2019年11月21日 (木)既読のつかないLINE


※2019年9月3日にNHK News Up に掲載されました。

「亡くなった僕の父に、妻がLINEを送り、『既読つかないかしら』と、ときどき楽しそうに眺めてる。この妻、いいな。内容は、聞かないでいる」

何気ないこのツイートをきっかけに、亡くなった親や友人に、メールやSNSのメッセージを送った経験があるという、投稿が相次いでいます。もう決して「既読」にはならないはずのメッセージ。どんな思いを投げかけているのでしょうか。

ネットワーク報道部記者 目見田健・ 加藤陽平

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なかなか既読がつかないわね

kidoku.190903.2.jpgツイートをしたのは、一色伸幸さん。映画「僕らはみんな生きている」や「私をスキーに連れてって」などを手がけた、映画やテレビドラマ、舞台作品などの脚本家です。

取材に答えてくれた一色さん。7月に父親を亡くし食卓を囲んでいる時、「なかなか既読がつかないわね」と言いながら、父親にLINEを送る妻の様子を見て投稿したそうです。まだ、父親が亡くなってからあまり間がない時期でした。

kidoku.190903.3.jpg一色伸幸さん
「気持ちの整理がつかない時期でしたが、気軽にLINEを送りあっていた妻と父の関係がかいま見えて、ありがたいなと感じました」(一色さん)

空の上から見てくれると
この投稿は瞬く間に拡散、9月3日現在で、1万6000を超えるリツイートがあります。そして似たような経験を返信・リプライする人が相次ぎました。
「亡くなった母に、父が毎日LINEをしています。その日あったこととか、日記のような内容で」
「私も急死した友人のメッセンジャーに写真を送っていました」
読まれるあてのないメッセージ。見られるあてのない写真。届かないとわかっていながら相手への思いや日常のできごとを、送っているという投稿でした。
「絶対につかない既読だけど空の上から見てくれてるといいな、、」
「非現実的なのはわかってるんですがどおしても夢見ちゃいます」

SNSで亡き人あてにことばや思いを送る気持ちをそう表現している人もいました。

きっと読んでいる
一色さんのツイートに、「去年亡くなった妹のラインに楽しかったことや愚痴をラインしてます」と返信した女性に話を聞きました。女性は56歳。去年5月、妹が5年間の闘病の末、50歳で亡くなったそうです。妹の運転する車でランチに出かける、仲のいい姉妹でした。2人とも子育てが一段落して、もっと、もっと一緒に遊ぼうと話していましたが、それもかなわなくなってしまいました。

kidoku.190903.4.jpg今も月に2、3回、LINEを送ると言います。
「またランチ行きたいね」
「カープが勝ったよ」
内容の多くはたあいない出来事や近況報告。しかし時に、思いがあふれます。
「会いたくてしょうがないよ」
“天国できっと読んでいる”そんな気持ちで、ことばを送り続けているそうです。

理解は二分
一色さんは続けてこんな投稿をしています。

kidoku.190903.5.jpg一色さん自身も亡き人に思いを伝えるシーンをドラマで描いていたようです。
この場面を撮った監督は「分からない派」だったようですが、一色さんは、「このシーンは素晴らしい出来だった。こういうことはよくあって書くのも撮るのも『よく分からない』ことを手探りでやった方が面白くなったりする」などと当時の思い出を投稿していました。

寄せられているたくさんの返信についてこう話していました。
「自分自身はてれくさくてできないけれど、現代のツールを通して語りかけ、みんなそれぞれの思いを整理しているのだなと感じています」

押せない再生ボタン

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一色さんが描いた亡き人への留守電。逆に亡き人が残した留守電への思いを投稿した女性もいます。

「父が他界した14年前はまだガラケーだったので、英国に住んでいた父は自宅の電話に留守電をよく残していました」

「26歳の私は、まだ死が突然やってくる実感がなく、当時ちゃんと聴きもしなかった…」

「遺灰になって戻って来た父の声をたまに聴きたくなるのですが、いまだに留守電の再生ボタンを押せないでいます…。声を聴いたらきっと涙が止まらなくなってしまう」

kidoku.190903.7.jpg大辻惠麻さん
投稿したのは医師の大辻惠麻さんです。

大辻さんは、3歳の時に両親の離婚でイギリス人の父親エリックさんと離れ、母親と日本に帰国しました。その後、23歳から29歳まで鹿児島の大学に通うため一人暮らしを始めました。そんな一人暮らしのアパートの電話に留守番電話を残していたのがエリックさんでした。

kidoku.190903.8.jpg父親のエリックさん
「いつも『Hello、Emma chan』で始まるとりとめの無い内容だったので、当時はじっくり聞いていなくて。娘が心配で電話をかけてきてくれたんでしょうね」(大辻さん)

大辻さんは英語で折り返しの電話をかけるのが面倒だったこともあり返事はしませんでした。ただ遠く離れた父親からのメッセージであったので留守電は消去しなかったそうです。

15年ごしの…
しかし、大辻さんが26歳の時、イギリスでエリックさんが亡くなります。ずっと離れて暮らし、父親の最後をみとれなかったこともあり、今でも「父親はまだ、生きているんじゃないか」と思うことがあるといいます。
「医師なので人の死をちゃんと受け止めていたつもりだったのですが、身内となると話は全く別ですね」(大辻さん)
処分しようかと悩んだものの留守番電話はいまも捨てられずにいます。
「いつか、心の準備ができたら父親のメッセージを聞こう」。
そう思ってから10年以上たっていました。今回の一色さんのツイートに背中を押された大辻さん。今月18日の父親の命日に合わせてメッセージをじっくり聞いてみようと思っています。

kidoku.190903.9.jpg中学時代の大辻さんと父親
「人それぞれ、お別れのしかたはあると思います。私の場合は、留守番電話を聞いてかけ直しても父親につながらないことがわかったとき、本当のお別れになるのかなと思います」
最後に大辻さんは、こう話していました。
「留守番電話を聞いてひと言、『Thank you!』って伝えられれば…」

投稿者:目見田健 | 投稿時間:12時09分

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