2012年12月20日 (木)産後クライシス対策 最新事情


きょうは以前、このブログでもお伝えした「産後クライシス」の続編です。(参考 http://www.nhk.or.jp/seikatsu-blog/200/130947.html

前回の放送では、出産後に夫婦関係を冷え込ませないためには、赤ちゃんが生まれたばかりの時期から男性が積極的に育児・家事に関わることが大切だとお伝えしました。しかし、積極的に関わってもらうにも妻の働きかけには限界があったり、逆にパパが張り切りすぎて空回りしてしまったりと夫婦だけでは解決できないことも少なくありません。そこで、今回はその「男性が積極的に関わる」ための最新の講座について取材してきました。

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【カップルのためのコミュニケーション講座】
まずは東京・杉並区で開かれた講座をご紹介します。産後の夫婦仲に不安を感じている6組の夫婦が集まりました。
20121219sango-2.jpgこの講座は、長年産後の女性を支援してきたNPO「マドレボニータ」が夫婦の溝を埋めるきっかけをつかんでもらおうと、この秋から始めました。産後女性の体力づくりに使われるバランスボールに全員が座り、リラックスした雰囲気で進められます。

20121219sango-3.jpg結婚2年目のSさん夫妻、ことし3月に長男が産まれました。待ち望んでいた子どもの誕生でしたが、妻が仕事を休み育児に専念した頃から夫婦喧嘩が絶えなくなったと言います。今は、冷静に話し合いをするのも難しい状況です。妻は「わたしは子どもができてかなり生活が変わり、優先順位もいろいろ変わったのに、夫はマイペースで分ってもらえない」と参加の動機について語りました。

ワークショップ形式で行われるこの講座。進行役のファシリテーターが説明するルールに従ってコミュニケーションスキルを実践します。
20121219sango-4.jpgまずは、夫婦が自分の悩みについて互いに伝えます。聞く側は相手が話している時は口をはさまず、メモを取ります。聞き終えたら相手の話を要約して返します。相手の伝えたいことをしっかり受け止め、理解するための方法です。

Sさん夫妻も交代で感じていることを3分間話し続けました。妻は「けんかが多くて、常に離婚が不安でいつも頭にある。仲良くずっといたいと思って結婚したのに、続けていくって難しい」と不安な気持ちを打ち明けました。

続いて、それぞれの夫婦が話し合った悩みについて発表します。ほかの夫婦の話から自分たちの問題を解決するヒントを探ってもらうのです。
20121219sango-5.jpg「家事育児を両方するのが本当に辛い。どうしてもやらなくちゃいけないのに、夫は仕事をメインに考えていて無理のない範囲でやればいいと思っているのが分かった」や「子どもが熱を出すと私だけが仕事を休んだり遅刻したりするので仕事を続けられなかった。私だって働きたいという気持ちがあるので、言葉は悪いけど夫に対して『働かせてやっている』という気持ちもある」など、妻たちの側から家事・育児への不満が次々に出てきました。

夫の考えに従い1人で家事をこなしてきたSさんの妻。「仕事に復帰しても夫は家事をしないかもしれないという気持ちが不安の原因だと気づきました。今は私がやるのはしょうがないけれど、仕事復帰した後に夫がいま出来ないことがすぐできるとは思えないんです。仕事してないから家事は妻、とはっきり分けられても困ります」と他の夫婦の前で話すことができました。
20121219sango-6.jpg今回のワークショップを終えて、夫は「やってもらって当たり前という感じで彼女と接していて、それがぶつかる原因だったということが分りました。その辺を直していきたいです」と話していました。一方、妻は「2人だけで話すと煮詰まって相手に伝わらないこともあるし、けんかになってしまう。人前で夫婦の問題を話すって伝わり方も違うし、『話して考えをすり合わせる』ということを学べてよかったです」と話していました。

ようやくけんかの根本にたどり着いた2人。歩み寄るきっかけをつかめたようです。

10年余りにわたって産後の女性の支援を続け、今回の講座を企画したNPO「マドレボニータ」代表の吉岡マコさんは「子どもができると人生も仕事も夫婦関係も全く違う形でやっていかなければならなくなります。それなのに赤ちゃんがいると忙しくて夫婦で話す機会がない。放っておくと不満が蓄積して互いの絆が弱まってしまうので意識的に、短時間で良いので時間をとって話をしてほしい」と呼びかけています。
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【産前からの対策も 人気集めるパパニティ講座】
さらに、早い段階、出産の前から産後のことを考えることで夫婦の溝を作らないようにしようという試みも始まっています。

埼玉県所沢市の産婦人科クリニックで開かれているのが「パパニティ教室」です。出産を控えた男性としての心構えを学びます。
20121219sango-8.jpg講師を務めたのは、0歳と3歳の2人の子どものパパ、渡辺大地さん(32)。産後クライシスに陥った経験から男性に産後の女性を支える方法を伝えたいとこの教室を考案しました。
20121219-sango9.jpgまず学んでもらうのは出産に伴う女性のライフスタイルや体の変化です。たとえばライフスタイルでは外に買い物に行けなくなったり、友人とのつきあいができなくなったりしてストレスを感じる女性は少なくありません。「そんなとき、『週末ちょっと飲んでくる』といういつもと変わらない行動を妻がどう受け止めるか考えてほしい」と呼びかけます。

体の変化では子宮の中で赤ちゃんに酸素や栄養を届けていた胎盤が出産後、はがれ落ちることで女性は産後1か月近く出血が続くことを取り上げます。「交通事故にあって内臓が損傷しているようなもの」と例えることで、産後、女性が体を休めなければならないことを男性にも分りやすく説明していきます。
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こうした女性の変化を知った上で、育児や家事に疲れ切った妻が話もできないほど落ち込んでしまったという状況を想定して、どう励ますのか夫たちに考えてもらいました。1人のパパは「子どもの面倒をみるので寝てて言いよっていいます」と答えました。妻の望みは「寝かせてもらうか外に出かけさせて欲しい」というもの。2人の考えは一致していたようです。別のパパのアイディアは「笑いのつぼが一緒なのでお笑いのDVDを一緒に見る」というもの。妻からは「それもいいけど、『家事は俺がやっておく』という言葉がほしい」というの答えだったので、少しずれていたことに夫は気づきました。妻が求めている助けは何なのか、出産前の段階から話し合うことで溝が生じるのを防ぐのです。
20121219sango-11.jpg講師の渡辺さんは「男性はまず産後に奥さんが大変とか妊娠期、出産期に男性のサポートが必要だという情報を手に入れる場所がありません。奥さんの悩みや不安をどう聞き出すのか、2人で勉強することが出産前の時期は大事です」と話していました。
20121219sango-12.jpg【取材後記】
今回の取材を通して感じたのは、産後クライシスの予防は「夫婦のコミュニケーション」に尽きる、ということです。一緒に住んでいるから相手の考えは分かっているはずと思いがちですが、実際にはその時々で人の考えは変わりますから、定期的な『すり合わせ』が必要なんですね。NPO「マドレボニータ」のメンバーの中には、週に1度と頻度を決めて、夫婦がそれぞれ将来どうしたいのか、今の状態をどう感じているのかなどを話す時間を取っている方もいます。

ただ、そもそもコミュニケーションするためには自分が何をどう感じていて、どうしたいのかをはっきりさせる必要があります。もやもやした不満を抱えて、突然パートナーに怒りを爆発させるのではなく、何がどう不安でそれをどう変えたいのかはっきりさせることが一番大切なのかもしれないと感じました。
 

投稿者:内田明香 | 投稿時間:06時00分

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