2012年08月22日 (水)消費者目線で消費者行政を


消費者庁の3代目の長官に、消費者団体出身の阿南久氏が就任しました。長年、生活協同組合で食の安全などに取り組み、全国消費者団体連絡会の事務局長として、国の審議会などで消費者の立場から意見を述べてきました。民間出身の新長官のもとで、消費者庁はどう変わるのか、前長官や消費者担当大臣の言葉も交えてお伝えします。

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阿南新長官の起用は、福嶋浩彦長官の任期が切れる、8月10日の朝、閣議後の定例の記者会見の中で明らかにされました。この中で、松原消費者担当大臣は、起用の理由について、「今後、消費者庁が消費者目線を持って、また、広く消費者問題に関心を有する関係者の知恵と熱意を結集し、共感しながら、消費者行政を推進していく上で、不可欠な人材であると判断した」と述べました。そのうえで、「わずかな手勢の消費者庁が地方の方々と連携する場合に、様々な消費者課題に対して、啓蒙し、解決をするという点において、それぞれの地域に自発的に存在する消費者団体というのは、極めて存在意義があると思っていまして、そういった消費者団体を活性化し、ボランティア的な草の根の力を消費者行政に生かす上で、私は阿南さんは適切だと、こう思うところであります」と特に消費者団体との連携に期待を示しました。※全文は消費者庁HP(http://www.caa.go.jp/action/kaiken/d/120810d_kaiken.html

大臣会見のあとの午前中、福嶋長官が退任の記者会見をし、これまでの実績や阿南長官に期待することを述べました。 

20120822_5.jpg福嶋長官は、2年間の基本姿勢として、①「常に、生活者としての国民、消費者の立場に立って物事を考え、行動をする」こと、②「官僚組織の中で異物であり続ける」こと、③「声の大きい特定の団体の代弁者にならない」ことを挙げた上で、 特に③については、「消費者団体の中にも、色々な意見があるわけですし、ましてや、この現代社会において消費者、生活者の多様な意見、あるいは多様な利益を1つの団体が、どの団体であっても代表できるはずがないのです。ですから、特定の団体の代弁者にならないということでなければ、きちんと消費者、生活者の立場に立った消費者行政というのは、できないと思っています」と述べました。そして、「消費者業界といったら、ちょっと言葉が悪いでしょうけれども、消費者の活動をずっと中央でやっている、そういう領域の外から来た者がこういう姿勢をとると、結構摩擦も起こるのですね。そういった意味で、新長官は、消費者行政、中央の消費者行政のリーダーとしてやってこられた人ですので、むしろあまり摩擦を起こさずに、こういった姿勢を取り得るのではないか、私よりもずっと摩擦を起こさずにきちんとこういう姿勢をとれる方だと思って、私はそういうことをとても新長官に期待しています」と話しました。
※全文は(http://www.caa.go.jp/action/kaiken/fukushima_c/120810c_kaiken.html

大臣と長官の発言をまとめると、阿南新長官に求められていることは、消費者団体との「摩擦」ではなく、「連携」と言えると思います。一方で、阿南長官には、これまでの消費者団体からの視点だけではなく、大局的な視点から判断するバランス感覚も必要になると思います。この点については、阿南新長官は就任の記者会見で、次のように述べています。 「私は様々な行政の審議会にも参加をしておりまして、かなり発言をしてきております。 私はそれが消費者団体の役割だと思っていましたし、消費者団体の様々な意見を聞きながら、そういう立場で色々な意見を言ってきました。でも、今度は私は消費者庁の長官ですので、自分の意見だけで主張するようなことではないだろうと思っておりますので、様々な意見を聞きながら、それをまとめるのが私の消費者庁長官としての立場だろうと考えております。ですから、場の設定と様々な情報ですよね。消費者が判断ができる多様な情報というものをきちんと出していくことによって、議論を広げて、その中からより良い道を探っていくのが私の立場だと考えておりますので、そのような形で進めたいと思います」と話しました。そして、「もちろんそこには、様々な消費者課題ですから、消費者団体だけではなくて、事業者の人たちや様々なステークホルダーがいますので、そういう人たちとも議論しながら、消費者団体の問題意識などもそうした場で十分に検討されて、最終的な合意を作っていくという過程を、とても難しいことだと思いますけれども、消費者団体の力を信じながら、私はやっていきたいと思っております」と述べています。 また、福嶋前長官が懸念していた「声の大きい特定の団体の代弁者にならない」ことについては、「声の大きい、といわれますが、消費者団体って大体声は大きいですので、それはそれで構わないのです。自分たちが考える、これでは消費者を守れないという警鐘の声だったりする場合が非常に多いですので、そういう意見というものももっと幅広く聞くことが必要なのではないかと思っていますので、そうした点で言いますと、そういう消費者団体の力というのをいただきながら、消費者行政を推進していくという意味では、私はそれはできることだと思います。 特に全国の各地の消費者団体は、各地方の自治体の消費者行政ととても連携が強く、協力体制も組んでいますので、そこの力というのはすごく重要だと思います」と補足していました。

20120822_4.jpg阿南長官が、今後の消費者庁の課題として挙げたのは消費者目線です。 「まさに消費者団体の目から見ますと、消費者庁は、様々な府省庁からの寄り合い所帯ということがあって、必ずしも消費者のスタンスというのですか、消費者を守っていこうというスタンスがはっきりしてないような気もしていましたので、是非そこを消費者目線というのですか、消費者庁の職員の全員が消費者目線を持って、常に消費者に寄り添って考えられる、消費者の視点から政策を考えていくということが課題だと思っております。 ですから、その目線の涵養というのも、ものすごくこれは大変なことではないかと思うのです。ただ、全国各地にたくさん消費者センターもありますし、また消費者団体もあるわけですので、そことの行き来というのですか、そういうところから学ぶことってあるのではないでしょうか。消費者センターですと、消費者から暮らしに基づいた疑問や相談が寄せられてくるわけです。ですから、そういうものを消費者庁の職員も実際に経験してみるというのですか、触れてみることによって、学べるのではないかと思います。また、各地の消費者団体も様々な消費者のための活動をしていますので、そこに一緒に参加をして活動してみるというのも、いいのではないかと思っていますので、今後はそうした暮らしの現場などに直接学ぶという場と機会をたくさん持って、消費者庁の職員全員が消費者目線に立てるようにしていきたいと思っております」と述べ、消費者庁の職員が全国にある消費生活センターの業務を経験する機会を増やしたり、消費者団体との連携を強めたいという考えを明らかにしました。※全文は消費者庁HP(http://www.caa.go.jp/action/kaiken/c/120810-1c_kaiken.html

阿南長官の就任を知った消費者庁の職員や消費者団体の関係者は、皆一様に「えー」と声を上げ驚いていましたが、おおむね好意的な受け止めでした。譲れないものは持ちつつ、対話をしてきたこれまでの実績と、気さくな人柄によるところが大きいと思います。
 一方で、消費者庁の長官に消費者団体出身者を充てるという大胆な人事については、「本当に官僚組織を動かせるのか、逆に官僚組織に取り込まれないか」、「実績を上げるため自分の得意分野だけに力を入れてしまわないか」などの心配の声も聞かれました。 就任して1週間なので、まだ「阿南カラー」は見えてきませんが、消費者庁は9月で発足から3年となります。現在初めて所管する法律の改正などが行われていて、すでに▼貴金属などの強引な買い取りをする「押し買い」を規制する「改正特定商取引法」が成立し、今後の取り締まりが期待されています。 また、▼悪質商法などの被害に遭わないよう、子どもから高齢者まで幅広い世代を対象に、消費者教育を充実させる「消費者教育推進法」も成立し、実際に地方で取り組んでもらうためには消費者庁のリーダーシップが期待されています。 さらに、▼今年10月1日の発足を目指して、あらゆる消費者事故の原因究明と再発防止を目指す新たな事故調査機関「消費者安全調査委員会」や、▼取り締まる法律のない、いわゆる「すき間事案」の財産被害について業者に勧告や命令をできるようにする法案の審議も行われるなど、消費者庁にこれから求められる役割は大きくなっていきます。 これまで外部から消費者庁の足りない部分を指摘してきた阿南長官は、今後「どうしてこれを取り締まらないのか」、「どうしてこの制度がないのか」といった、消費者団体や消費者の要望を受けることになります。消費者団体出身という強みを生かして、どのようにその声にこたえ、どこまで消費者被害を減らせるのか、消費者行政の舵取りの手腕に注目し、しっかり取材していきたいと思います。

 

投稿者:三瓶佑樹 | 投稿時間:06時00分

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