2011年12月09日 (金)"エンディングノート" 手に取る人たち


「エンディングノート」をご存じでしょうか?
人生の終末に備えて、自分の望む葬儀や家族へのメッセージなどをあらかじめ書き記しておくノートです。

このエンディングノート、3月の東日本大震災のあと、これまであまり関心がなかったという人たちが手に取るようになり、終末の準備以外の目的で書き込んでいるといいます。

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子どもたちが独立し、夫と2人暮らしの62歳の主婦は、震災のあと、エンディングノートを手にしました。
自分の身に何が起きるか分からないと不安になり、家族に向けて伝えておきたいことを書き込みました。例えば、葬儀はピンクや赤の花を飾って華やかにしてほしいと希望しています。また、お気に入りの笑顔の写真を遺影にしてほしいとノートに貼りつけました。

ed4.jpg女性は、このノートを書いたことで、今後、何があっても家族が困らないので、安心してこれからの人生を生きていける気持ちになったと言います。これは、典型的なエンディングノートの使い方と言えるのではないでしょうか。

最近出版されているエンディングノートには、「明日のための」「生き方が変わる」など、新たなうたい文句が目立ちます。記入することで、よりよい人生が開けてくるというのです。
自分を振り返るために、思い出を書く欄にも、多くのページが割かれるようになりました。

34歳の男性は、勤務先の会社が高齢者対象の事業を始め、ノート作りを担当しました。
市販のノートは、思い出を記すスペースが少ないためにもの足りないと感じて、年表タイプのノートを思いつきました。自宅では、ノートを使って試しに自分の人生を振り返っています。
事件や流行などの社会の出来事を書く段と併せて、思い出やお世話になった人の名前を書く段があります。ノートを手に取った直接の理由は仕事のためだったとはいえ、男性は、人生を振り返ることで、今後どのように生きるか、それを考えるきっかけにしたいと話していました。

ed5.jpg一方、仙台市出身の47歳の主婦は、震災をきっかけに、子どもたちにメッセージを伝えられないかと、ノートを買いました。
いざノートに向かうと、直接伝えるメッセージはなかなか見つかりません。このため、まず「自分にとって大切なもの」は何かを考え、3月11日以来、思ってきたことを書き出していきました。 そうすることで、小さなことでも、被災地のために何かできることはないかと考えるようになったそうです。
今の環境の中でも後悔しないように生きていくためにはどうするか?ペンを取ることによって、改めて自覚できたといいます。

ed6.jpgこの女性は、ノートに向き合うことで、子どもへのメッセージに気づきました。
メッセージは「被災地の人たちと少しでも気持ちを共有できるような大人になってほしい」というものでした。そこで、子どもたちと一緒に、震災で親を失った子どもたちへの募金を家庭で始めました。小さなことでも今後長く続けるつもりだと話しています。
手に取る人によってさまざまな意味を持つようになったエンディングノート。自分自身、そして、家族や社会まで、改めて考え直す道具になりつつあるようです。

このエンディングノート、自分で作る人もいますが、市販のものもあります。市販のものでは、最近、大きな書店の店頭などには、15種類程度も並ぶようになっているということです。

ed2.jpgNPO法人や企業が作ったものなど、さまざまなものがありますが、NPO法人が作ったノートは、薄い冊子で、書き直しの必要が出たときなどに何度も買えるよう、価格を500円以下に設定したものもあります。証券会社が作成したノートには、第二の人生のマネープランなどについて詳しく説明する解説書がついたものもあります。また、文房具メーカーが作ったノートは、幅広い年代が使えるよう、備忘録にも利用できるもので、30代や40代の購入者も多いということです。また、パソコンに入力するソフトウェアもあります。
(上の画像は取材用の資料で、特定のものをお勧めしているわけではありません)

エンディングノートで終末の準備をするということは、最近の核家族化が背景になっているとも言われています。以前は親子が同居の家庭が多く、介護・葬儀・墓・相続などについては、親子で話し合う機会があってノートに記す必要がなく、親が「子どもがやってくれる」と心配をしなくてもよかったという見方です。
それが、核家族化が進み、夫婦2人や独り暮らしの高齢者が増え、終末への思いを託す人が近くにいなくなったなどの理由で、ノートが必要になったというのです。
それでも、今、必ずしも終末の準備だけの目的ではなく、エンディングノートを手に取る人が出てきたことは興味深いことだと思います。背景に何があるのか、さらに取材を進められればと考えています。

投稿者:宮本知幸 | 投稿時間:06時00分

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