2012年11月14日 (水)ツイッターで広がる 見えない障害バッジ


外見からは分からない病気や障害で、日常生活を送るのが困難な「見えない障害」に苦しむ人たちがいます。そうした人たちのことを知ってもらおうと作られた「見えない障害バッジ」が今、話題です。ある女性のツイッターがきっかけで、これまで孤立しがちだった「見えない障害」の当事者同士がつながり、さらに、その他の人たちにも支援の輪が広がっています。

20121113-00.jpg

 【見えない障害の苦労とは】
都内に住む大野更紗さんは4年前、免疫が正常に働かなくなる自己免疫疾患を発症し、高熱や関節の痛みなどに悩まされるようになりました。原因も治療法も分からず、症状を抑えるために1日に25錠もの薬を飲んでいます。それでも症状はなかなか抑えきれません。その苦しさを2年ほど前からツイッターに投稿し、赤裸々に思いをつづっています。(https://twitter.com/wsary

20121113-11.jpg大野さんは、病気のことをツイッターに投稿した理由について、「難病とか、内部疾患とか、見ただけではどこが悪いか、苦しいか分からない人たちがいて、今までは声をあげる場所すらなかった。ある日突然、何の前触れもなく難病の当事者になって、ここまで大変なのかというのをとことん味わって、特殊なことではなく誰にでも起こりうることだと知った。その大変さを言葉にすることが、世の中の大変さを少なくすることにつながるんじゃないかと思った」と話します。
 20121113-02.jpg

【ツイッターでつながる】
投稿から半年、それを見ていた人たちの間で「何か支援ができないか」という議論が始まりました。その当時のやりとりは今も、togetterに残されています。(http://togetter.com/li/68113)「自分にできることは何だろう?」「まず動きましょー」。直接会ったこともない他人同士が、ツイッターでつながり、およそ4か月に及ぶ議論を経て「見えない障害バッジ」が生まれました。

20121113-04.jpg支援者の1人、上田緑夏さんは、アクセサリー関係の会社を経営する人脈を生かして知り合いの業者に安くバッジを作ってもらうよう手配しました。ツイッター上の知り合いを通じてたまたま議論に加わったという上田さん。以前は特に障害者問題やボランティアに興味があったわけではありませんでした。しかし、ツイッターでやりとりをするうち、「こんなにたくさん苦しんでいる人がいるんだということを初めて知った。ツイッター上の友達とは話す回数が増えるので現実の友達と同じくらい深いつながりができ、自然に協力できた」と話します。

20121113-05.jpg上田さんと同様にツイッター上だけのつながりで「見えない障害バッジ」の運動を支援するメンバーは全国にいます。デザインは大阪のウェブデザイナー。専用のホームページは東京の会社員が担当。メール対応や発送、お金の管理などは東京、神奈川、静岡、名古屋、神戸、鳥取の各地の支援者が全てボランティアで担当しています。

20121113-06.jpg【見えない障害バッジ】
「見えない障害バッジ」は、当事者が持つ、小さな赤いハートマークが付いたものと、支援者などが持つ啓発用のもの2種類があります。見えない障害で人知れず困っている人がいることに気付いてもらい、当事者と支援したい人をつなぐきっかけにしてほしいという思いが込められています。

20121113-07.jpgバッジは収益をあげることを目的としていないため、製作費に送料を加えた実費で希望者に配っています。これまでに1万個以上が配られ、ことしから月に2000個生産できる体制を整えましたが、人気に対応が追いつかず手に入れるまでに数か月待ちの状態が続いています。通勤かばんにつける人、ネックレスに作り変えた人、帽子にピンで留める人・・・バッジのホームページには取り寄せた人たちがさまざまな使い方をしたバッジの写真が掲載されています。(http://mybadge.watashinofukushi.com/

【変わること、変わらないこと】
バッジは、「見えない障害」に苦しんでいる人の気持ちに変化を与えています。発送を担当している高櫻剛史さんは、少しの刺激でも全身に痛みを感じる線維筋痛症という病気で、ほとんど外出することができません。インターネットでバッジのことを知り、自宅でできるならと協力を申し出ました。高櫻さんは「病気になって一番自分の中でダメージが大きかったのが仕事を失ったこと。 社会とのつながりを絶たれて、自分が何の役にも立っていない。それがバッジを通して、小さいことでも何かつながりを得られるというのがすごく大きなことでした」と話します。

20121113-09.jpgバッジを身に付けても痛みから逃れられないのは以前と同じ。それでも外出することに少し前向きになれたという高櫻さん。「バッジ自体は社会にまだ浸透していないので、持っていても他のストラップと変わらないように思うけれど、勇気の源になっている。自分からも見えていなかった人、見えないことで苦しんでいる人がたくさんいることが理解できたので、いつか街でバッジをつけた人に出会って、話がしたい。それを楽しみにしています」と話していました。

20121113-08.jpg【取材後記】
今回、「見えない障害バッジ」に関わる方々にお会いし、たくさんのお話を聞かせてもらいました。病気の苦労、バッジに込めた思い、今後のこと・・・。そうした貴重な話のほとんどは、およそ5分という短い放送の中には盛り込むことができず、泣く泣くカットしました。せっかくなので「見えない障害バッジ」が生まれるきっかけとなった大野さんのインタビューを詳しく紹介します。

(見えない障害とツイッター)
「ツイッターなどのSNSは今までなかなか困難や苦難を表現する場所すらなかった人たちが声をあげるための1つの役割を果たしていて、その中でバッジの議論が始まり、特に関心も無かった人たちがどんどん議論に参加してくれた。一緒に啓発活動をすることでつながりたいと思ってくれている人たち、意外でしたが、実はそういう人はたくさんいるんだということが作業をしてみて分かったことでした。それは新しい世代の社会運動の形なのかなと思うときもあります。決して何か強い目標を掲げたり、成し遂げるということではなく、とりあえず皆でゆっくり考える。誰でも議論に参加できる場にあらゆる人がゆっくり参加していくというのがこれからの動きになるのかなと。それは逆に言うと誰もが何らかの生きづらさを抱えている時代で、それを議論する場がいまだにすごく少ないということ」。
 20121113-03.jpg(見えない障害バッジのねらい)
「自分の困りごとは自分で発信しないと聞いてもらえないし、誰かが何とかしてくれるっていうことはないんです。そういう中で、このバッジは『見えない障害』の当事者が主体で、よろよろと、具合の悪い人たちの頼りない運営なんですが、でもそういうペースでやる過程を見てもらうこと自体にも意味があると思っています。バッジを付けているから、こういう事をしてほしいとか、配慮してほしいとかいうことを掲げているわけでは全然ない。例えば慢性疾患を抱えていることを職場や学校でずっと言えないでいる、そういう時にバッジがあって、コミュニケーションのきっかけになればいいなと思っています。また、実際の生活に影響を与えるのは、国の政策がどうなるかですが、その根底を支えているのは社会の普通の人たちがどう思っているか。見えない障害を抱えた人たちが例えば商店街や電車の中にいるかもしれないという想像力を持っている社会と持っていない社会ではすごく差が出ると思う。人の想像力の範囲を広げることは直接ではないけれど、すごく力を与えてくれると思っています」。

20121113-10.jpg(これから)
「社会を変えるというのは大きな声をあげたり、大勢で外に出て行ったりするようなイメージが強いと思うのですが、なかなか外に出るのも難しい人たちが中心になっているので、頼りなくとぼとぼと(笑)いや、本当に頼りなくとぼとぼと、でも絶対諦めずに粘り強く続けていく。運動を大きくするとか小さくするとか考えずに、とにかく粘り強く続けていくことが大事なのかなと思っています」。

投稿者:吉川香映 | 投稿時間:06時00分
twitterにURLを送る facebookにURLを送る mixiにURLを送る ソーシャルブックマークについて
※NHKサイトを離れます。

トラックバック

■この記事へのトラックバック一覧

見えない障害バッジ 運動の意義

以前このブログでもご紹介させて頂きました「見えない障害」ストラップ運動・・・ 大続きを読む

受信日時 : 2012年11月14日 19時58分 | 弁護士村井潤~徒然なるままに

コメント

見えない障害バッジのこと、以前から知っていますが見たことがありません。
もしかしたら気づいていないのかも。
作られているわたしのフクシにもメールしましたが、
透明で目立たないのではないかと思います。
協力をしたいのですが、バッジを見たことがなく
残念です。
妊婦さんの印はよく見ます。
ぜひ色の改善を!

投稿日時:2012年11月15日 23時21分 | 匿名

企業でユニバーサルデザインや、ダイバーシティに関わる業務をしております。
実は私自身にも「見えない障害」はあり、Twitterでこのバッジのことを知り、購入してみましたが、壊れやすいのと、上の方が書かれているように透明で、目立ちにくいのが残念だと思いました。

10月末に、東京都が、見えない障害の理解と、当事者の支援のために、独自に「ヘルプマーク」を作られました。

●報道発表資料 平成24年10月26日 福祉保健局・交通局
 配慮を必要としている方のための新しいマークをつくりました (東京都)
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2012/10/20maq300.htm

●「ヘルプマーク」が登場・都営大江戸線各駅で配布を開始 (DESIGN NEWS)
http://www.jidp.or.jp/dn/ja/article/20121030/194

●「ヘルプマーク」見たら心遣いを (読売)
http://www.yomiuri.co.jp/homeguide/news/20121028-OYT8T00441.htm

申し訳ないのですが、この都の「ヘルプマーク」の方が目立ちますし、「DESIGN NEWS」に掲載のタグなどは、鞄などにも付けられ、役立ちそうです。

ただ、都の場合は、大江戸線で配布と、まだ限定的に広められているようで、こうしたマークを、あちこちが色々なデザインでバラバラに作られても混乱するだけなので、目だって認知しやすいデザインのどれかに絞って標準化し、全国で統一して使えるようにしていただきたいと思いました。

投稿日時:2012年11月16日 15時01分 | ドリアン

コメントの投稿

ページの一番上へ▲