2017年10月13日 (金)相次ぐミサイル発射でJアラート どう行動すれば
※2017年9月15日にNHK News Up に掲載されました。
また行われた北朝鮮による日本上空を通過する弾道ミサイルの発射。先月29日に次ぐ暴挙で、今月3日には6回目となる核実験を行うなど北朝鮮は挑発行動を繰り返しています。ミサイル発射のたびに、戦時中の「空襲警報」のようなJアラートが繰り返される日常。戦後生まれの世代は戸惑いを覚えます。何を学び、どう行動すればよいのでしょうか。
ネットワーク報道部記者 宮脇麻樹・栗原岳史・佐伯敏
<「どこに避難?」戸惑いの声も>
15日朝、通勤や通学の途中や準備をしていた人も多く、北朝鮮による弾道ミサイルの発射を受けてSNSにはどこに、どのように避難すればいいか投稿が相次ぎました。
「我が家の避難所はトイレかな…冗談抜きに、トイレに飲み水数本準備しとこうかな」とか「風呂場に避難したよ」など、窓がないトイレや風呂場を避難場所にと考える声。
また避難方法が分からないという声も続々と投稿されました。
「通勤中・勤務中あるいは通学中・授業中にJアラートが鳴った時の対処について避難訓練した会社や学校ってどのくらいあるんだろ」
「通勤中、運転中にミサイル発射言われても困る。まぁコンビニに避難?したけど」
<政府は発射時と通過後に情報発信>今回の弾道ミサイルについて、政府は日本時間の午前6時57分ごろピョンヤンの郊外から発射され、7時4分ごろから6分ごろに北海道上空を通過したと発表しました。
午前7時にJアラート=全国瞬時警報システムで北朝鮮からミサイルが発射された模様だと伝え、そして7時7分には北海道地方から太平洋へ通過した模様だと伝えました。
<政府が勧める対処方法は>
内閣官房の「国民保護ポータルサイト」ではミサイルが飛来した際の対処方法を説明しています。
▼建物の中または地下に避難する
▼近くに適当な建物がない場合は物陰に身を隠すか地面に伏せ頭部を守る
▼行政の指示に従って落ち着いて行動するなどと求めています。
一方、政府は先月、北朝鮮が日本上空を通過する弾道ミサイルを発射した際、Jアラート=全国瞬時警報システムで緊急情報を発信しましたが「どこに避難したらいいか分からない」といった批判を受けてメッセージを見直しました。
例えば、北陸地方から関東地方の上空を通過した場合は「関東地方から太平洋へ通過した模様」などと最後に通過した地域名とミサイルが向かった方向を入れるようにしたほか、避難先について「頑丈な建物や地下」としていたのを「建物の中または地下」と改めました。
<グアムの対処マニュアル>ミサイルの脅威に備えるヒントは北朝鮮が標的として名指ししたグアムにもあります。グアムにあるアメリカの国土安全保障局は、市民向けにマニュアルをまとめ、ウェブページやSNSで公開しています。
▼どんな遮へい物でもないよりはよいので、なるべく近くの遮へい物を探す
▼家族と離れていても今いる場所にとどまる
▼子どもが通う学校に電話をかけるのは対処の遅れにつながるので控えるなどと書かれています。
<海外の紛争地では>
海外の紛争地では市民は差し迫った脅威にどのように備えているのでしょうか。イスラエルとパレスチナの争いが続く中東のエルサレムに、ことし7月までの3年間、NHKの特派員として勤務していた佐伯敏記者の話です。佐伯敏記者
3年前、イスラエルにはガザ地区から1日に数発から数十発ものミサイルやロケット弾が撃ち込まれていたといいます。
北朝鮮が発射する弾道ミサイルとは威力も数も異なりますが、ロケット弾などが発射されると日本の防災行政無線にあたるスピーカーのほかテレビやラジオ、スマホの専用アプリから「○○にミサイル警報」「○○市にミサイル警報」といったシンプルな情報が伝えられたそうです。そのたびに市民はシェルターに避難し、屋外にいる場合は頑丈なものの近くで身を伏せる、車に乗っているときは路肩に車を停めて外に出て身を伏せる姿勢をとっていたといいます。
これらは決められた手順で、記者の印象では、ほとんどの人がこのとおりに行動でき、日本で地震のときに机の下に隠れるのと同じぐらい浸透していたということです。
記者の子どもが通っていた小学校では地下にあるコンピューター室がシェルターになっていて、年に1度、避難訓練が行われていましたが、何から身を守るためかは子どもへの配慮から伝えられていなかったそうです。
着任してまもないころ、記者が住んでいた町に実際にミサイルが飛んできたことがあったといいます。子どもが寝静まった午後10時ごろ、町中にけたたましい警報のサイレンが鳴り響きました。数十秒後、ミサイルが迎撃された爆音と衝撃が夜空に響きました。子どもは気づかず寝息をたて続け、記者もほっと胸をなで下ろしたということです。
<『慣れ』ずに備えを>
繰り返される北朝鮮によるミサイルの発射。
ネット上では「ミサイルが通過し、Jアラートが鳴る状態が繰り返されると、慣れてしまって本当にミサイルが着弾するような状況になっても避難しないかもしれない」などと『慣れ』への怖さを指摘する声もあります。
海外の紛争が起きている地域に住む人たちは、ミサイルの警報を聞いたとき、決められた手順どおり行動する習慣を身につけています。そうした地域とは前提が違いますが、外交努力によって北朝鮮に核実験やミサイル発射をやめさせることができていない以上、自分の身を守るための意識や行動を身につけることも必要ではないでしょうか。
投稿者:宮脇 麻樹 | 投稿時間:16時26分