2018年04月20日 (金)おしりには優しいけれど...


※2018年4月4日にNHK News Up に掲載されました。

皆さんはトイレットペーパーをどのくらい使いますか?おしりを拭くときに使うトイレットペーパーは、一回当たり平均で「80センチ」だそうです。毎日の生活に欠かせないものだけに「なるべく安いものを」という人もいるでしょうし「心地よい柔らかいもの」を求める人もいるでしょう。ところが、そんなトイレットペーパーの原料が近い将来足りなくなるかもしれないというのです。気になる情報を聞き現場に向かいました。

ネットワーク報道部記者 郡義之

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<富士山のふもとに>
静岡県富士市。富士山のふもとにひろがるこの地域は、製紙工場が建ち並ぶ紙の町として知られています。その一つが「丸富製紙」です。

osi180404.2.jpg昭和34年からトイレットペーパーを製造し1か月に120万ケース(1ケースは96ロール入り)を生産する大手メーカーです。

工場では、長さ50キロもある原料の紙をまいたロールが並び、そこから小さく裁断されるなどして、おなじみのトイレットペーパーが次々と生産されていました。


<コラボしたのは日比谷花壇>

osi180404.3.jpg丸富製紙は、高級感がある新しいトイレットペーパーを去年から売り出しました。

その名は「Hanataba プレミアム 日比谷花壇プロデュース」。名前のとおりフラワービジネス大手の日比谷花壇と共同開発しました。

プリント柄は、日比谷花壇が4種類の花をデザイン。花咲く庭をイメージした「フローラルガーデンの香り」と3枚重ねの厚みが売りです。

原料はパルプ100%。吸水力をおよそ20%アップしたとしています。

インターネット通販では、1ケース3890円で売られています。12ロール入り1パック当たりで486円と値段は高めですが、売れ行きは好調だそうです。

丸富製紙が生産するトイレットペーパーの99%以上は再生紙が原料ですが、今後、工場の生産体制を強化し、パルプ製品の生産量を3倍に増やす予定です。

なぜ、パルプ原料100%の“高級”トイレットペーパーの生産に乗り出したのでしょうか。


<IT化が進んで…>

osi180404.4.jpg「原料となる“古紙”が年々減っているのです」と話すのは、丸富製紙の佐野武男社長です。

古紙はいわゆる再生紙の主原料。
丸富製紙では、主にオフィスから出る事務用紙や、使用済みの牛乳パック、印刷用紙などの古紙を原料にトイレットペーパーを生産してきました。

ところが最近、ITの進展によるペーパーレス化などに伴って、企業などオフィスで使う紙の使用量が減少。また、雑誌の発行部数も減っていることから、市場に出回る古紙が減ってきているというのです。

製紙会社などでつくる公益財団法人「古紙再生促進センター」などによると、国内の古紙回収量は、平成19年の2332万トンをピークに年々減少傾向。去年は2105万トンまで減っています。


<中国との奪い合いも>
さらに、中国の規制の強化も影響しています。
中国は、環境政策の強化などを理由に、分別されていなかったり、異物が混入したりしている、いわゆる質が悪い古紙の輸入を禁止する方針を去年打ち出しました。

このため、トイレットペーパーの原料となる、上質の古紙が国際的にひっ迫し、中国などとの間で奪い合いになっているのです。関東地方での「色上」と呼ばれる上質の古紙の価格は平成12年に1キロ当たり8円~12円だったものが、ことし2月は15円~16円と、およそ1.8倍に上昇しています。

丸富製紙でも、原材料の調達価格は10年前に比べて1.5倍に増えたそうです。

ただ、パルプの価格も上がっていて、製品にすると、パルプのほうが小売価格は100円ほど高くなります。

osi180404.5.jpg丸富製紙 佐野武男社長
それでも佐野社長は「今後、古紙でトイレットペーパーを作るのは難しくなるかもしれない。若者世代の中には、手触りのよいパルプのトイレットペーパーを好む傾向もあり、20年、30年先を見据えれば、パルプを使った製品を作ることもやっていかなければならない」と話します。


<トイレットペーパー、お前もか!?>
osi180404.6.jpg市場に出回るトイレットペーパーの6割以上は、古紙を原料にしたものです。それだけに古紙市場のひっ迫は、少しずつ私たちの家計にも影響を及ぼしています。

平成29年の消費者物価指数を見ると、トイレットペーパーは、10年前に比べて4.8ポイントも上がっています。

都内のあるドラッグストアの店頭では、再生紙100%の12ロール入りダブルのトイレットペーパーは270円(税込み)。
パルプ100%は420円(同)で売られていました。

店の担当者は「以前に比べると、安売りする機会が減っていて、新聞の折り込みチラシでもセールの対象になることは少なくなりました」と話してくれました。

企業の動きを見ると「丸富製紙」は、今月からトイレットペーパーを15%値上げする方針です。
また、同じく再生紙のトイレットペーパーを作る「コアレックス信栄」(静岡県富士市)も値上げを検討。

さらにパルプ製品を扱っている製紙大手の王子製紙や日本製紙、大王製紙も今月以降、10%程度の値上げを順次行う予定です。

「日常生活で欠かせないトイレットペーパーは店にとっては、看板商品の一つだけに、できるだけ値上げしないようにしたいが、踏み切らざるをえない時がくるかもしれません」(ドラッグストアの担当者)

osi180404.7.jpg紙・パルプ業界の動向に詳しいみずほ銀行産業調査部の加古惇也さんによると、日本は古紙の回収率が80%と世界的に高い水準となっています。

ほかの国にも古紙を輸出してきましたが、5年ほど前から徐々に輸出量は減少しています。

加古さんは「国内では、人口が減少しているものの、外国人観光客などが増えているため、トイレットペーパーの需要は今後も変わらないと見込まれます。新興国の古紙の需要は高まっており、国際的に見ても古紙価格が今後、下がる状況ではなく、トイレットペーパーの値上がりによって、消費者の懐にも影響が出てくるかもしれません」と話しています。

トイレメーカーなどで作る一般社団法人日本レストルーム工業会によりますと、一回当たりに使うトイレットペーパーの長さは平均で80センチ。

私たちの生活にとって、なくてはならないトイレットペーパー。

さまざまな商品の値段が上がる中「トイレットペーパー、お前もか」と思いたくなりますが、原料の再生紙が足りなくなれば、パルプが頼り。

おしりには優しいかもしれませんが、お財布には厳しくなるかもしれません。

投稿者:郡義之 | 投稿時間:15時55分

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