2020年04月23日 (木)こころから好きだ、猫 でもね...


※2020年1月14日にNHK News Up に掲載されました。

今も続く猫ブーム。SNSにも、映画やCMにも、いたるところに猫、猫、猫。飼い主は愛猫をかわいいと思うからこそ、ついちょっかいを出してしまいますが、嫌がっている猫がかんでくることもありえます。考えてみませんか、ペットにかまれるリスクを。

ネットワーク報道部記者 大窪奈緒子・ 斉藤直哉

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私も猫にかまれて感染しました

昨年末、あるツイートが話題になりました。

愛猫にかまれ、パスツレラ症に。
猫に本気がみされた時は、その日のうちに病院へ。
“血が止まらない”
“ジンジン&ズキズキした痛みがある”
“腫れる”
といった症状があれば迷わず病院へ!

同じような経験をしたという大阪府に住む19歳の大学生の男性に話を聞きました。

koko.20200114.2.jpg※写真はイメージ

男性は、1年ほど前に実家から祖母の家に引っ越し、そこで飼われていた当時4歳のオス猫をかわいがるようになりました。
そして猫とじゃれあっていたところ、手の親指の付け根あたりを出血するほど強くかまれてしまい、その後1時間ほどたつと、親指と人さし指が動かなくなるほど手が腫れてしまったといいます。

koko.20200114.3.jpg※写真はイメージ

翌日になって病院に行くと、「パスツレラ症」と診断され、飲み薬が処方されて3日ほどで腫れはひきましたが、当時は全く知らない感染症だったため非常に怖かったと振り返ります。

パスツレラ症って?
「パスツレラ症」とは、いったいどんな病気なのか。
日本大学医学部臨床検査医学分野で、医師とともに動物から人への感染症を研究してきた獣医師の荒島康友さんに話を聞きました。

koko.20200114.4.jpg画像:パスツレラ菌

荒島さんによると、この病気を引き起こすのは、猫や犬の口の中などにいて、猫や犬には無害な「パスツレラ菌」
症状としては、猫や犬にかまれたりひっかかれたりしたあと、およそ30分から数時間して激痛や発熱を伴う患部の腫れが見られます。

koko.20200114.5.jpgまた、猫や犬になめられて口や鼻などの粘膜から菌が入り込むと、気管支炎や肺炎などの呼吸器症状を引き起こすこともあります。
免疫力が低下している場合は重症化しやすいそうです。

日本大学医学部臨床検査医学の研究チームが2011年、全国の1000余りの臨床研究病院を対象にパスツレラ症の症例数を調べたところ、1年間で700余りの症例が報告されたということです。

koko.20200114.6.jpg菌が体内に入り込むと必ず発症するわけではないそうですが、荒島さんは「9年前の調査結果は氷山の一角で、ペットのかみ傷に対するパスツレラ菌検出の検査が全例で行われれば、相当な数になるのではないか」と話しています。

パスツレラ症だけじゃない

ペットの猫や犬が原因でかかってしまう病気は、もちろんパスツレラ症だけではありません。
厚生労働省が発行している「動物由来感染症ハンドブック」には、猫や犬が病原体を持っている感染症として、パスツレラ症以外に次の病気があげられています。

koko.20200114.7.jpg猫ひっかき病:ひっかかれた皮膚から感染して水ぶくれや発熱を引き起こす。
カプノサイトファーガ感染症:発熱や頭痛、吐き気を催し、重症化すると敗血症や髄膜炎を引き起こす。
トキソプラズマ症:妊婦が感染すると胎児への影響が懸念。
重症熱性血小板減少症候群=SFTS:西日本を中心に感染したマダニからヒトへの感染が問題に。

何人が感染?
正直、こんなにあるのかとぞっとしてしまいそうですが、では、いったいどれくらいの人がペット由来の感染症にかかっているのでしょうか。

厚生労働省に問い合わせましたが、ペットからヒトに感染するおそれがある病気の多くは、法律で保健所に報告しなければいけない感染症に定められていないため、残念ながら統計はありませんでした。

koko.20200114.8.jpg一方で、さまざまな感染症の調査研究を行っている国立感染症研究所に尋ねたところ、正確な統計データはないとしながらも次のような回答がありました。

koko.20200114.9.jpg国立感染症研究所 担当者
「ペット由来の感染症では、パスツレラ症の患者が最も多いと思われます。それに次いで猫ひっかき病が多いと考えられています」

やみくもに恐れる必要はない

ペットとの生活を楽しむためにも、こうした感染症にかからないようどんなことに気をつければいいのか。
改めて獣医師の荒島さんに聞きました。

koko.20200114.10.jpg獣医師 荒島康友さん

獣医師 荒島康友さん
「どんなことをすると感染するおそれがあるのか、感染がおこるしくみやリスクをきちんを知ったうえで、衛生管理を適切に行ってペットと正しくつきあえば、やみくもに恐れる必要はない

とりわけ重要なのは、ペットの体内にいる細菌などからの感染経路を断つこと。その具体策としてあげてもらったのが、以下の6か条です。

koko.20200114.11.jpg1:ペットを寝室に入れない(夜中に口をなめられることがあるため)
2:口をなめさせない
3:食器をペットと共有しない
4:ペットと幼児だけにしない
5:持病を悪化させない(糖尿病や肝炎、呼吸器系疾患などのある人は、免疫が低下しないよう体調管理に気をつける)
6:ペットの爪を切る(爪にも菌が)

いずれもよくわかるのですが、例えば1、ペットと一緒に眠るのって幸せですよね。

そんな人向けに荒島さんは「どうしても一緒に寝たいという人は、口をなめられないよう、せめて就寝時にマスクを着用するなど対策を講じてほしい」とアドバイス。

一方で、原因の分からない体調不良や発熱、気持ち悪さがあった場合は、きちんと医療機関にかかり、その際は、ペットを飼っている期間や、傷を負った時の状況をメモや図表にして、きちんと伝えることが大切だと指摘しました。

パスツレラ症になったからこそ
最後に、冒頭でご紹介した大阪府に住む大学生の男性の、猫にかまれてパスツレラ症になったからこその心境の変化をお伝えします。

koko.20200114.12.jpg19歳の大学生
「猫が嫌がっているのに、自分が遊びをついエスカレートしてしまってかまれてしまいました。いまでも猫はかわいくてしょうがないですが、遊びにも加減が大事だと分かりました。よりよい猫とのつきあいにむけて、この病気のことがもっと知られるようになればいいと思います」

投稿者:大窪奈緒子 | 投稿時間:12時27分

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