2019年07月17日 (水)"就活動画"やってみた


※2019年3月5日にNHK News Up に掲載されました。

「1分間の自己PR動画を提出してください」 本格的に始まった就職活動で動画の提出を求める企業が増え、学生たちから戸惑う声が聞かれます。
広がりつつある“就活動画“づくりはどれだけ大変なのか。記者も(上司に言われ)学生に戻って挑戦してみました。

ネットワーク報道部記者 鮎合真介・飯田暁子・目見田健 / おはよう日本 原田季奈
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<学生に求める動画とは?>
就職活動で学生に求められる動画とは、どんなものなのでしょうか。企業によって異なりますが、自己PRや学生時代に最も打ち込んだことをテーマに、30秒から1分程度の動画を求めるケースが多くなっています。

<PR動画作った学生は >
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実際にPR動画を作ったという学生に話を聞きました。現在、大学3年生で就活真っ最中の女子学生は、去年夏に企業のインターンシップに申し込む際、1分間の自己PR動画を求められたということです。

撮影場所や服装などは自由ですが、「可能性が無限大でかえってエントリーシートより難しい」との感想。最終的にはゼミの仲間に撮ってもらい、ただしゃべるだけでなく、フリップを使って演出しました。
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“一発芸”は…ゾウさん
20秒ほど時間が余ったため、ユニークな社風であることを考慮して最後に“一発芸”を入れた結果、無事に選考を通過したといいます。

この学生は「企業が何を見ようとしているのか、自分らしさをどう出せばいいのか、正解がないのが難しい。こだわりだしたらきりがなく、就職試験が多様化するのはありがたいとは思うが、負担は大きい」と話していました。

また、同じく就活中の男子学生は、スマホを三脚に取り付けて動画を自撮りしたとのこと。凝ろうとすればするほど時間がかかり、30秒の動画の撮影に2時間かかったといいます。結局、完成したのは締め切りぎりぎりで、表情が硬くなり、失敗したと振り返っていました。

中には音楽スタジオを借りて楽器を演奏する動画を撮った友人もいるといい、「どんな動画がいいのか悩ましく、いっそ、とことん凝って撮影してくださいと言われた方が気が楽です」と話していました。

<ネット上にも戸惑いの声>
なぜ就活に動画なのか。ツイッター上にも、就活中の学生とみられる声が多く投稿されています。
まずは動画を作ること自体に苦戦する声。
「自己PR動画って結局何が正解ですか?????」
「自己PR動画30秒でまとめる自信ない。カンペ作りで挫折中。ただでさえ国語苦手な人間がどうやって企業の心を射止めるのか」

内容が決まっても撮影に時間がかかるようです。
「自己PR動画作るに思わぬ苦戦を強いられ、気がつけばこんな時間に」
ツイートされたのは朝の5時半。

「1分の自己PR動画撮るのに4時間かかったよ… 面接の方がらくだったかもしれん」というツイートも。

「自分の時にあったら確実に心が死んでた」と、自分が就職活動をしていた昔を振り返る声もありました。

<記者も動画に挑戦1>
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今どきの学生は大変だなと話していたら取材は思わぬ展開に。

「よし。お前たちも実際に動画を作ってみるか」 上司のひと言で記者も動画を作ることになってしまいました。

その瞬間、私(鮎合真介)が思ったのは「何を話せばいいんだ?できればやりたくない…」。とはいえ動画作りの大変さを理解するには、自分でやってみるしかない。逃れられないと悟った私は、10年前の青臭いころの大学生に戻ったつもりでカメラを見つめました。

そして「私は大学で中東地域について学んできたので、自分の専門性を生かせる中東報道の記者になりたい。日本人にとって遠い地域だが、現地の複雑な情勢を分かりやすく、深く伝えられる記者になりたい」とNHKへの熱い思いをぶつけました。

しかし、動画を見た上司からはダメ出しが…。「中東報道をやりたいと言うなら、現地の言葉で自己紹介をしないとインパクトがない」 むむ、確かに。「あとは普通」。これはほめられているのか。とりあえず、「この動画で落とされることはない」とのコメントはいただきました。

<記者も動画に挑戦2>
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15年以上前に就職活動を経験した私(目見田健)も“気乗りしない”中でPR動画を作ってみました。

始めに思ったのが…。「何を話したらいいかわからない。やっぱり憂うつだ」 基本的に1発勝負の面接しか経験しなかった私。まず、困惑です。

同僚から向けられたスマホのカメラに緊張。意を決して…。「私は映画の製作を行ってきました。多くの人と1つの作品を作る喜びや人の意見を聞いたり、自分の意見を伝えることをその現場で学びました」 学生時代に取り組んだことを一生懸命、話してみました。

しかし、「やり直すべきかどうか」と悩みが残ったのに加えてこんな疑問も。「採用担当者は、この動画の何を見て何を評価するのかな? 自分の動画の印象はどうなんだろう」

上司に見てもらったところ、感想は、「凡庸」。自分でもそうだと納得します。「今の学生はすごいな。自分は、こんな就職活動にはついていけません」 実際に作ってみた素直な感想です。

<動画求める企業の狙いは>
就活に広がる自己PR動画。企業は何を狙っているのか、採用担当者に聞きました。
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USEN-NEXT HOLDINGS採用担当者 住谷猛 執行役員

「学生のやる気を見ています」 こう答えてくれたのは東京都内にある音楽や映像配信などを手掛けるUSEN-NEXT HOLDINGSの採用担当者の住谷猛 執行役員。

「数十秒の動画ですが、どれだけ準備に時間を費やしたのか見ればわかるものなんですよ。話す内容に悩んで何度も撮り直すなど多くの時間をかけたことがわかる学生ほど本気だと感じます」

それでは、「内容は問われないの?」と疑問を投げかけてみました。
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「インパクトのある動画、派手さはないが誠実な動画、タイプは違ってもその人の個性や魅力が伝わってくることが重要だと考えます」と説明してくれました。

さらにこんなケースも。ボクシングジムに通っていた女子大学生は、ジムで撮影した自己PR動画を送ってきました。採用担当者はこの動画の背景に注目。そこには動画作りに協力する多くのジム仲間が映っていました。

採用担当者は「エントリーシートで『アルバイトでリーダーをしていました』と説明するよりも、個人の就職活動に多くの人が協力していることが一目でわかり、周囲から愛されている」と感じ、人を巻き込む力があるという印象を持ちました。この大学生は採用されたということです。

この会社は「実際の面接での自己PRはほとんどの学生が練習もしていてうまいです。動画も同じで怖がる必要はなく、限られた時間の中で自分の魅力を詰め込んでほしいと思います」と話していました。

<動画提出やめた企業も>
中にはPR動画をやめた企業も。関東地方にあるプラント建設の大手企業は去年までの3年間、エントリーシートでは伝わりにくい個人の魅力をアピールしてもらおうと動画を学生に求めていました。

しかし、ことしは書類による選考に戻したといいます。担当者は「ことしの就職活動も学生の売り手市場が続いているので動画制作というハードルを設けると学生がエントリーしにくくなるのではないかと考えた」と胸の内を話してくれました。

「自分が見る立場で」
一方、大手商社の「伊藤忠商事」は、去年4月に入社した社員から自己PR動画による選考を始めています。広報担当者は学生に不安や戸惑いがあることについて、「説明会などでPR動画の撮影に対する不安を払拭(ふっしょく)できるように努めています。例えば撮影場所や背景、服装などは自由で、それによって判断が左右されることはありません。また奇をてらったことをする必要もありません」と話していました。

では、何に注目しているのか尋ねると、「熱意、人柄、それにコミュニケーションの取り方です」との回答。そのうえで「撮影には自然体で臨むことです。これは動画に限らず、面接時のコミュニケーションも同じです。自分が動画を見る立場だったら、どんな学生と働いてみたいかを考えてみることです」と学生にアドバイスを送りました。

私たちも身にしみて体験した就活生のつらさ。でも、これだけであなたの評価が決まるわけではありません。自然体で、誠実に、自分らしさをぶつけて就活に向き合っていきましょう。

<注目のコンテンツ>
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投稿者:鮎合真介 | 投稿時間:15時24分

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