2017年10月23日 (月)ふるさと納税に異変? "訳あり品"の活用も


※2017年10月4日にNHK News Up に掲載されました。

お肉や野菜、果物など、全国各地の特産品をふるさと納税の返礼品として楽しみにしている人も多いと思います。ところがことし「返礼品がなかなか届かない!」「想定外のものが来た!」などというケースが相次ぎました。調べてみると天候不順の影響を受けた自治体と農家の苦しい事情がありました。

ネットワーク報道部記者 野田綾・後藤岳彦

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<アスパラがカレーに!?>
神奈川県平塚市の津久井克紀さんは3年前から各地の果物や野菜などの返礼品を楽しみに、毎年、およそ10の自治体にふるさと納税をしています。

ことし、津久井さんの目にとまったのは、北海道遠軽町のアスパラガス。早速寄付をして返礼品が届くのを待ちました。届く予定は8月。しかし9月に入っても届かず、「遅いな」と心配していたとき、町から返礼品が届きました。

箱を開けてみると、中身は手紙とご当地のレトルトカレーでした。手紙には「夏の低温や日照不足でアスパラガスが不作で、次の旬の時期まで待ってほしい」と書いてありました。レトルトカレーは“おわびの品”だったのです。
津久井さんは「やっぱり自然相手なので不作の年があるのはしかたのないこと。わざわざお手紙とカレーを送っていただいて私のほうが逆に申し訳ないと感じました。来年の春を楽しみに待ちたいと思います」と話していました。


<天候不順の影響相次ぐ>

fu171004.2.jpg天候不順によるふるさと納税への影響は、ことし、各地に広がっています。

千葉県館山市の人気の返礼品の一つ、ドラゴンフルーツ。夏場の長雨や日照不足の影響で生育に1週間から2週間ほどの遅れが出たということです。返礼品の出荷などを請け負う施設では寄付者にメールや電話で発送が遅れることを伝えました。

施設の担当者は「できるだけ早めにお届けしたいのですが、規定に満たないものを出すのはやはり気が引けるので、大きく育つまでやむをえず待っていただくことにしました」と話していました。

fu171004.3.jpgまた、去年、館山市の返礼品に加えたところ、大人気となったマンゴー。ことしは日照不足などが影響して実が十分に大きく育たないものが目立ち返礼品としては出荷できなくなりました。

マンゴー農家は「かなり不作でした。不作と天候には勝てません。待っていてくれた方には申し訳ないです」と肩を落としていました。


<長ネギもにんじんも足りず>

fu171004.4.jpg一方、栃木県矢板市では野菜を中心にお米など10種類以上の品物が入った特産品セットの返礼品に天候不順の影響が出ました。本来は長ネギを入れる予定でしたが、不作となりセットに入れられない事態に。代わりに入れようと考えていたにんじんも数量を確保できませんでした。

そのため、セットに「キュウリの古漬け」を入れることにしたのです。地元の担当者は「いろいろ農家をあたってみたが、品数が足りず、形も不ぞろいになってしまうということがあり、断念しました。市内の道の駅で販売して評判もよかった古漬けにしました」と話していました。


<ピンチをチャンスに>

fu171004.5.jpg一方、ことしの不作のピンチをチャンスに変えようとしている自治体もあります。

長野県上田市では去年から特産のリンゴをふるさと納税の返礼品にして、人気を集めています。しかし、初夏に降ったひょうで、リンゴの実に傷が付いてしまいました。ほとんどが売り物にならず、リンゴ農家は苦境に立たされています。リンゴ農家の男性は「ショックで泣いているリンゴ農家もいます。誰かに背中を押してもらわないと動けない状態です」と話していました。

そこで上田市が考えたのが、傷ついたリンゴを、そのまま返礼品として出品することでした。上田市や地元の農協では、返礼品にしていいのかどうか何度も検討した結果、リンゴ農家を直接、支援するためあえて「訳あり品」で、寄付を募ったのです。


<訳あり品に寄付 その理由は>

fu171004.6.jpg東京都内に住む石坂伸さん咲子さん夫妻は、そのリンゴを返礼品に選びました。決め手となったのが、ふるさと納税の専用サイトに書かれたメッセージでした。上田市は、リンゴの被害について、写真つきで長い説明文を掲載していたのです。「農家は大変落胆しています」「農家を応援してください」などと、農家の声をありのままに伝え、支援を訴えていました。
咲子さんは「説明がわかりやすかったです。こんなにひょうが降ったということがわかったので小さなリンゴの実はひとたまりもないだろうとすぐに理解できました。ことしこそ上田市に協力したいと思いました」と話していました。

fu171004.7.jpg石坂咲子さん
上田市への寄付の申し込みには、「農家に頑張ってほしいです」、「ひょうの傷なんて気にしません」など応援のメッセージもたくさん寄せられました。上田市の担当者は「多くのメッセージをいただき本当にうれしいです。リンゴ農家にとっても来年に向けて、活力になってほしいと思います」と話していました。


<寄付者向けにセミナーも>

fu171004.8.jpgこうした自治体の取り組みを後押ししようという動きも出ています。

インターネットで「ふるさと納税」の自治体の返礼品の紹介などを行っている専用サイト「ふるさとチョイス」の運営会社は、先月、都内で開いたふるさと納税のセミナーで天候などで被害を受けた自治体をふるさと納税で支援しようと呼びかけました。セミナーに参加した女性は「自治体だけではなく、農家も支援できるのはとてもよいと感じました。自分でできる支援をしてみたいです」と話していました。


<困りごとを助ける制度に>
ふるさと納税をめぐっては、返礼品の自治体間競争が過熱し、総務省が、高額な品物などについて見直しを要請する事態となっています。ふるさと納税の制度に詳しい神戸大学大学院の保田隆明准教授は「被災地支援のような形で、ふるさと納税は非常に広く活用されていますが、そんなに大きな被害ではなくても、目を向けてみると、一つ一つの農家が困っている状況などはあります。その中で、ふるさと納税の制度は困りごとを助ける、困りごとを解決するための1つの制度であるという捉え方は、今後どんどん広がっていくべきだと思います」と指摘しています。

「訳ありリンゴ」のように訳があるなら応援したいという人も多いと思います。ふるさと納税の本来の意義は、地域を応援したい、元気にしたいということのはず。それだけに寄付する人と寄付を受ける側のコミュニケーションが大切なのかもしれません。

 

投稿者:野田 綾 | 投稿時間:17時00分

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