2020年01月22日 (水)ジワる ハロウィーン
※2019年10月28日にNHK News Up に掲載されました。
「シャンプー流しながらトリートメントを探す人」「雇われ店長」「バーベキューに来た手伝う気のない女」これも立派な仮装です。
秋の風物詩として、日本でも定着しつつあるハロウィーン。ゾンビやカボチャなどの定番だけでなく、ことしはこんな「じわじわくる」変わり種の仮装まで登場しました。衣装をまとって街へ繰り出す、お菓子を求めて家を訪ね歩く…ことしのハロウィーン、あなたはどうやって楽しみますか?
ネットワーク報道部記者 有吉桃子・ 大石理恵・ 斉藤直哉
これもハロウィーン!?
今月27日に東京・渋谷で開かれたイベント。「地味ハロウィン」。派手な衣装に身を包んだ人も、髪の毛をカラフルに染めた人も、お酒を飲んで暴れる人もいません。でも、よく見ると皆さん、ちゃんと仮装しているんです。
皆さん経験ありますよね。冒頭の写真は「シャンプーを流しながらトリートメントを探す人」こちらは迫真の演技。「宝塚音楽学校の合格発表を見に来た生徒の親、宝塚音楽学校の合格発表を見に来た生徒」ジワりますねー。
このほかにも「バーベキューに来た手伝う気のない女」
「雇われ店長」などなど、どこかで見たことがあるような、思わずにやけてしまう仮装がめじろ押しです。
このイベントは日々の話題を扱うウェブサイトの「デイリーポータルZ」が2014年から毎年開いていて、ことしで6回目です。
イベントの発起人でデイリーポータルZ 編集長の林雄司さんが知り合いに声をかけ、飲食店で小規模に開いていたそうです。しかし、その独特の切り口が話題となり年々参加者が増加。ことしは500人を超える人が思い思いの仮装で参加しました。
さらに「地味ハロウィン」はイベント外でもSNS上で広がっています。自宅や職場で仮装した人たちのさまざまな写真が投稿されています。同じようなイベントは広島や鹿児島など地方にも広がっているばかりか、ことしは台湾でも開催されました。
じわじわと広がる新たなハロウィーン。発起人の林さんは。
みんなで楽しもう
デイリーポータルZ 林雄司 編集長
「学校のクラスで人気者みたいな人ばかりじゃなくて、ものおじしたり勇気がなかったりしてハロウィーンに参加できないような人にもおもしろいことができるんじゃないかと思って開いています」
これまでのハロウィーンの定番ではない試みがどうしてこんなに受け入れられたのか、も聞いてみると。
「騒動などがあったことでハロウィーンを悪いものと考えたり文句を言ったりしても何も生まれない。せっかくだったら自分も加わってみて、なにかおもしろいことができれば仮装っておもしろいとかハロウィーンって楽しいということが広がっていくのでは」(林さん)
そもそもハロウィーンって?そもそもハロウィーンってどんなものなのか?「発祥の地」とされるアイルランドの大使館によりますと古代アイルランドのケルト人が2000年以上前に収穫を祝う祭りとして始め、以来長く行われてきました。
収穫が終わるこの時期には幽霊や悪魔の姿をした死者の魂が生まれた家に帰ると信じられていて、人々は食べ物や飲み物を用意し、みずからも不気味な仮装をして身を隠していたということです。その後アメリカなどに伝わり、世界的な人気につながったということです。本場アイルランドでは子どもたちが仮装をしたり、お菓子を食べたりして楽しむほか、さまざまな果物やナッツを使ったゲームが行われたりするそうです。
また、各地で花火やパレード、幽霊が出るとされるスポットを巡る「ゴーストツアー」なども行われているそうです。
実は長い日本での歴史昭和61年のハロウィーンの様子
日本では大人も子どもも仮装を楽しむイベントとして定着したハロウィーン。実は60年も前から広まっていました。
キャラクター商品などを扱う「キデイランド」によりますと戦後、現在の東京・渋谷の代々木公園一帯に広がっていた在日アメリカ軍施設「ワシントンハイツ」の関係者から求められ、1960年ごろから仮装グッズを置き始めたそうです。
その後1983年には、原宿にある店舗のまわりで日本初のハロウィーンの仮装行列を行いました。当時の参加者は外国人を中心におよそ100人だったといいます。
ハロウィーンがまだあまり知られていない中、お化けの仮装で練り歩いた行列は注目を集め、3年後には参加者が400人に。当時の商品
お菓子業界もハロウィーン商戦に乗り出していきます。
1971年には、「不二家」が「HALLO WEEN」ということばを、1975年には「モロゾフ」が「TRICK OR TREAT/トリック オー トリート」ということばを商標登録しました。(※子どもたちが家を訪ね歩く際に言うことば。「お菓子をくれなきゃいたずらするぞ」という意味)
「モロゾフ」によりますと、当時の社長が海外で行われているハロウィーンのイベントを知り、日本でも広めようとキャンペーンやイベントを始めたそうです。その後、テーマパークなどでもイベントが開催されるようになり、60年の歳月をかけ今の形になったようです。
どうなる渋谷一方、ここ数年、ハロウィーンの時期に仮装した多くの若者や外国人たちであふれる東京・渋谷。去年は軽トラックを横転させたとして若者が逮捕される事態にまでなりました。
トラブルを防ぐため、渋谷区はことし渋谷駅周辺の路上や公園などでの飲酒を禁止し事業者に酒の販売の自粛を求める条例を制定しました。
ハロウィーン直前の週末となった今月26日の繁華街の様子について、区の担当者に聞いてみました。渋谷区安全対策課 小原純哉 課長
「数えているわけではありませんが、感覚的に人出は去年の7割ほどでした。人が減った要因の細かい分析はこれからですが、外でお酒が飲めないなら騒げないし、つまらないと感じた人がいたかもしれません。これまでのところ去年のような大きな混乱はなく一定の秩序は保たれていると思います」
地元も条例を踏まえて対応しています。渋谷駅周辺の百貨店では週末の今月26日、午後6時以降の酒の販売を自粛。日本語や英語、韓国語で記載したポップを売り場に設置し、理解を求めました。ハロウィーン当日の31日も同じ対応を取るといいます。
街の環境にも変化区の担当者によりますと飲酒を禁止したことによって顕著に変わったのがゴミとトイレの問題です。
去年は路上に酒の缶やビンが散乱していたり、酒に酔った人が路上やビルの壁に用を足していたりするケースが相次ぎましたが、区によると、ことしは今のところ確認されていないといいます。
ただハロウィーン本番はこれから。当日は圧倒的に人出が多くなるため予断を許さないとして、区は対策を徹底することにしています。日本でも秋の風物詩として定着してきたハロウィーン。
派手な仮装もよし。地味でリアルな仮装もよし。はたまた“見守るだけ”もまたよし。
節度を持ってみんなで楽しいイベントにしていけたらと思います。
投稿者:有吉桃子 | 投稿時間:11時49分
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