2012年10月24日 (水)"女子"3世代消費 拡大中


景気が低迷する中、本格的に動き出したのが「団塊世代」など60歳以上を中心とした時間にもお金にも余裕があるシニア世代の消費。いつの時代も、祖父母は孫に対してお財布のひもが緩みがちになると言われていますが、中でもジワジワと拡大しているのが、おばあちゃん、娘、孫娘による「“女子”3世代消費」です。お金を出すだけでなく、孫と一緒に楽しむ消費パワーが脚光を浴びています。
 

 【“女子”3世代とは】
埼玉県に住む元気なおばあちゃん、若狭ヤスエさん(61)、娘の宮倉裕子さん(34)と孫娘の優奈さん(8)は、食事に、買い物に、3世代そろって毎週のように出かけています。
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この日は、家の近くのスペイン料理店を訪れました。支払いはほとんどヤスエさんですが、3人がそれぞれ、一緒にいる時間が掛けがえのないものだと感じています。記者が「3人で出かけたり食事をしたりする時のお金は惜しくないものですか?」とヤスエさんに尋ねると、『3人で一緒においしいものを食べたり、買い物をしたりする時間はあっという間で本当に楽しいです。お金でできることがありがたい、お金は惜しくないですね』と笑顔で話してくれました。
20121024_4.jpg娘の裕子さんは、『女同士の時間は居心地がいいです 』とのこと。3人の“女子”の結束は、かなり固いようでした。
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【広がる3世代消費 けん引役は“女子”3世代】
景気が低迷する中でも活発な3世代の消費。旅行業者やホテルなどがいち早く目をつけ、3世代で利用すると割り引くがきくサービスなどを展開しています。
20121024_7.jpgこのうち、横浜市内のホテルのレストランでは、ここ数年、3世代での利用が目立つようになったことから、今年6月、3世代向けのプランを始めました。3世代向けのプランは、当初、2か月間限定の予定でしたが、売り上げが好調だったため、プランの提供を続けることにしたそうです。新横浜プリンスホテルの山田務さんは、「多い時だと1日で10組くらいの3世代に利用していただいています。この中でも、女性3世代での利用が増えています」と話してくれました。
20121024_24.jpg“女子”3世代の消費にダイレクトに注目する動きも出始めました。
大手おもちゃメーカーは、今春、人気の人形シリーズに「おばあちゃん」を加えました。売り場に“女子”3世代で来るお客さんが目立つようになったことや、孫がおばあちゃんと一緒に人形遊びをしているという企業調査をもとに販売に乗り出したところ、売れ行きは好調だということです。
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タカラトミーの上田喜美代さんは、「女子と言えば、年齢を問わずファッションが大好き、お買い物が大好き、遊び、遊び心も大切にするという共通項は必ずあるので、“女子3世代”は、消費という意味では、強力な3人だと思います」と説明してくれました。
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 【“消費のリーダー”が生まれた背景は】
 こうした“女子”3世代の消費が活発な背景には、おばあちゃんの意識の変化があります。3世代で外食を楽しんでいた若狭ヤスエさんは、孫の優奈さんに友達のような感覚で接していて、自分のことは、「おばあちゃん」ではなく、『ヤスエちゃん』と名前で呼んでもらっています。
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若狭さんが優奈さんに贈ったプレゼントの一部を見せてもらうと、大好きなキャラクターのグッズや洋服がたくさん。中には、子ども向けのウィッグやお化粧セットも。ポイントは一緒に楽しむことです。この日も、優奈さんの髪の毛にウィッグをつけて、「変身」した姿を2人で楽しんでいました。
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それにしても、なぜ、こうした関係につながるのでしょうか。

【日本初のミニスカート世代】
若狭さんが20代だった1970年代。イギリスの人気モデルに憧れた女性たちは、「ミニスカート」に挑戦しました。
20121024_17.jpgファッション誌も相次いで創刊され、都会には、ミニスカートなど最新のファッションで全身をかため、さっそうと歩く女性たちがあふれました。
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若狭さんも働きながら、最新のファッションを楽しんできました。
20121024_19.jpg子どもが成長してからも、トレンドを大切にする気持ちは変わらなかったということです。20121024_20.jpg

若狭さんは、「若いころは思い残すことがないくらい好きなことや新しいものには何でも挑戦してきました。そのころの感覚が、今、孫と仲良しになれている秘けつだと思います」と話してくれました。
20121024_21.jpg若狭さんのように、常識にとらわれず、何事にも柔軟に挑戦してきた女性たちが、友達感覚で楽しむ“女子”3世代の消費を引っ張っているのです。

【“女子”3世代消費 後押しする要因】
シニアの感覚の変化に加えて、この“女子”消費を後押ししているのが、女性の社会進出と長引く不景気で、子育て中も仕事を続ける女性の増加です。また、国の調べによると、親と同居、もしくは、1時間以内に行き来できる「近居」世帯は全国でおよそ80%に上ることがわかりました。働く女性にとって、親の近くに住み、子育てをサポートしてもらうことは、なくてはならないものになりつつあります。日常的に孫と祖母が触れ合う機会が増えていることも、消費を後押ししているようです。

さらに、夫や祖父など、男性が近くにいるからこそ、女性同士の結束が強くなり、より消費を加速させるという指摘もあります。女性の消費に詳しい、電通総研の北風祐子研究主幹によると、「例えば、男女のペアで買い物をする場合、男性から『同じようなもの持っているよね?』『必要ないのでは?』と指摘されることで女性は消費を我慢する心理が働きます。しかし、男性1人、女性3人となり“女性チーム”ができてしまうと、『パパは(おじいちゃんは)必要ないと言っているけど、私たちこれが欲しいから行ってくるね』ということで、男性抜きで、思う存分、買い物を楽しめるような“消費のドライブ”がかかってしまう」ということです。買い物シーンでは、男性が蚊帳の外に置かれる傾向があるようで、かわいそうですが・・・女性なら、この心理、何となく分かるのではないでしょうか。
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ところで、この“女子”3世代消費ですが、今後も広がると考えられています。これから孫を持つようになる世代は、消費が盛んだったバブル景気を経験した世代。海外旅行やエステなど、高額な消費につながるのではないかとみられています。

【取材後記】
最近、デパートやカフェなどで、「若々しい高齢の女性、その(おそらく)娘、孫娘」という、3姉妹のような組み合わせをよく見かけるようになりました。少し前まで、おばあちゃんが孫と友達のように接したり、“女子”3世代で一緒に買い物に出かけたりする姿はあまり見ませんでした。これは、何の変化なのだろう?と疑問に感じたのが、取材のきっかけでした。
不況が続く中、国内の消費でホットなのは、随分前から「シニア」だと言われてきましたが、「シニア」とひと言で言っても、10年前、20年前とは全く違います。
取材にご協力いただいた若狭さんのように、かなり短い(!)ミニスカートを着こなす勇気とオシャレな感覚をもち、右肩上がりの成長を続ける日本で若いころに買い物を楽しんだ世代は、今、何を求め、何にお金を使うのか?時代とともに変化する消費の形は、社会や「生」の経済をまさに表していて、非常に面白いと思いました。
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投稿者:清有美子 | 投稿時間:06時00分

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