2018年05月11日 (金)あなたのニオイは大丈夫?


※2018年4月17日にNHK News Up に掲載されました。

汗ばむ季節を迎え、自分の「におい」、気にしている人も多いのではないでしょうか。セクハラ、パワハラ、マタハラなど、さまざまなハラスメントが言われるなか、今、職場を中心に関心が高まっているのが“スメハラ=スメルハラスメント”なんです。あなたのニオイは大丈夫?

ネットワーク報道部記者 大窪奈緒子・後藤岳彦

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<ネットにも多くの投稿が>
満員電車の中や、空調がきいていない職場。

「におい大丈夫かな…」

気になることありますよね。職場や交通機関といった人が集まる場所で、においが原因で周囲に不快な思いをさせてしまう行為は“スメハラ=スメルハラスメント”と呼ばれ、関心が高まっています。

ana180417.2.jpgインターネット上でも「上司の口がくさい。スメハラだよ。いつもこのにおいで体調不良になる」とか、「会社でスメルハラスメントに悩んでいます。よい解決策はないものか」「猛烈な体臭を放っている同僚が暑い暑いと扇風機ガン回し。においが私へ直撃。気持ち悪くなって別部屋に避難してきた。スメハラー」など、さまざまな投稿があふれています。


<体臭 口臭 たばこのニオイ…>
化粧品メーカーの「マンダム」が職場のにおいについて去年5月に行った調査で、においに敏感な現代人の意識が浮き彫りになりました。

調査は、東京と大阪で働く25歳から49歳までの男女を対象にネットを通じて行い、1028人から回答を得ました。

それによると「職場のにおいが気になって仕事に集中できないことがあるか」という問いに対し、「自分や他人のにおいが気になり集中できないことがある」と答えた人は、半数を超える56.2%に上りました。

ana180417.3.jpgマンダムが行った調査より
「嫌だと感じるにおい」が具体的に何かについては、「体臭」が64.9%と最も多く、次いで「口臭」が59.3%、「たばこ」が55.5%でした。また、スメルハラスメントということばを「知っている」と答えた人は45.8%で、平成26年の調査より2倍以上増えました。

さらに、職場にスメルハラスメントがあるかという問いには、4割の人が「ある」と答えました。


<におい対策 こんな商品も>
スメハラの認知度が高まるなか、におい対策の商品が今、人気を集めています。

マンダムがまとめた国内の男性化粧品の売り上げ実績は1136億8300万円。中でも伸びているのが脇などの汗を抑える制汗剤です。

スプレー式だと塗り残しが出るおそれがあるため、“直塗り”の制汗剤が人気で、平成24年度は16億2600万円の売り上げだったのが、昨年度(平成29年度)は2倍以上の41億9400万円に上ったということです。

スメハラということばが生まれ、男性のにおいへの意識が高まっていることも売り上げ急増の背景にあるようです。


<企業ではこんな対策も>

ana180417.4.jpg(画像はイメージです)
スメハラ対策に取り組む企業も増えています。その1つが、閉ざされた空間でお客さんと接する機会が多いタクシー業界です。

東京の大手タクシー会社「国際自動車」では、数年前から運転手に消臭スプレーを配布しています。たばこや香水など車内に残ったにおいを消すのが狙いで、においがある消臭スプレーは苦手な客もいるため無臭のものを配っています。

また、おととしには、歯科検診で口臭を測定し、一定の値を上回った人には、歯科医院で歯石を取り除くクリーニングを受けるよう勧めているということです。

このタクシー会社は「こうした取り組みを通し、においに関するクレームは以前よりかなり減った」と話します。


<社内規定にも「におい」が>
眼鏡の販売などを手がける東京の「オンデーズ」では、3年前から、人事評価の基準にもなる社内の服装規定に「におい」の項目を追加しました。

「香水は禁止」「昼ご飯を食べたあとは歯磨きをする」など、におい対策まで指導しています。また、規定には入っていませんが、勤務時間の前やお昼にギョーザなどニンニク入りの料理は極力食べないようにする対策も行っているということです。

始めたころは「なぜ食べるものまで制限されないといけないのか」という社員からの声もあったということですが、「今は従業員のにおいへの意識は高まってきている」と話しています。

そもそもはお客さんから「たばこのにおいが気になった」というクレームが寄せられたのがきっかけでしたが、この会社では、ヘビースモーカーだった社長みずから禁煙し範を示したということです。


<人気!においケアセミナー>

ana180417.5.jpg前記の化粧品メーカーが平成26年から開催している企業向けの「においケアセミナー」への応募も増え続けています。これまでに、のべ3300人以上が受講したということです。

セミナーでは、においをケアする必要性やにおいの発生メカニズム、それに、制汗剤の効果的な使用法まで“男性のニオイ=体臭”に関する情報を中心に伝えています。

ana180417.6.jpg加齢臭には縁遠いと思いがちな30~40歳代の男性にも、主に後頭部やけい部の周辺から出る特有のにおいがあるとのことで、このメーカーではこれを「ミドル脂臭」と名付け対策を促すこともしているということです。

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<企業はどこまで対応すべき?>
高まる職場の「におい」への意識。では、企業はどこまで対応すべきなのでしょうか。

ana180417.8.jpg金子雅臣さん
職場でのハラスメント防止について研修や啓発を行っている「職場のハラスメント研究所」の金子雅臣所長は「本人が意図していなくても相手が不快に思えばそれはハラスメントです。においは悪意のないものがほとんどですが、例えば上司のにおいがきつくて悩んでいても我慢するしかない状態は部下としてはとても働きづらい状況で、法的な規制はないもののハラスメントと言える」と指摘します。

その上で「企業や経営者には、働く人が仕事しやすい環境を作る義務があります。スメハラの訴えがあった場合は、席を離したりにおいがある本人に会社から注意をするなどの対策をし、職場環境全体を改善する努力をすべき」と話していました。

“とはいえ、やはり体臭などについて指摘しづらいですが”と問う記者に対し、金子所長は「不快な点や業務上不都合な点は遠慮せずに伝えることが相手のためにもなります。ある程度の寛容さを持ちながらも、率直に気持ちや状況を伝え合える企業風土を作ることが求められているのでは」と話していました。

法律家はどう見るのか。弁護士法人「Proceed」代表の多田猛弁護士は「スメハラは、セクハラやパワハラのように加害者側が認識できる行為ではないし、法律で定められているわけでもないので一概にほかのハラスメントと同列には扱えない。ただ、スメハラに対する社会の意識も高まってきていて、今後、訴訟につながるケースも出てくるのではないか」と話していました。

ana180417.9.jpg現代社会で見過ごせなくなってきたスメハラという新たなハラスメント。「少し過剰なのでは」と思いつつ取材を始めましたが、可視化できない「におい」というものに向き合わなければいけない時代に入っていることを実感しました。ただ、においの問題はデリケートな部分もあるだけに、まずは1人1人が周囲に配慮する意識を高めていくことが大切なのではと感じました。

投稿者:大窪奈緒子 | 投稿時間:15時05分

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