2011年12月08日 (木)施設内での性被害を無くす取り組み


家庭で虐待にあった子どもを守る児童養護施設。入所する子どもは増え、今、全国で3万人余りに上ります。
しかし、安心なはずのこうした施設の中で、子どもが、子どもから性的な虐待を受けている問題が明らかになってきました。
子どもたちを守るべき施設の中で、なぜ、こうした虐待が起こるのでしょうか。

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虐待された子どもが多く暮らす関東地方の施設です。男子寮では14人が一緒に暮らしています。
この施設でも、3年ほど前から、男の子が男の子に性的な虐待を加える問題が起き始めました。中でも、年上の子が年下の子に無理やり従わせるケースが目立っています。

1208d.jpg10代の男性は、小学生のときにいた児童養護施設で、年上の男の子から被害を受けました。
男子寮の寝室に鍵を掛けられ、体を触るよう命じられました。顔を合わせ、一緒に暮らしている相手。逆らったあとの暴力が怖くて逃げることができなかったと言います。
「年上に殴られるとか、蹴られるとか、そういうのがいちばん怖かったりするんです。その気持ちが第一に働いて、殴られるのが嫌だからという感じでした」と話しています。

しかし、中学生になると、かつて被害者だった男性が、今度は年下の男の子を呼びつけ、自分の体を触らせるようになりました。男性は「年下ならば言うことを聞くと思った」と言いますが、自分が嫌だったことを、なぜほかの子どもにしてしまったのか、今でも分からないと言います。
「自分が前に小さいときに、小学校のときに受けたからやってしまったというのはあると思うんですけど、それはただの言い訳に過ぎないですよね」と話していました。

なぜ、子どもどうしの性的な虐待が起きるのか。
専門家は、家庭で虐待を経験していることが「引き金」になっていると分析しています。力で支配され続けて、自分を大切にする気持ちが育たなかったことが、施設に入ったあとの行為につながっているというのです。
専門家は「自分を大切にできなければ他者も大切にできないわけで、そこに暴力の連鎖の問題とか、あるいはそれが思春期になれば性の問題と出てきて、力で支配する、あるいは力で支配された者が力で支配する、そういう循環が起こりうるのだろうと思います」と話しています。

2日に開かれた「子ども虐待防止学会」。ここでも、施設内の性虐待が問題の一つとして取り上げられました。
現場からは、多くの施設がこの問題を抱えていながら対策が進んでいないとか、被害者も加害者も出さない対策が必要だという、切実な訴えが聞かれました。
参加者は「被害が加害に転じてしまうという連鎖をというのを、どこかで止めることが必要だと思います」と話していました。

1208c.jpgこうした連鎖を食い止めるためにはどうすればいいのか。関東地方の児童養護施設で、紙芝居を使った取り組みが始まっています。
「口と水着で隠れる場所はプライベートゾーンと言います。自分だけの大切な場所。触っていいのは自分だけ」などと語りかけています。対象は小学1年生から4年生。年齢が低くても分かりやすいよう、1枚の絵に1つずつメッセージを込めました。

1208b.jpg被害を防ぐキーワードは、NO、GO、TELLの3つ。
被害を受けそうになったらはっきり「嫌」と伝える「NO」。
それでも被害に遭いそうになったら、その場から離れる「GO」。
そして、隠さず職員に相談する「TELL」です。
施設内の部屋やお風呂など、さまざまな状況を想定してそれぞれ紙芝居を作り、繰り返し読み聞かせています。

1208a.jpg担当者は「あなたの体は大切だ。あなたの存在は大切だ。あなたの大切は相手にもある、という基本的な考えを基に自己肯定感を高め、自分は大切な存在だというところを中心に、紙芝居などのプログラムを組んでいます」と話しています。

“自分を大切にする気持ちを育てることで、相手を思いやる気持ちも育てていきたい”
施設での性被害の芽を無くそうという取り組みをお伝えしました。
こうした施設の中には、性的な問題を抱える子どもに対して、職員が1対1で話し合い、他人を尊重する気持ちを育てようとしているところもあります。また、こうした問題を抱え込まず、施設どうしで一緒に対策を考える取り組みも始まっているということです。

投稿者:伊達裕子 | 投稿時間:06時00分

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コメント

40代女性です。小学3年から5年になるまでの2年間、いわゆる健康学園と言われる施設に預けられていました。(最近は各区の財政上、廃止されているそうですね。私が入所していた施設も廃止されたと聞いています。)母からの虐待を逃れてのことでしたが、逃げた先の学園内で、男子児童から性的いたずらを恒常的に受けていました。その後の私の人生、精神に大きな問題となって、いまも苦しんでいます。当時は男子も女子も同室で寝かされていたことなど、隔世の感は否めませんが、いまだにこんな悲劇がどこかで起こっていることがショックです。問題が起こった場合、まず隔離、精神的ケア(加害者被害者ともカウンセリングのみならず、投薬に踏み込むなど)をしてほしいです。これは大人になっても、時限爆弾をかかえているようなもので、じわりじわりと心をむしばみ、日常生活に支障をきたします。
この問題について、さらに追跡されることを願います。

投稿日時:2011年12月08日 13時10分 | 匿名

私は児童養護福祉施設で約11年間お世話になりました。
施設での生活はとても幸せとは言えませんでした。
父親代わり、母親代わりとして勤務する職員の方々が大変なのもよく分りますが、「何も解っていない職員」の数の方が圧倒的に多かった様に思います。真面目な職員さんは鬱になったり、退職してしまいます。公務員も同じ事が言えると思います。
これからは大学を卒業しているとか、資格が有るとか、それだけを採用基準にするのではなく、社会人経験がある、人生経験が豊か、実際に経験がある等、本来の職員採用方法の有り方についてもを協議してほしいです。はっきり言って学歴は関係ないと思います。知識も大切ですが、社会で必要なのは知恵だと思います。

投稿日時:2011年12月08日 18時39分 | hidesan

家庭で育ちましたが、よく遊びに来ていた年上の親戚にお尻をなめさせられました。よく泣かされていたから拒否なんてできないし、小さかったのでどういうことかわかりませんでした。直後に母親が来ましたが全く気づきませんでした。いま乳幼児の息子がいますが、どうやったら性被害・加害のリスクを減らせるか考えています。子供がひどい目にあわない社会は大人にしか作れません。

投稿日時:2011年12月09日 01時31分 | いまの大人

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