2012年01月03日 (火)若者をスキー場へ "無料"戦略も登場


シーズンが始まったスキーとスノーボード。
いわゆるスキー人口は、ピークの平成5年には1800万人を超えていましたが、僅か10年余りで3分の1にまで落ち込んでいます。
平成9年ごろから人気の出てきたスノーボードと合わせても、ピーク時に比べ半分ほどです。

平成の初めごろはスキーブームで若者がゲレンデにあふれていましたが、時代は大きく変わりました。
スキー場の閉鎖や休業も相次ぐなか、スキーやスノーボードをやったことがない若者たちに目を向けた、さまざまなサービスが始まっています。

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長野県朝日村の「あさひプライムスキー場」です。
この冬、初心者の大学生や専門学校生などを対象にした、新たなレッスンを始めました。
スキーかスノーボードで、3日間のレッスンと用具のレンタル代、リフト券が合わせて2万4000円ですが、最大の特徴は「上達保証」です。
レッスン修了後、うまく滑れるようになったと納得できなければ、料金を全額返してもらうことができます
一方で、滑れるようになった場合は、長野県内11か所のスキー場の1日リフト券をプレゼントします。
(ご注意:このレッスンは1月9日までだそうです)

ef2.jpg早速訪れていた専門学校生のグループは
「信頼があるっていうか、ちゃんと教えられなかったら返すっていうのがすごいと思いました」
「ほかのところでもやったら、絶対に来る人が増えてゲレンデにいっぱい若い人たちが来ると思います」
などと話していました。

このスキー場に来る人は、ピーク時の3分の1にまで落ち込んでいます。今では客のほとんどが中高年とファミリー層です。スキー場の再生には、未経験の若者を呼び込むことが不可欠と考えたのです。
スキー場の金澤武彦総支配人は
「やはり10代、20代に覚えてほしいですね。スキー場をアピールする、その手前として、スキーを覚えてもらう、そういうことで企画しました」と話しています。

しかし、そこに立ちはだかるのは、「消費を控え、家で過ごすのが好き」といわれる現在の若者の傾向です。
横浜市の大学生に聞くと、
「アウトドアの好き嫌いって人それぞれだと思う」
「スキー場までのお金がかかるし、時間もかかるし・・・」
という答えが返ってきました。

こうした若者を引きつけるため、この冬、全国に広がっているのが「無料サービス」です。
情報サービス会社「リクルート」が企画しました。
携帯電話で名前やメールアドレスを登録すれば、全国85か所のリフトが無料になります。申し込めるのは19歳のみ。高校を卒業し、初めて自由にレジャーを選べる年齢にターゲットを絞りました。

ef6.jpgヒントになったのは、若者に人気の携帯ゲームです。
携帯ゲームの多くは無料で楽しむことができます。しかし、ゲームを有利に進めようとするとお金が必要になります。無料を入り口にユーザーを増やし、夢中になった人から利益を上げるのです。リフト無料サービスは、このビジネスモデルをスキー場に応用したものです。
このサービスを始めたスキー場では、これまでは見られなかった初心者の若者が増えているといいます。

情報サービス会社では、今後は、交通手段や宿泊施設の新たなサービスも検討し、3年間でスキー場に来る若者の数を30パーセント増やそうと考えています。

ef4.jpgリクルートの加藤史子研究員は
「レジャーがすごく多様化して、いろんなもので遊べるので、いかに1回体験か、どうハードルを低くするかというきっかけ作りに、全員で努力したほうがよいと思います」
と話しています。

この冬、スキー業界が送る若者へのラブコール。
スキーブームの時代と違い、手近に多くの楽しみがある若者をどうゲレンデに呼び戻すのか。
一層のアイデアが必要になりそうです。

【取材後記】
皆さん、最近、スキー場に足を運んでいますか?
毎年、何度も足を運ぶという方もいらっしゃるでしょうし、ここ何年も行ってないなあという方もいらっしゃると思います。実は、私は一度もスキー場でスキー・スノーボードに挑戦したことはありません。取材で伺ったことはあるのですが・・・。私自身が四国出身で、あまりウインタースポーツに縁がなかったこともありますし、関東に出てきた大学時代は楽しそうにスキー場に向かう友人たちを横目に、あまり関心が持てなかった記憶があります。単におっくうだったのではないかと思います。

今回の取材で改めて感じたのは、スキー・スノーボードというレジャーが、やや敷居の高い楽しみであるということです。いわゆる「安・近・短」というわけにはいかず、住んでいる地域にもよりますが、「お金がかかって、遠くて、時間がかかる」ものだというイメージが強いと思います。
にもかかわらず、映画「私をスキーに連れてって」が公開されたあと、昭和の終わりから平成のひと桁にかけて、若者たちに大流行しました。今から見ると隔世の感がありますが。リフト待ちに数時間、宿泊する宿を予約するにも一苦労といった状態。この流行については、「あの時代が特殊だった」との声や「当時と比べると、文化自体が成熟し、集中したブームというのは来ないのでは」と分析する向きもあります。いずれにしても、スキーの参加人口が2000万人近くという時代は、もう来ないのかもしれません。

ただ一方で、スキー場や関連業界の誘客の取り組み不足を指摘する声があるのも確かです。「雪が降れば、客が来てくれる」「客はスキーの技術が上がれば満足」こういった考えでは、「消費を控え、家で過ごすのが好き」という若者を呼び込むのは難しいといわざるをえません。スキー場に足を運ぶきっかけ作りや、スキー・スノーボード以外の楽しみ、たとえば宿泊施設、グルメ、温泉、イベント・・・スキー場がそれぞれの個性に合わせた誘客の仕組みが求められていると思います。
そういう意味で、今回ご紹介した取り組みは、もしかしたらきっかけ作りとして効果が出てくるかもしれません。ただ、取り組んでいるスキー場や、大手情報サービス会社にしても、これで十分と思っているわけでなく、「一過性の仕掛けではなく、継続した取り組みが必要」という考えは共通しています。中長期的な視点の取り組みが求められています。

つらつらと書いてきて、ふと感じたのは、学生時代の私ははもしかしたら「消費を控え(単に金欠だったかも)、家で過ごすのが好き(出不精なだけな気も・・・)」という意味で、現在の若者の先取りだったのかもしれません。しかし、今回、スキー場を取材して感じたのは、「楽しそう」という思いです。一緒に行く相手が見つかれば、近いうちにスキー場を訪れるかもしれません。

投稿者:宮本知幸 | 投稿時間:06時00分

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