2017年12月21日 (木) あなたの飲酒はアルハラ?


※2017年12月4日にNHK News Up に掲載されました。

忘年会の季節を迎え、酔っ払いのトラブルで困ったことはありませんか?。鉄道のホームから転落して電車が遅れたり、上司から強引に酒を強要されて記憶がなくなったりする場面もあるかもしれません。飲酒のあとの車の運転など、法律に違反する行為はもちろんNGですが、そこまで行かないまでもお酒の飲みすぎは個人にとっても企業にとっても大きなリスクになり得るのです。

ネットワーク報道部記者 野町かずみ・高橋大地・大窪奈緒子

ana171204.1.jpg

<車内で吐かないで>
タクシー業界にとって、12月は非常に悩ましいと言います。飲み会が多いため、1年のうちで利用客が最も多くなるかき入れ時ですが、酒によるトラブルも増えるからです。

飲み会の帰り、タクシーの中で吐いたことがある人はいませんか?車内で吐いてしまうと、タクシーには大きな迷惑をかけてしまいます。

ana171204.2.jpg大手のタクシー会社の日本交通によりますと、運転手にとって最も困るのは、その後の営業ができないということです。車内で吐いたお客さんを降ろした後、運転手は、もう新しい客は乗せられないので営業所に帰るしかありません。

そして、足元に敷いたシートやカバー、座席を特殊な洗剤で洗ったり、吐しゃ物の臭いが残らないように脱臭をかけたりするなどして特殊な清掃処理をしなければなりません。


<車内で失禁の被害も>
別のタクシー会社で運転手を務める63歳の男性に話を聞きました。

「座席や、窓に向かって吐かれてしまったことがあります。特に大変だったのが、20代くらいの酔っ払った女性が車内で寝てしまい、おしっこを漏らされた時です。触ってトラブルになるといけないので、警察署まで移動し、警察官立ち会いのもと、荷物を見て住所を調べたあと家族に迎えに来てもらった。座席が汚れてしまい、その日はもう営業ができず、1~2万円が稼げなくなってしまったのですが、その分を請求するわけにもいかず、がっくりきました」


<12月は酔っ払いの人身事故最多>
酔っ払いの影響は鉄道会社でも深刻です。12月は、酔った利用客がホームから転落したり、車内でおう吐したりするトラブルが相次ぐからです。
国土交通省によりますと、酒で酔った鉄道の利用客が関係したホームでの人身事故の件数は、平成26年度までの13年間で1247件発生し、このうち12月は159件と最も多くなっています。事故の形態は、電車との接触や、線路への転落などさまざまです。

このため、JR東日本など関東の25の鉄道会社は、転落防止などの注意を呼びかけるキャンペーンを今月1日から実施しています。利用客の安全を守る目的や、ダイヤの乱れを少しでも減らそうという目的があります。車内放送で、電車との接触や線路への転落に注意を呼びかけるほか、ホームに転落しそうな人を見かけたら、進んで非常停止ボタンを押してほしいとしています。


<ベンチの向き変えて対策>
さらに小田急電鉄では、酔っ払いなどの転落事故を減らそうと、昨年度からホームに設置されているベンチの向きを変えました。

ana171204.3.jpgこれまで、座る部分を線路の方向に向けてましたが、線路とは垂直の向きにしたのです。これまでに70ある駅のうち12の駅に取り入れ、今後も順次増やすことにしています。ベンチから立ち上がり、ふらふらとホームに転落するのを防ごうという狙いです。


<相次ぐアルコール・ハラスメント>
ana171204.4.jpgこうした迷惑な行為は、好きで酔っ払って、みずから招いた結果の場合もあれば、周りに飲まされ、不可抗力で酔っ払ってしまった結果である場合もあります。

厚生労働省によりますと、飲酒に関連した嫌がらせや迷惑行為は、アルコール・ハラスメントと呼ばれ、人権侵害にあたるといいます。たとえば、上下関係などを背景に、飲酒や一気飲みを強要したり、しつこくからんだりしたりする行為が該当します。

厚生労働省の研究班が、全国の20歳以上の男女2000人を対象に調査したところ、アルコール・ハラスメントを経験したと答えた人は、全体のおよそ3割にのぼりました。

ana171204.5.jpgネット上では、飲食店でアルコール・ハラスメントの被害を受けたという従業員の声が、相次いで投稿されています。

ana171204.6.jpg

<企業にとっても大きなリスク>
ana171204.7.jpg好川久治弁護士
酒の飲みすぎが招くアルコール・ハラスメントは、企業にとっても大きなリスクになっています。パワハラなどの労働問題を専門とする好川久治弁護士は、ある企業の女性社員が酒の席で上司からセクハラを受けたという相談事例を取り上げて説明してくれました。

「このケースでは女性社員が営業職の部長から『取引先を紹介する』と言われて飲み会に誘われ、取引先と一緒に数人で飲み会に行きました。ところが部長は、記憶がなくなるまで飲みすぎ、取引先の前で暴言を吐いたり、体を触るなどのセクハラをしたりしてしまいました。その後、女性社員は会社を辞め、部長は地方の部署に異動になりました」

この上司に限らず、お酒のトラブルが原因で異動になる会社員はあとを絶たないということで、とくに2次会、3次会のほうが酒の量も増え、問題が起こりやすいと言います。

「飲み過ぎるとけんかになったりパワハラやセクハラをして、職場の秩序が乱れやすくなります。上司から見れば、飲み会は“潤滑油”と思っているかも知れませんが、今の人たちに飲みニケーションは、はやりません。飲み会はそもそも労働時間ではなく、行かない自由もありますので、出席を強要すること自体も問題があり、注意が必要です」(好川久治弁護士)

ana171204.8.jpgまた、アルコール・ハラスメントに関連して保険会社の共栄火災は、飲酒などのトラブルを理由とする従業員からの損害賠償の請求に対応するため、会社を対象にした保険の発売をことし11月から始めました。アルコールについての企業リスクが高まっていることを背景にした対応です。


<飲み会は、飲まなくてもOK>
それでも、お酒を強要されそうな場合、どのように対応すればよいのでしょうか。アルコール・ハラスメントの防止キャンペーンなどを行う東京に事務局のある市民グループ「イッキ飲み防止連絡協議会」に聞いてみました。

協議会によりますと、「飲めないのにお酒を勧められたら断るのがいちばんですが、『場の空気を壊すのが嫌だから断れない』という声が多いのも確かです。そういう場合は、事前に飲めない人、飲まない人どうしでグループを作って座ることも1つの手です」と話しています。

また、飲めない場合は、「飲まない」と言える空気を、幹事が作ることも大切だといいます。たとえば、乾杯など飲み会が始まる前に「飲めない人は飲まなくてもいいですよ」と言って、そうした下地を作ることだけでも効果があると言うことです。

協議会は「飲み会は親睦を深める場であって、強要したり、はめを外したりして誰かを傷つけることはあってはならないと思います。楽しい時間を過ごすためにも、参加者全員で意識してほしい」と話しています。

投稿者:野町かずみ | 投稿時間:17時05分

トラックバック

■この記事へのトラックバック一覧

※トラックバックはありません

コメント

※コメントはありません

コメントの投稿

ページの一番上へ▲