユーザーが回答を寄せるネット上のサービスです。

健康やエンターテインメント、恋愛など幅広い分野について、誰でも実名や匿名で質問や回答を寄せられるサイトもあれば、会員制のものや、分野を限定して法律や医療の専門家が回答するものもあります。

日本では、IT大手の「ヤフー」や、NTT傘下の検索サイト「goo」などがサービスを展開しています。「goo」は月間およそ7000万人が閲覧。ヤフーが提供するサイトは、およそ4200万件が会員登録されています。

bei171207.2.jpgこうしたサイトの主な収益源は、掲載される広告収入です。海外では、アメリカのIT企業「グーグル」や中国のネット検索最大手「百度」が提供するサイトなど数多くのサービスがあり、Q&Aサイトは世界中で利用されています。


<“ユニコーン”来日の狙いは?>
先月14日、アメリカの会員制Q&Aサイト「Quora」(クオーラ)が、英語やスペイン語などに続き、日本語版サービスの提供を始めました。

Quoraはアメリカ・シリコンバレーで2009年に起業され、今では、月間のユニークビジター数が世界で2億人に上るサイトに成長しました。

bei171207.3.jpg起業して間もない、スタートアップ企業の中でも極めて有望な企業は「ユニコーン」と呼ばれていますが、Quoraは配車サービス大手の「UBER」や民泊サービスの「Airbnb」などとともに、その1つに挙げられています。

bei171207.4.jpgそんなQuoraのCEOを務めるのは、フェイスブック社の初代CTO(=最高技術責任者)も務めた、アダム・ディアンジェロ氏(33歳)。日本上陸の狙いは何か。直撃しました。

bei171207.5.jpgQ.なぜ、日本へ進出を決めたのですか。
A.このサービスが重視しているのは回答される情報の「質」です。質を高く維持するためにこれまでは英語版に集中してきましたが、十分成長したことから1年程前、スペイン語で提供を始め、そして準備ができたことで日本語版を始めたのです。

英語版を始めた時もそうでしたが、他のサイトとの最も大きな違いはやはり「質」だと思っています。私自身、過去に日本を訪れた経験から日本の文化は品質をとても重視すると感じています。それはわれわれの目指すことでもあるので日本文化にうまくはまると期待しています。



ディアンジェロ氏はこのサイトの特徴として3点を挙げました。

1.「実名」
ユーザー会員は実名で登録し、質問や回答を寄せることが推奨されています。これまでにもアメリカのオバマ前大統領やカナダのトルドー首相、それにウィキペディアの共同創始者ジミー・ウェールズ氏といった著名人が実名で回答を寄せています。匿名と違い、実名はよりよい回答を寄せるようになり、偽の情報などを投稿しづらいというのです。

bei171207.6.jpg2.「評価システム」

回答が寄せられると、質問者などのユーザーがその内容を評価をします。
また、特定の分野で専門知識を持つユーザーがその分野の回答を評価した場合には、よりよい内容だと機械的に判断されます。高く評価された回答がより多くのユーザーの目に触れるようにすることで、情報の質を高めるのが狙いです。

bei171207.7.jpg3.「機械学習」


bei171207.8.jpg質問が投稿されると、人工知能による「機械学習」で解析した質問や回答、ユーザーの経歴などを元に、その分野に専門性を持つと判断した会員に自動的に回答を依頼します。それが、専門性が高く詳しい回答が寄せられることにつながると言います。また、回答に他のユーザーを攻撃し炎上させるようなものを含む投稿を自動的に検知することで、望ましくないコンテンツが表示されにくくしたり、1人1人のユーザーが興味を持ちそうなトピックを自動で推薦したりするほか、質問内容に関連した広告を表示する「パーソナライゼーション」を行っているとしています。

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<「まとめ記事サイト」問題は起きないか?>
日本では、去年、「まとめ記事サイト」が、根拠が不明確な医療や健康情報を載せていたことが大きな問題となりました。

bei171207.10.jpgQ.根拠が不明だったり、不正確な内容などが投稿されたりしないのでしょうか。
A.「信頼性」はとても重要。その意味でもユーザーが実名を使えば、回答への信頼性は高まりますし、例えば医療問題について医師が評価すると、回答が正確かどうかを判断する基準になります。このサービスでは、今のところ指摘するような問題は起きていません。

Q.ユーザーが偽名を使う可能性はないのですか?
A.現実の社会で他人がどのくらいの頻度であなた相手に偽名を使うことがありますか? ほとんどないでしょう。また、偽名を見つけたユーザーは会社に報告できます。さらに、著名人の場合はいくつかの基準を元に本人かどうかも検証しています。

Q.回答の内容は検証しないのですか?
A.「評価」と「機械学習」だけです。確かにこのサービスも100%完璧ではない。しかし、通常ネット上で見るような他のサービスと比べて、問題の程度はかなり低いと考えています。それは、われわれが「質」を重視しているためです。

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<日本市場の攻略なるか?>
Q.日本は新規参入が難しいとも言われますが?
A.わたしたちは、学び適応していくことを重視している会社であり柔軟であり続けたいと考えています。日本の人たちが言う「カイゼン」、それは我々の哲学でもあるのです。

Q.どのようにユーザーをサイトに呼び込んでいくのですか?
A.サービスそのものが自然に成長していくと信じています。人が人を呼びSNSで回答がシェアされ検索エンジンでヒットし、さらに新しい人が使うことで成長するのです。

Q.今後のユーザー数の目標はありますか?
A.具体的な数値目標は定めていません。英語版サービスを始めた時、他のQ&Aサイトを調査しましたが、多くのケースで、開発チームが経営や投資家から可能な限り早く数字を伸ばしていく圧力をかけられていたとわかりました。

品質基準を下げれば数字を伸ばすことはできますが、われわれは野心的な目標を立てないように気をつけています。英語版では5年たつまでは、サイトで広告を表示しませんでした。英語版のようにユーザー数を獲得した後、広告を流したいと考えています。そして質問に関連した広告を流すことで、広告主にもユーザーにも役立つものになります。このモデルを日本語版でも続けたいと考えています。

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<シリコンバレー方式の今後は?>
野心的な数値目標は定めないー。
ノルマなどによる無理な目標設定を背景に、不祥事に揺れる日本の経済界にとっては耳の痛い話だとも感じました。

一方で、ディアンジェロ氏が認めるように、このサービスも完璧ではなく、偽の情報が投稿される可能性はゼロではありません。ある意味では、回答が正確かどうかを判断する「リテラシー」を使う人自身に求めているとも感じます。

成功するかどうかはディアンジェロ氏自身が強調する、情報の質が本当に確保され日本のユーザーに認められるかにかかっているのではないでしょうか。

今後、シリコンバレーで培ったテクノロジーと哲学が、日本でどこまで浸透するのか注目したいと思います。

投稿者:伊賀亮人 | 投稿時間:16時24分

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