2019年11月12日 (火)いいんですか? ミュージアムでパシャリ


※2019年8月20日にNHK News Up に掲載されました。

「スマホで作品を撮っていいですよ」
そんな美術館や博物館が目立つようになっています。
でも、そもそも博物館や美術館って撮影OKだった?
「SNSにアップできるからうれしい」
「立ち止まる人が増えて迷惑」
さまざまな声があがる中、“ミュージアム”での写真撮影のトレンドを取材しました。

ネットワーク報道部 記者 高橋大地・田隈佑紀

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カメラを持った人でいっぱいに

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「会場内 全作品撮影OK」
そんな看板が立つのは東京 上野にある東京国立博物館。
開催中の特別展「三国志」です。

「三国志」の時代の遺跡から出土した遺物や、横山光輝さんの人気漫画の原画などが展示され、連日、親子連れや三国志ファンなどでにぎわっています。

会場を見渡すと、あちらこちらでスマートフォンや一眼レフを手に作品を撮影する人たちの姿が。
今回の特別展は、すべての展示作品が「写真撮影OK」なためです。
(ただし、フラッシュ・三脚等の使用禁止、映像展示は不可)

中でも人気なのが、劉備に仕えた武将、関羽の銅像「関羽像」です。

ii.19820.3.jpg像の周りにはひっきりなしに人が訪れ、カメラにその姿を収めたり、一緒に記念撮影をしたりする人もいます。

撮影をしていた人に話を聞いてみると…          
「写真撮影ができると会場で知ったので、ロッカーにしまったカメラを出して戻ってきました。もっと広がるとよいですね」
「特別展では、ピンポイントで1つの作品を撮れることはあっても全部OKなのは初めてなのでよかったです」

そもそも撮影OKなの?

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博物館や美術館というと「作品の写真撮影はできない」というイメージがありますが、今はOKなのでしょうか?

特別展の主催者の1つ、東京国立博物館広報室の長谷川悠さんに話を聞きました。
「今回、展示物の多くは中国の博物館や研究所から借りていますが、所蔵している方々から撮影の許可が出ました。漫画の原画や人形劇の人形についても同様です。お客さんが写真を撮ることで、三国志の世界や中国の文化を楽しんでもらうとともに、その魅力をSNSなどで広げてほしいと考えました」(長谷川さん)
では、いつからこうした撮影は可能になったのでしょうか。
「東京国立博物館では、常設展の所蔵品については以前から特に写真撮影を禁止していたわけではないのですが、平成16年の本館リニューアルなどに際して個人利用に限って撮影ができるよう明記しました」(長谷川さん)
博物館の所蔵品を展示する常設展は、そもそも禁止されていなかったということでした。では特別展は、どうでしょうか。
「特別展は所蔵者の意向によるのですが、平成27年の特別展『始皇帝と大兵馬俑』で、特定の作品について撮影OKにする取り組みを始めました。そうした流れの中で、今回もできるかぎり多くのものを撮影できるようにと考え、所蔵者からのご理解も得られました」(長谷川さん)

全国の博物館・美術館は?

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一方、常設展であっても、撮影できない場所が多いような気もします。

全国の博物館や美術館での対応はどうなのか、国立や規模の大きな施設など主だった20か所余りについて確認してみました。

ii.19820.6.jpg国立西洋美術館
その結果、一部をのぞいて基本的にOKは、「国立科学博物館」「国立歴史民俗博物館」「国立西洋美術館」「東京国立近代美術館」「江戸東京博物館」「十和田市現代美術館」など10か所。

基本的にNGは、「京都国立博物館」「奈良国立博物館」「九州国立博物館」「大原美術館」「足立美術館」など8か所。

一部の場所に限ってOK、もしくは展示によって異なるなどそのほかが5か所となっています。

国立の施設の中でも対応が分かれているのが興味深く、撮影NGの場合は「作品保護、所蔵者権利保護、観覧環境保全のため」、「他の方の鑑賞の妨げになる場合があるため」といったことを理由に挙げています。

やむなく「撮影NG」も
ただ、中にはやむなく「NG」になっている場所もあるようです。

ii.19820.7.jpg大原美術館
岡山県倉敷市にある大原美術館では、以前は、館内での撮影を認めたことがあったといいます。

しかし、エル・グレコやモネなどの人気作品の前で「記念写真撮影会」が行われるようになり、ほかの客の迷惑になったため、とりやめたということです。

ii.19820.8.jpg大原美術館のホームページ
美術館のホームページには「美術館を訪れていただく皆様全員が、よりよい環境作りにご協力くだされば、私どもの美術館は、もっともっとたくさんのサービスを提供したいと考えております。皆様のご協力をよろしくお願いいたします」というメッセージが、こうした経緯とともに紹介されています。

撮影OKかNGか
「簡単に決められるものではなく、企画展のつど、どうすべきか議論しながら決めています」
そう話すのは横浜美術館の学芸員、片多祐子さんです。

ii.19820.9.jpg横浜美術館
去年、横浜美術館でイギリスの美術館所蔵のロダンや、ピカソなどの作品を集め開催された企画展「ヌード NUDE」。若い世代の人たちに多く訪れてもらおうと、作品の撮影を認めることにしました。

ただ、通路が混雑したり、落ち着いて作品を鑑賞できなくなったりするのではないかといった懸念の声もあり、展示スペースが広く、いちばんの目玉であるロダンの大理石の彫刻作品に限ることにしました。

ii.19820.10.jpgSNSでの発信を意識し、いわゆる「インスタグラマー」を招いたイベントも行いました。

360度さまざまな角度から作品を撮影できることもあって、SNS上にはさまざまな写真が投稿されています。

中には、女性2人で彫刻の格好をまねして「自画撮り」をするなど、思い思いに楽しんでいるようです。

横浜美術館は、「想像していた以上に展示を楽しんでもらえたと感じた」とするものの、これからも「撮影OK」に踏み切れるかどうか、そう単純な話ではないといいます。

企画展のアンケートに寄せられた声を見ると、撮影をめぐる意見はさまざまです。

「周りで撮影している人がいると落ち着いて作品を見ることができない」

「撮影OKでも、実施する時間帯を区切ってほしい」

美術館関係者の間でも、撮影を認めることへの賛否を議論するシンポジウムが開かれるなど、意見は分かれているそうです。

ii.19820.11.jpg横浜美術館学芸員 片多祐子さん
片多さんは次のように話してくれました。
「物理的にすべての美術館の展示を見に行くことができないのも現実です。私自身も海外の展示をSNSで見て、文章だけでは分からない情報や世界観を楽しんでいます」
「一方、静ひつな空間でじっくり作品と向き合えることこそが、写真やスマホの画面を通してでは感じられない美術館の価値であり、それを守っていくことも大切だと思います。それぞれの美術館で何を大切にするか考えることが必要だと思います」

アートとSNS、その在り方は
美しい写真とともに、それぞれが感じたことをシェアする。

アートとSNSはまさに相性ぴったりです。

でもこんな時代だからこそ、直接作品と触れ合う静かな体験を大事にしたい、そうした声も聞かれます。

「SNS時代」に美術鑑賞はどうなっていくのか、模索は続きそうです。

投稿者:高橋大地 | 投稿時間:11時20分

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