2011年09月01日 (木)消費者庁発足2年 今後の課題は


消費者庁が発足して、9月1日で2年となります。
製品事故や悪質商法などに対して、消費者の立場に立った被害や再発の防止対策が求められていますが、集団食中毒や放射線の食品への影響の問題などへの対応が不十分だという指摘があり、消費者の期待にどう応えるかが課題となっています。

(この記事の末尾に、消費者庁の福嶋浩彦長官のインタビュー内容を掲載しています)

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消費者庁は、こんにゃく入りゼリーの窒息事故など、担当省庁が明確でない問題に取り組み、消費者行政の「司令塔」の役割を果たす目的で設立されました。

しかし、消費者安全法に基づいて会社名を公表して注意喚起したのはこの2年で3回だけで、焼き肉チェーン店の集団食中毒では、国の消費者委員会から「対応が遅く、司令塔の役割を果たしていない」と指摘されました。

20110901b012.jpgこれに対して、消費者庁の福嶋浩彦長官(下の画像)は
「今で十分だとは思っていない。消費者目線での情報提供を強化していきたい」と述べ、注意喚起を迅速に行うため、情報の公表基準を見直す考えを示しました。

20110901b013.jpgまた、東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射線の食品への影響に関する情報提供が不十分だという声が出ていることについて、福嶋長官は「消費者サイドでも放射性物質を測定していくことが必要だと思っている。それによって消費者の安心を確保したい」と述べ、消費者が持ち込んだ食材を検査できるよう、測定機器を自治体に貸し出すなどの取り組みを、来月にも始める考えを示しました。

福嶋長官のインタビューの主な内容は、以下のとおりです。
  
【放射性物質と食品を巡る問題について、細野消費者相からも「もっと踏み込んで言っていい」という発言があったが?】

放射能と食品の問題については、震災の復興に向けて消費者庁が取り組んでいる最も大きな課題の一つです。原子力発電所の事故という現実の中で、食の安全を確保していくいちばんの基本は、生産と出荷のところできちんと放射性物質をチェックして、規制値を上回るものは流通させない、放射性物質に汚染されたものは流通させないというのが、いちばんの原則だと思うんですね。 
確かに、ここは厚労省、農水省が中心になってやっていますので、消費者庁は厚労省や農水省に物を言う、きちんとやるようにと言う立場でした。できるかぎり言ってきたつもりですが、専門家が消費者庁に本当にいるわけではないなかで、本当に十分に指摘できたか、問題点を全部洗い出して提起できたかというと、不十分なところもあるんだろうと思います。
ただ、消費者庁として、厚労省、農水省に物を言うだけではなくて、今の現状の中で消費者に近いところで、つまり消費の場で、あるいは流通過程でも消費者に近い場で放射性物質を測定していくという取り組みも必要だという判断をしました。
原則は、基本は先ほども言いましたように、出荷のところできちっとチェックをし、汚染されたものは流通させないというのが、原則、基本ですが、今の牛肉の問題が起こったりという現状の中では、消費者のサイド、消費の場でも放射性物質を測定していくことが必要だと思っていまして、それによって消費者の安全安心を確保していきたいと思っています。 
ですから、その取り組みは、今度は厚労省、農水省に物を言うという取り組みではなくて、消費者庁自身が出て行く取り組みだと思うんですね。
もちろん、直接、消費者庁が測るということにはなりませんので、自治体がそういう取り組みをすでに始めていますから、全部の自治体ではありませんが、そういうところと連携をし、必要があれば、10月ぐらいからになりますが、測定機器を消費者庁が国民生活センターを通して自治体に貸与するということを進めて、そのほかにもいろいろな支援をして、消費サイドで放射性物質を測っていくという取り組みを全面的に支援をし、自治体に広げていきたいなと思っています。
それは、消費者庁自身の取り組みとしてやりたいと思っています。
繰り返しですが、原則は、出荷のところできちっとチェックするということなんですが、それだけでは、なかなか現実に消費者の安全安心が確保されているとは言えない状況になっていますので、消費のサイドでも放射性物質を測定するという取り組みを進めて、より消費者の安全安心を確保したいと思っています。
それは、生産者も、むしろそういう取り組みで安全というものをきちっと証明をするということがあったほうが、むしろ自分たちにとっても利益だという理解になってきていると思うんですね。
消費者だけの利益というよりも、生産者も含めた利益につながると思います。


【放射能を巡る問題、今後はどういう姿勢で臨むのか?】

もう一つの消費者庁の基本的な仕事として、政府全体がどういう取り組みをしているのか、あるいは放射性物質にどんな危険があり、どんな対応が必要なのかというようなことを、消費者にできるだけ分かりやすく、かつ正確に伝えていく、情報提供をしていくということがあると思います。それは消費者庁のとても重要な仕事だと思います。
ホームページで常にそういった情報を提供したり、あるいは食品と放射能という、Q&A方式の冊子を作って、自治体とか消費者団体とか、いろいろな場で活用してもらったりしてますし、直近では横浜と大宮で放射能と食品についてのリスクコミュニケーションの意見交換会を行いました。
先ほど言いましたように、消費の場でも測定していく、いろいろなところで測定していくようになればなるほど、そこで出てきた数値を、きちんと消費者が理解をし、どんなリスクがあるのかないのかを正しく把握して、そのうえで自分がどういう行動を取るのかを主体的に決めていく、自分自身で決めていく力が必要になってくると思うんですね。
そういったリスクコミュニケーションをきちっとやっていくということを、消費者庁としては全面的に取り組んでいきたいなと思っています。

 
【製品事故や悪質商法の対応について】

消費者事故が通知され、それに基づく分析、情報提供、注意喚起ということでいえば、製品についての事故で消費者の生命身体を守る取り組みということでは、比較的進んできたと思いますが、財産事案という悪質商法やいろいろな経済的被害、悪質商法による被害ですとか、契約による被害を受けた事故への対応というのは、製品分野に比べるとまだまだ弱いという指摘を受けていますし、そういう面は確かにあると思います。 
こういった分野で、特にずっと取り組んできた国民生活センターとの連携というのもさらに強めていきたいと思います。
先日の温泉付きの有料老人ホームの注意喚起や情報提供について、国民生活センターと連携して消費者庁も安全法に基づいて取り組む、注意喚起をしましたし、こういった積み重ねが必要なんだろうと思います。と同時に、悪質商法などに対して、どうしてもいろいろな法律の隙間がありますので、そういった隙間事案についても、業種横断的に行政措置を取っていける、消費者庁が勧告や命令をしていけるような法整備も必要だと思っていて、これはぜひ来年の通常国会には法律案を出したいと思っています。
もちろん、法整備だけではなくて今の法律をさらに十分に使って取り組んでいくことも重要だと思うんです。
そういう能力を高めていくということが大事だと思っています。そうした面でこういう経済事案にずっと取り組んできた、蓄積を持っている国民生活センターとの連携というのも大きな課題だと思っていて、ちょっと別のお話になりますけど、国民生活センターとの一元化の議論でも試行と検証をするということになっていますので、そういう一元化の試行の中で、国民生活センターとの連携をさらに強めていくことが大事だと思っています。


【国民生活センターとの一元化に、消費者団体が懸念を示していることについて】

消費者団体の全部ではありませんけど、国民生活センターの一元化に反対している、あるいは非常に懸念を表明されている皆さんとの意見の違いがあるのは事実だと思いますので、これは、一元化の試行をして皆さんで検証してもらうなかで、お互いの理解を深めていければいいな、お互いに共通理解をぜひ作っていきたいなと思っています。  

【一元化の議論の進め方は?】

例えば、懸念が表明されたものの中で、財産事案に対する情報発信が一元化すると、かえって弱まるのではないか、遅くなったり内容が薄くなったりしないかというような懸念が出されたわけですね。
消費者庁と国民生活センターのタスクフォースの中では、むしろそれを強化していける、一元化することによって、より迅速にできるし、政策的な対応が必要なところは、よりきちっと対応していけるというふうに出したわけですね。
ただ、なかなか言うだけでは懸念が解消されない、依然として心配だというふうに指摘されていますから、それは、実際にすべて一元化したのと同じようにはできないかもしれませんが、タスクフォースの中で打ち出した、情報発信チームですとか、あるいは政策レビュー会議というものは先行して実施する、先行というか試行的に実際にやってみることはできますので、実際にやれることは一元化したときの姿でやってみて、ただ紙の上の議論ではなくて、実際にやってみて評価してもらうということは非常に有効なんではないかと思っています。


【一元化は、やれるところから始めることになる?】

結局、こうやれば、よりよくなるという意見と、いや悪くなる、心配だという意見が対立していましたから、実際にやってみて本当によくなるのか、あるいは、どんな課題があるのか、その課題が乗り越えられるのか乗り越えられないのか、実際に検証してみるということは有意義だと思いますね。
いろいろな皆さんにいろいろな立場で検証してもらえればいいのではないかと思っています。  


【消費者安全法に基づく注意喚起をもっと行うべきだと、国の消費者委員会が建議したことについては?】

消費者安全法に限りませんが、収集した情報の分析をし、それを対応に結びつけていく、消費者の情報提供に結びつけていくということは、さらにレベルアップをしないといけないことだと思っています。
先ほどちょっとお話したように、消費者庁が出来る前からやられていたものもありますし、消費者庁が出来て消費者安全法に基づいてやるようになったものもあるわけですが、いずれにしても、ちゃんと消費者目線で迅速に的確な情報を提供していくことが必要ですので、一つ一つ改善はしてきましたけども、まだまだ課題があるのは確かだと思いますので、レベルアップをしていきたいなと思います。


【そのレベルアップのイメージは?】

公表の基準といいますか、基本要領の見直しを進めているところです。ただ、要領の見直しと同時に、先行して、先ほどもお話したことですが、例えば、事故が起こったときに、製品に欠陥があったことによって起こった事故であることが明白な場合にだけ、今までは具体的な製品名や企業名を公表していましたが、昨年から、消費者の安全を確保するために必要であれば、製品起因かどうかには関わらず、具体的な製品名や企業名を出していくということにすでにしていますし、一つ一つちゃんと消費者目線で情報をより提供していこうということは重ねてきています。
ただ、今で十分だとは思っていませんので、そういった消費者目線での情報提供を強化していきたいと思っています。ユッケの問題は、ユッケの個別の案件については、自治体や厚労省がきちんと対応していることを確認していましたので、消費者庁としては単に個別の事案、1つのお店とか1つのチェーン店だけの問題ではなくて、生食の肉の基準ですとか、あるいは生食のリスクの問題ですとか、そういった全体的な問題がある、全体的な危険性があるということで、そういった注意喚起を重視していたんですね。
その後も厚労省が基準を法に基づくものに改めて整備しているところですし、消費者庁も併せて表示の基準を定める、法に基づく基準を定めるということを、今まさにやるところで、その中では、店舗においても生食、肉の生食のリスクについて、ちゃんと注意喚起を義務付けるということも踏み込むということにしているんですね。そういった取り組みも併せて必要だろうと思います。

投稿者:吉川香映 | 投稿時間:15時31分

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