2021年09月17日 (金)「卑劣な行為だ」「いたずらではすまされない」各地で怒りの声


※2020年9月2日にNHK News Up に掲載されました。

「○時○分に銃を乱射」「時限爆弾を爆発させる」いま、こうした危害を加えることを一方的に告げるメールが全国の自治体に毎日のように届いています。その数は、先月中旬以降で、少なくとも16の都府県で60件以上。メールが送りつけられた自治体や学校などは対応に追われ、住民サービスにも影響が及んでいます。「いたずらではすまされない」「卑劣な行為だ」と各地で怒りの声が上がっています。

ネットワーク報道部 記者 斉藤直哉・田隈佑紀
仙台局 記者 藤原陸人

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「卑劣な行為 犯人の検挙を」

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きのう夕方の宮城県利府町役場。熊谷大町長が記者会見を開き、憤りをあらわにしました。

「卑劣な行為だ。警察には犯人を検挙してもらいたい」

利府町は、きのう、町役場や公民館など3つの施設を終日閉鎖するという対応を余儀なくされました。理由は、役場に届いたメールです。次のような内容でした。

「午後4時半に正面玄関から侵入し、拳銃を乱射し、3階男子トイレに仕掛けた時限爆弾を作動させる。命が惜しければ、決行時刻の15分前にビットコインを送金すること」

hiretunakoui.200902.3.jpg役場では突然の閉庁に戸惑う人の姿がみられました。

庁舎を訪れた男性
「爆破予告は知らなかったです。いたずらにも程があるし幼稚だと思います」

仕事で訪れた男性
「非常に迷惑です。役場だけでなく多くの人にも迷惑をかけると思います」

役場には住民票や納税証明書の発行、転入・転出の届け出などのため毎日、多くの人が訪れていて臨時の閉鎖によってこうした窓口での手続きが受けられなくなったほか、公民館で行われる地元のサークル活動にも影響が出たということです。

利府町では東京オリンピックのサッカー競技が6日間で10試合行われる予定です。オリンピックに向けて他の自治体に比べて警戒を強めていたといいます。

利府町 熊谷大町長
「いたずらだと看過して大きな事故、事件につながったということも過去にあります。もしかしたら、テロを起こそうという考えを持つ人間かもしれず、今回は万難を排して終日、犯行時刻に備えました」

さらに隣県の山形県でも7つの市と町に役所の庁舎を爆破するといった内容のメールなどが送りつけられ山形市役所では庁舎の入り口で訪れる人に対して異例の手荷物検査を行いました。

hiretunakoui.200902.4.jpg山形市役所での手荷物検査

半月で60件以上 共通点も

いま、こうした悪質なメールやネットの書き込みが全国で相次いで確認されています。各自治体への取材やホームページに公表されたケースを調べたところ、先月中旬から先月末までのおよそ半月の間だけでも少なくとも16の都府県の60以上の自治体や大学に爆破を予告する内容のメッセージが送られていたことが分かりました。

それぞれの内容を見比べてみると、「正面玄関からダイナマイトを投げ込む」や「拳銃を乱射する」「トイレに仕掛けた爆弾」など表現や単語が共通するメールが多くなっています。

さらに、「9月1日の午後5時」や「9月2日の午後1時」など、違う場所で同じ時刻を指定しているケースも目立ちます。

各自治体などは警察に相談。業務の休止や建物の閉鎖などの対応を余儀なくされました。

「模倣犯招きやすく放置してはならない状況」

爆破予告が相次ぐ現状を、犯罪心理学が専門の東洋大学の桐生正幸教授はこう指摘しています。

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東洋大学 桐生正幸教授
「新型コロナの感染の影響が続いていますが、こうした犯罪は世の中に不満がたまっている状況で起きやすく社会が悪いんだということで犯罪行為が自分の中で正当化されやすい。模倣犯も招きやすく、エスカレートして実行に移す人も出るおそれがあり、放置してはならない危険な状況だと考えます」

周辺にも迷惑・被害広がる

影響は予告対象となった建物だけにとどまりません。

茨城県常総市に先月12日、市役所を爆破するという内容のメールが届けられたことを受けて、近くを通る関東鉄道はおよそ2時間にわたって列車あわせて19本を運休し、およそ950人に影響が出たということです。ほかにも沿線のあわせて10の駅でゴミ箱やロッカーを使用禁止とする措置をとったほか運休の時間帯には駅が閉鎖され利用客への影響が広がりました。

関東鉄道では被害額は公表していませんが「お客様や沿線にお住まいの方に大変なご迷惑がかかるのでこのような行為は絶対にやめていただきたい」とコメントしています。

事前には公表しない判断も

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石巻市役所

「どうせ、いたずらだろう」「犯罪を増長し、あおることになるのでは」「万が一、本当だったら…」 自治体は対応に苦慮しています。そのひとつが宮城県石巻市です。

7月24日、市のホームページに「庁舎を爆破する」といった内容の書き込みがあり、市では警察に届け出るとともに対応を協議しました。市民の安全を考慮して市役所を閉庁すべきといった意見も出ましたが、地元の警察からいたずら目的の可能性が高いと助言を受けたことから、市民を混乱させないことや警察の捜査に差し支えがないようにと事前に公表しないと判断しました。それでも安全を確保するため警察官や市職員らが庁舎内や周辺を巡回する対応を取りました。

石巻市管財課 大山健一課長
「予告に気づいてから予告時間まで公表すべきかどうかずっと検討を続けました。ただ、爆破予告は刑事事件であって私たちだけでは判断できないので、警察から意見をいただいて、警戒の態勢もとってもらうことから総合的に判断しました」

市役所ではその後、予告の時間になっても爆発や不審物は見つからなかったということです。また、爆破予告があったことが地元で報道されたあとも市民から事前に公表しなかったことについての問い合わせや苦情は寄せられていないということです。

石巻市管財課 大山健一課長
「最悪の事態を想定して情報提供すべきといった見解があることは理解していますが、自治体の規模や影響が及ぶ範囲などを考えて警察に相談しながらケースごとに判断していきたい」

初犯でも「実刑」の可能性 厳しく処罰されることに

本人はいたずらのつもりでも、法律上は、厳しく処罰されることになります。

元検事の大澤孝征弁護士によりますと、こうした爆破予告は「威力業務妨害罪」に該当し、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される可能性があるほか、見返りに暗号資産など金品を求めた場合は「恐喝罪」として10年以下の懲役に処される可能性があるということです。

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大澤孝征弁護士
「どれくらい業務ができなかったか、損害が発生したかによって刑が変わりますが、役所や学校は社会的影響が大きく刑は自ずと重たくなります。犯行が複数の場所に及び、影響を受けた人の数が多いなど悪質な場合は、初犯でも2年くらいの実刑になる可能性があります。最近はネットで情報を得て、爆弾を作ることは可能なこともあり、受け取った側は『いたずらだから』と無視することはできません。本当だった場合に備えて対策が負担になり影響は決して小さくありません。自分が陰に隠れて人が右往左往するのを楽しむという卑劣な犯罪で、犯人の側もそれなりの制裁を受けることを認識する必要があります」

投稿者:斉藤直哉 | 投稿時間:11時04分

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