2019年05月22日 (水)家族のために生きる


※2019年2月20日にNHK News Up に掲載されました。

タレントの堀ちえみさんが、みずからのがんを自身のブログで公表し、治療に専念する考えを明らかにしました。
「家族の為に、私はまだ生きなければならない」
このことばに、多くの人が心を動かされています。

ネットワーク報道部記者 高橋大地・松井晋太郎・木下隆児

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<同じ親として>
今回の公表を受けてネット上で目立ったのは、子どもを育てながら闘病する堀さんを同じ親として気遣うコメントです。

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<子どもたちにどう伝えたか>
堀さんはブログの中で、口腔がんと診断されたことを、子どもたちに伝えるべきか悩んで主治医に相談したことを明かしています。医師はこう答えたそうです。

「この病気は家族の理解・サポート・協力が必要です」
「場合によっては治療に長い期間がかかる場合もあります」
「子どもさんの年齢的な事も考えればきちんと向き合って話をしたほうがよいと思います」

ステージ4という状態で一時、「このまま治療せずに人生の幕を閉じてもいいのかな」とも考えたという堀さん。しかし、闘病生活を考え、堀さん夫婦は7人いる子どもたち全員に説明したのです。
「私が『生きる』為に、頑張らなければと決心したのは、末娘の涙と言葉でした。今思い出しても胸が張り裂けそうです。『お母さんは病気ばかりで可哀想な人生だった』と…そういう思いを、子供たちの心に残したままで、闘いもせずに諦めて良いのだろうか…主人と子供たち、家族の為に、私はまだ生きなければならない」


<僕は言えなかった>
「子どもへ伝えること。これは、想像以上に大変で難しい。告知当日にお子さん全員にお話をした。これは、なかなかできることではない。僕は娘にずっと言えなかった」
堀さんのブログを見てこうツイートしたのは、西口洋平さん39歳。4年前に胆管がんと診断され、今も小学生の娘を育て働きながらがんの治療を続けています。診断された当時、娘は6歳。両親と妻には、病気のことを説明しましたが娘にはどうしても伝えられませんでした。

190220kaz.3.jpg西口洋平さんと娘
「娘には言えませんでした。判断ができなかったんです。言っても分からないだろう。言ったところでどうなるだろうと考えると踏み出せませんでした」
今回、堀さんに家族に話すことを薦めた医師についても、西口さんは、こう指摘しています。
「治療をしていくうえで必ず家族とどう向き合うかということは非常に大切です。宣告された時は、極端に相談する人が少ないんです。医師もすごく冷静だったと思います」
西口さんの場合、病気のことを子どもに伝えたのは、がんの診断から半年後。妻が説明してくれたのだそうです。西口さんは気持ちがすごく楽になったことを覚えているといいます。
「隠す必要はないのですが、隠し事がなくなった事にほっとしたんです」


<同じ境遇の家族をつなぐ>
190220kaz.4.jpgこうした経験から西口さんは「キャンサーペアレンツ」というSNSのサイトを立ち上げました。子どもをもつがん患者とその家族が登録するもので、日記を投稿したりメッセージをやり取りしたりします。

治療の大変さや将来に対する不安だけでなく「医師に『がん患者は働くな、寝ていろ』と言われた」「PTAや近所のどの範囲までがんであることを知らせるべきか」などがんになってみて初めて直面するさまざまな悩みを同じ境遇の人に相談できるのです。

このサイト、がんを患う人たちの間で広まり現在、3100人余りが登録しています。

今、ステージ4のがんと向き合っている西口さん。「家族のために生きる」ということについて、こう答えてくれました。

190220kaz.5.jpg西口洋平さん
「僕は、娘はもちろん妻よりも早く亡くなると思います。10年後20年後どうなっているか分かりませんが、今を精いっぱい生きている僕の背中を見て何かを感じて強い大人になってほしい。僕がいなくなってもそれを糧にして強くなってほしいと思います。それは、決して悪い事ではないと思っています。毎日浮き沈みはありますが、家族の支えはまた頑張ろうというきっかけになっています」


<相次ぐ著名人のがん公表>
もう一つ、ネット上でコメントが多かったのは、著名人ががんを公表する動きについて。

堀ちえみさんだけでなく、歌手の桑田佳祐さんや、つんく♂さん、それに、元女子プロレスラーの北斗晶さんなど、近年、芸能人やスポーツ選手などの著名人が、がんが見つかったことを公表したり、闘病生活を報告したりすることが増えています。これについてネット上では…

190220kaz.6.jpg190220kaz.7.jpgこうした状況についてがんの治療に詳しい、長尾クリニックの長尾和宏院長は、「インターネットが発達する中でがんを公表することが特別なことではなく、普通の時代になったということだと思います。一般の人でもSNSなどで公表する人たちも増えています。がんと向き合うことは覚悟のいることで、いろいろな人に伝えたり、同じような病気と闘っている人たちがいると知ったりすることで安心できる側面もあります」と話しています。


<人生を重ね合わせて>
190220kaz.8.jpg堀さんが出演したドラマの1つに「スチュワーデス物語」があります。客室乗務員の訓練生役だった堀さんが、失敗を繰り返すたびにみずからを「ドジでノロマな亀」と言いながらも、厳しい訓練に耐える姿が人気を集めました。

30年以上前に放送されたこのドラマを見ていた人たちは今、7人の子の親となった堀さんをみずからと重ね合わせ見守っています。

「何かちえみちゃんはいつもの感じでのほほんと乗り越えてくれそうだよ」
「スチュワーデス物語では亀と呼ばれていた。亀は長生きするんだよ。応援しています」

投稿者:高橋大地 | 投稿時間:15時37分

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