2011年09月26日 (月)若い人たちの発想 六本木で触れてみた


私事ですが、大学を卒業してから四半世紀がたちました。
昔の大学は、伝統的なアカデミズムということばで完結した場所、かなり「浮世離れ」したところで、「大学の国際競争力」とか、「最先端の産業界との連携」といった話題は、一部の分野を除けば、あまり聞こえてこなかったような気がします。
最近はどうなのでしょうか。

先日、東京・六本木で、ある大学の研究成果の一部を聞く機会がありましたので、その印象をご紹介します。その大学は、慶応大学大学院のメディアデザイン研究科(略称“KMD”)。3年前に出来たこの研究科は、アメリカの「マイクロソフト」の副社長だった古川享さんや、霞ヶ関で通信分野の政策立案に当たった中村伊知哉さんらを教授に迎え、大学側の説明文によりますと、デザイン、テクノロジー、マネジメント、ポリシーの4つの創造性を探りながら、世界の産業界に貢献できる人材の育成を目指すとされています。

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その研究発表、私がまず驚いたのが、教授たちがステージに上がって、3分程度で自分の研究分野についてプレゼンテーションする「KMDアップデート」というもの。

201109260113c.jpg それぞれ、学術や産業界で実績を積まれた方々のプレゼンなので、本来は1時間あっても足りないくらいかと。それを3分以内・・・テレビの世界でも3分リポートというのは短いほうです。教授の中には「あと2分でスライド20枚を紹介する」と言って手早く説明される方もいました。

個別の研究活動の説明でも、「透明なクルマ」「先端映像のイベント」・・・、テーマを見るだけでも面白い発表が相次ぎました。

そして、大学院生による発表。広告会社の発案の下に、未来の百貨店で何を売るかというテーマです。パソコンを使ったスライドでは、私が「ここが肝心だろうな」と思う部分で、説明する動画の再生がうまく行かないトラブルが頻発して、少し「?」というところもありましたが、「手触りが堅くない、柔らかなリモコン」とか「服の試着画像を保存して、消費者や店が有効活用する仕組み」、「ロープに引っ張られるように、触覚の変化で行きたいところに誘導してくれる端末」など、なかなか興味深いものばかりでした。

20110926015.jpg また、会場では「日本の大学は役に立っているのか?」というテーマで公開討論も開かれました。
脳科学者の茂木健一郎さん、元NTTドコモ執行役員の夏野剛さん、孫正義ソフトバンク社長の弟でIT企業を経営する孫泰蔵さんら著名人と、KMDの教授たちが出席して、大学のあり方について議論しました。

この中では、「日本の大学と企業は、入学(採用)と育成などで、ダイバーシティ(多様性)がないのが共通していて、競争力がない理由はそこにある」といった意見や、「日本企業は、世界中の学生からいちばんいい人を採るべきで、日本の学生の中から、という考えは捨てるべきだ」「日本の学生は内向きと言われるが、海外志向は潜在的には強く、後押しすれば、多くの学生が海外に出る」などといった見解や主張が飛び交い、若い人たちを取り巻く事情に疎い私には大変新鮮に感じられました。

201009260111.jpg ところで、催しが行われたのは、六本木にこの夏オープンしたばかりの「ニコファーレ」という施設。周囲の壁や天井などに埋め込まれたLED(発光ダイオード)が点滅し、ぐるりと全方向に映像を見せることができます。公開討論の様子は、この会場からインターネット上にそのまま生中継されました。最終的には7万人以上がこの中継を見ていたそうです。(人数を差し替えました)

この壇上から、「この問題について意見を寄せてください」と呼びかけると、会場の壁に意見やコメントの文字が流れて、即座に全員が内容を共有できます・・・と書くと、「NHKでもそういうものをやっているのでは」という指摘がありそうです。確かに双方向性をうたった討論番組では、視聴者のご意見を基にした議論を展開します。

ただ、テレビを見ながら考えをまとめて、ファックスやネットを経由して放送局へ意見を寄せることと、パソコンや携帯、スマートフォンなどを使ってネット上の情報やほかの人のコメントを見ながら、議論に加わっていくというものでは、参加意識の深さが違うような気がします。(もちろん、NHKでも、放送技術研究所が、放送と通信のサービス融合をテーマに研究を進めています=少し宣伝でした)

この日、会場いっぱいにコメントを流すことで得られるライブ感の強さは非常に印象的でした。

201109260110b.jpgのサムネイル画像 ちなみに、上のように(画像をクリックすると拡大されます)スマートフォンでネット中継の様子を見れば、会場のスクリーンでも手元のスマホでも、コメントがどんどん流れる様子が分かりますが、よく見ると、会場では、どういうコメントをあえて流していないかという、選別の度合いも分かるんですね。

年齢を重ねると、経験値・ノウハウは蓄積されますが、創造性という観点では、若い人が長けている部分が多いと思います。技術・産業の進歩、新しいアイディアに遅れを取らないようにするには、個人的にも、若い人たちの取り組みにもっと注目していく必要がある・・・六本木でそんなことを感じました。

投稿者:菅原史剛 | 投稿時間:06時00分

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