2018年12月03日 (月)ドローンが牛追い!?
※2018年10月23日にNHK News Up に掲載されました。
小さなタヌキに群がる牛・牛・牛…。牧場に入り込んだタヌキが牛に取り囲まれる様子を撮影した映像がツイッターに投稿され、話題を呼んでいます。牛追いをしながら撮影したのはなんと小型無人機の「ドローン」。ドローンの活用、こんなところまで広がっています。
ネットワーク報道部記者 大窪奈緒子・目見田健
帯広放送局記者 佐藤恭孝
今月21日に北海道広尾町の牧場で撮影された映像です。
ツイッターに投稿されると再生回数は240万回を超え、
「牛さんかわいい」
「タヌキ大丈夫だったかな」
「牛さんの好奇心はすごい!」
「リアル犇(ひし)めく」
「ドローンで牛追いっすか。ペーターもびっくり」
など多くのコメントが寄せられました。
ドローンを使って映像を撮影したのは、酪農家の新海伸一さんです。新海さんは去年5月にドローンを導入。毎日朝と夕方、放牧している120頭の牛をドローンを使って集めています。
21日午後4時半ごろ、ドローンを飛ばしていたところ、100メートルほど離れた牛舎の近くに牛が集まっているのが見えたということです。
新海さんが何だろうと思ってドローンを近づけると牛の真ん中にタヌキがいたため、驚いてドローンのカメラで録画したということです。
そしてこのタヌキ、ドローンを回収したあと、牛舎に戻ると、いなくなっていたということです。
新海さんによりますと、牛舎には牛の餌のデントコーンなどがあるため、タヌキやキツネが入り込むことは時々あるということですが、牛に囲まれているのは初めてみたということです。
新海さんは「タヌキは逃げ遅れたのだろうが、牛に囲まれてもタヌキ寝入りをしてうまく逃げ出したのだろう。投稿に対する反響の大きさに驚いています」と話していました。
<こんなところにもドローンが>
ドローンの活用はこんなところにも広がっています。
静岡県焼津市では2年前、ドローンを活用する防災航空隊その名も「ブルーシーガルズ」を全国に先駆けて発足しました。
大規模な災害が起きた際に被災状況の把握や救助にドローンを役立てようというのがねらいで、16人の隊員の半数が市役所に5機あるドローンを飛ばすことができるそうです。
この2年間でドローンは、火災現場や土砂の崩落現場などに何度も出動。上空から撮影した映像を消防指令センターなどに送信しています。
焼津市防災部の鳥澤佑介さんは「戦略的な消火活動や復旧工事に役立っています。ドローンをより活用して、人命救助や防災に生かしていきたい」と話しています。
また今月22日、長野県の白馬村ではドローンを使って車が使えない山岳地帯の山小屋に物資を輸送するときの課題などを検証する実験が行われました。
山小屋の運営者などによると、山小屋への物資輸送は現在ヘリコプターを使っていて、年間およそ1000万円以上の費用がかかるということで、実験を続け、来年夏までにドローンでの輸送事業を始めたいということです。
<もはや飛んでない>
もはや空を飛ばないドローンも登場しています。
大分県の水族館「うみたまご」。水族館でドローン?少し不思議な感じもしますが、なんと水中専用のドローンも登場していました。
「うみたまご」ではことし8月の夏休み期間限定で魚の餌付けショーの様子をこの「水中ドローン」で撮影。目の前の水槽の中を泳ぐアジやエイなど80種類、1500匹の魚たちの迫力ある映像を水槽近くにあるモニターに映し出します。
水族館によりますと水中ドローンを使ったショーは全国で初めての試みだということで、ふだん、水槽のガラス越しに見る魚とはひと味違った映像に訪れた人たちからは「餌やりの様子に迫力がある」などととても好評で映像を食い入るように見つめる子どもも多くいたそうです。
水族館では「多くの人に喜ばれたので、また水中ドローンのショーを再開したい。さらに迫力ある映像を見てもらえるようにショーの演出も工夫していきたい」と話していました。
<そもそもドローンって何?>
そもそも、空を飛ばなくともドローンって言うの?国土交通省の担当者に聞いてみました。
国土交通省航空局運航安全課によると、「一般的には『小型の無人機』のことを『ドローン』と呼んでいます。航空法では遠隔操作で飛ぶことができる200グラム以上の重さを持つ、人の乗れない構造の無人機のことを『無人航空機』と呼んでいて、ドローンなどを含んでいます。人口密集地や物件の近くで無人航空機を飛行させる場合には国の許可や承認が必要で、操縦する人には十分な操縦経験が求められています」とのこと。
それでは水中ドローンはドローンなのでしょうか?
担当者は「もはやそれは船の一種なのでは?ちょっと分かりかねます」とのことでした。
<海事局に聞いてみました>
「それはドローンです」
そこで海事局の担当者に聞いてみるとこんな答えが返ってきました。担当者によりますと自立して水中を動く機械を「水中ドローン」と呼んでいるということです。
空を飛ぶドローンは止まると落下してけが人などが出る可能性がある反面、水中ドローンは止まると浮かび上がってくるだけ。このため、法規制はまだ進んでいないということで、ことしから有識者などと法規制が必要かどうか検討しているということです。
<やっぱり問題も>
さまざまな場所で活用されているドローン。一方で全国ではドローンの禁止を呼びかける観光地もでています。
歴史的建物が多く残る京都では外国人観光客が日本での規制を知らずに無許可で寺や神社の上空にドローンを飛ばすケースが後を絶たない状況だということです。
こうしたことから警察はことし7月、英語や中国語、それに韓国語で注意を呼びかける街頭活動を行い、ドローンが墜落した場合はケガをする人が出たり、文化財を傷つけたりする可能性もあるとして理解を求めました。
<ドローン すごいことに>
牛追いに、災害現場、山岳地帯の物資輸送に水族館の水槽の中。「ドローンってすごいことになっている」。今後もきっと「こんな所でも?」といった驚きの活用方法が出てくるのではないかとドローンの大きな可能性を感じた取材でした。
投稿者:大窪奈緒子 | 投稿時間:14時13分