2018年01月19日 (金)選ばれし漢字たち2017


※2017年12月26日にNHK News Up に掲載されました。

「危」「傾」「熱」これなんだかわかりますか?年末になると全国の知事はこの1年対応に迫られた事や注力した政策などを振り返る記者会見を開きます。そこで増えているのがことしを表す漢字ひと文字の発表。「選ばれし漢字たち2017」です。

ネットワーク報道部記者 飯田暁子・後藤岳彦・玉木香代子

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<興>
「興」を選んだのは福岡県の小川洋知事です。

ことし7月、福岡県と大分県に大きな被害をもたらした九州北部豪雨。住宅地に大量の土砂や流木が流れ込むなどして被害が拡大し、福岡県と大分県で39人が犠牲になりました。

era171226.2.jpg小川知事は記者会見で、「戦後最大の災害で初めて被災地に入った時は本当に息をのんだ」と当時を振り返りました。そのうえで「豪雨災害から被災地が立ち上がる1年だった。引き続き一日も早い復旧復興に取り組みたい」と語りました。


<危>
災害に対応する危機管理が課題となった県もありました。
ことし7月の記録的な大雨で河川が氾濫し、住宅が浸水するなどの大きな被害が出た秋田県です。

era171226.3.jpgこの際、ゴルフ旅行から戻るのが遅れて、県の緊急会議に出席できなかった佐竹敬久知事が挙げたのが「危」の文字。

記者会見で「『ことしの漢字』は毎年、非常に悩むが、今回は自分の反省もあって、すぐにこのひと文字が出てきた」と述べて、「危」と書いた色紙を示しました。そのうえで、「人生最大の危機意識の欠如で、自分自身でも悔やんでいる。任期中はなにかあればすぐに出勤する」と述べました。


<共>

era171226.4.jpg東日本大震災や福島第一原発の事故からの復興に取り組む福島県の内堀雅雄知事はことし1年を振り返り、「共」(とも)という漢字で表現しました。

内堀知事は、「来年も県民の皆さんと、福島に心を寄せてくれるすべての方々とともに復興への思いを共有し、一丸となって、福島の未来を切り開いていきたい」と語っています。


<傾>
地方から見た国全体へのイメージを漢字で表現したのは静岡県の川勝平太知事、「傾」を選びました。

川勝知事は「森友学園や加計学園の問題などで政治家だけでなく、官僚の信頼も揺らいだ。また東芝の財務問題や神戸製鋼、それに三菱マテリアルなど日本を代表する企業で問題が起き、大企業神話がくずれたと思う」と指摘しました。


<ネット上でことしの漢字は>
知事が選んだ漢字、続きを見る前に、ネット上で話題になっている漢字も見てみましょう。ここ数日で相次いで投稿されていたのは、京都の清水寺で発表された今年の漢字「北」への反応です。

era171226.5.jpg発表当初は「ピンと来ない」「全然共感できない」といった反応が多くありましたが急増しているのは「納得」の声。
きっかけは24日、競馬の有馬記念でのキタサンブラックの優勝です。ツイッターには、「今年の漢字が『北』って聞いたときはしっくりこなかったけど…昨日やっとしっくり来た!!!キタサンブラック、キター」「今年の漢字は北で間違いない。キタサンブラックの年だったわ」などの投稿がありました。

era171226.6.jpgまた、ネットならではの一文字といえば「写」。
ことしはインスタグラムに投稿するために写真を見栄え良く撮影することがブームとなり、「インスタ映え」という言葉も話題になりました。

ことしのひと文字は「写」だという人は、「ツイッターにインスタ、アナログのオイラには写真撮るの難しかったですね」と投稿していました。

また、インターネット上の書き込みをきっかけに批判が巻き起こる「ネット炎上」も話題となりました。

大手損害保険会社は企業向けにネット炎上に対応する保険を発売しました。ツイッターにも、「今年のひと文字、北よりも炎だったんじゃないかと思うレベルでそこらじゅうで炎上してる」という書き込みもありました。


<平>
さらに全国の知事たちが選んだ漢字の後編。被爆地・広島の湯崎英彦知事は「平」を選びました。

ことし7月国連で核兵器禁止条約が採択され、11月にはその実現に貢献したICAN=核兵器廃絶国際キャンペーンがノーベル平和賞を受賞しました。

era171226.7.jpg授賞式ではカナダ在住の広島の被爆者で、ICANとともに活動してきたサーロー節子さんが被爆者として初めて演説。「あきらめるな、頑張れ、光が見えるか、それに向かってはっていくんだ」

倒れた建物から救い出された時にかけられたという言葉を演説の最後に引用し、核兵器廃絶の意思を持ち続けることの大切さを力強く訴えました。

湯崎知事は、「広島県としては核兵器のない平和な社会を目指していますが、その中で進展もあり、分断もあった年でした。来年こそ世界中の人々が平らかに暮らすことができると良い」と語りました。


<改>
「人生は常に波瀾万丈でございますが、特にことしは凝縮していたように思います」と会見で述べた東京都の小池百合子知事。どういう漢字を選ぶかと聞かれて「うーん、改革の『改』かな」と答えました。

era171226.8.jpgことし7月の都議会議員選挙で大勝、ところが秋の衆議院選挙ではまさかの失速。小池知事は「改めていろいろ挑戦をしていきたいと思っておりますし改めて都政にしっかり取り組んでいきたい」と話していました。


<熱>
およそ77万年前に地球の磁場が逆転した痕跡が見つかり、地球の歴史の一時代がチバニアン=千葉時代と呼ばれる可能性が高まったとして注目を集めた千葉県。

森田健作知事はことしの漢字を問われると「『熱』かな。みんなで熱くなって頑張ったと。そういうような気持ちでございます」と振り返りました。永遠の青春スター、熱血キャラは変わらないようです。


<一>
最後に「一」を選んだのは滋賀県の三日月大造知事。ことし9月、地元・滋賀県彦根市出身の桐生祥秀選手が、陸上男子100メートルで日本選手初の9秒台となる9秒98の日本“一”をマーク。

era171226.9.jpgさらに5年に1度行われている厚生労働省の調査で、滋賀県の男性の平均寿命が81.78歳と全国平均を1歳上回って初めて全国“一”位となりました。三日月知事は記者会見で「桐生選手が日本一となり長寿一となり、なんとかファーストというのがあふれた1年だった。しっかりといろんなことを考える年の暮れにしたい」と締めくくりました。

災害の犠牲者を悼み復興を願う被災地、核兵器廃絶を願う人々の思い、1000日を切った東京オリンピック・パラリンピックに向け重みを増す都政、さらには日本のスポーツ史に残る快挙まで全国の知事が選んだ漢字はさまざまなことを思い起こさせます。来年の今頃は全国各地でどんな漢字が選ばれるのでしょうか。

投稿者:飯田 暁子 | 投稿時間:17時14分

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