2020年02月26日 (水)ペロリストの皆さんへ


※2019年11月25日にNHK News Up に掲載されました。

お札を数えようと指を「ぺろっ」
本のページをめくる時も「ぺろっ」
レジ袋を広げる時でも「ぺろっ」
こんな“ペロリスト”に向け、あるタクシー会社が通知を出しました。
思わずやってしまう人への愛のある「やめて!」です。

ネットワーク報道部記者 大石理恵・石川由季

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ある日突然、社長が…

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通達を出したのは横浜市に本社のあるタクシー会社「三和交通」。
11月22日の午後、社長から突然、管理職宛てにメールで一斉に出されました。
社内には、社印が押された貼り紙が掲示されているそうです。

pero.191125.3.jpg「今後一切全ての書類において下記の行為を禁ずる。指先に唾液腺と口の粘液腺によって口腔内に分泌される澄んだ液体等を施し、湿り気を得た指先を利用して書類や紙幣を改頁すること」

広報担当者から詳細を聞きました。

Q。通達が出た経緯について教えてください。

A。40代の社長自身が、若い頃に比べて指先の乾燥で苦労するようになりました。店のセルフレジで、商品を入れる時に袋がうまく開かず、指をなめるか否か葛藤した結果、「やってはいけない」と感じたことがきっかけでした。

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吉川永一社長

Q。ペロリストたちは、これまでも社内にもいたのですか?

A。ごくまれに、社内でも中年以上の役員の中で見かけることがありました。社長は、接客業なので誰かに見られているという意識をもって衛生的に仕事をしてほしいと思ったそうです。ちなみにタクシーの車内では、今のところ確認していません。

さっそく改善の動き
通達を出した後、受け取った10数人の社員から担当部署に、電話で「どういうことですか?」と問い合わせがあったそうです。
そして、指サックなどを使うようになった人もいるということです。

pero.191125.5.jpg共感の声 次々と
会社の「中の人」は、この通知をツイッター上にも投稿しました。

pero.191125.6.jpg共感の書き込みが相次ぎました。
「つ、ついにペロンチョ禁止令が!国で法律制定お願いいたします」
「昔プリント配るときに、そうやって湿り気をつけまくる先生がいて、プリントの隅が波打ってたの、イヤだった…」
「クセなんだろうけど、お財布からカードを出すのに、いちいちペロッとするおばあちゃんいて、毎回受け取るのがすごく嫌だった」
「うちの会社にも、同じ内容の通達出してほしい」

唾ハラスメントをなくして!

投稿を寄せた大阪府の50代の女性に話を聞きました。

女性は、学生時代から年配の男性教員が、教科書やプリントの端を「ぺろっ」とした指で触ることに不快感を感じていて、手渡されてもプリントの端の方を持たないようにしていたことを、今でもよく覚えていると言います。

pero.191125.7.jpg休日のたびに行く市立図書館でも、よく見かける高齢の男性が新聞を読む際、いつも「ぺろっ」としていたことから、ある日思い切って言いました。
「次に読みたいのでやめてください」。
ところが…
「なんじゃお前!」と大きな声でどなり返される始末。
図書館のスタッフに相談するも、対応してもらえませんでした。

こうした経験から、女性は今回の通達を、胸がすく思いで読んだそうです。

50代の女性
「『よっしゃ!』って思いました。ええ会社やなって、めっちゃうれしくなりました。通達をきっかけに少しでも“唾ハラスメント”がなくなってほしいです」

カビが生えることも

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岩手県立図書館(盛岡市)
図書館の中には対策を行っている所もあります。
盛岡市にある岩手県立図書館の新聞コーナーには、「めくる時に指をなめていませんか?」という掲示の横に、指先につける「滑り止めのクリーム」が置かれています。

pero.191125.9.jpg「滑り止めのクリーム」
利用者から見て、不潔であったり、不快であることだけではなく、県民の財産である蔵書を所有する図書館としても、唾液が紙についてしまうと、最悪の場合、資料にカビが生えてしまうこともあるため理解を求めています。
総務担当の安保和徳さん
「実際に長期保管している新聞紙の中には、隅が波打っているものも出てきてしまっています。すべての人が気持ち良く利用ができるようにしていきたい」

対策は?
これからますます空気が乾燥する季節。
どうすればいいのでしょうか?
ツイッター上には「チョココロネの形になるように手を軽く握り、親指と人さし指の間に息を数回吹き込むと、指ペロに似た効果がある」といったアドバイスもありました。

pero.191125.10.jpg滑り止めグッズもいろいろ

pero.191125.11.jpg全部付けてみました(親指は滑り止めクリーム)
確実に効果があるのは、市販の滑り止め用品を使うことです。
王道は滑り止め効果のあるゴム製の指サック。
アクセサリーのようなかわいらしいリング型もあります。
さらに、クリームタイプのすべり止めに、指先に巻いて使うタイプも。

文具メーカー「プラス」の担当者
「めくりにくくなるのは乾燥で指の摩擦力が落ちるためで、とくに秋から冬がニーズが高いです。高齢の方は指の脂質が落ちて摩擦力が落ちる傾向もあるようです。最近はデザインのかわいらしいものが好評で、指サックの市場は、ペーパーレスが進む中でも微増から横ばいで推移しています」
これからキャッシュレスやペーパーレスが進めば、ペロリストたちは自然に消滅するのかもしれません。

イヤなことをどう伝えるか
もう一つ、今回タクシー会社の通達で感じたことがあります。
それはやめてほしいことの伝え方。
ネット上では、自分が不快だと感じる他人の発言や行為をあげつらう投稿が目立ちますが、今回の通達は、文言もユニークで皆、苦笑いしながらも受け止めてくれそうです。

会社に聞くとこんな答えが返ってきました。
「文言は社長がみずから考えました。書類をなめてしまっていた人を一方的に傷つけたくなかったので、ユニークなクスッとできるような言い回しにしました。こういう文書は初めてだったので、社員みんな何事かと思いましたが、社内では笑みがあふれていました」

投稿者:大石理恵 | 投稿時間:11時47分

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