2013年02月18日 (月)介護者支える「ケアラー手帳」


「ケアラー」ということばをご存じでしょうか?高齢者や障害者の介護や看護などを無償で行っている人たちのことを介護者の支援団体が呼んでいます。高齢化が進み、介護を必要とする人の数が増え続ける中、家族などの介護や看護に追われ、介護者=ケアラー自身が体調を崩したり、社会から孤立したりすることが今、問題となっています。こうした中、ケアラーにも自分の心や体の健康に気を配ってもらおうという「手帳」が作られました。

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この手帳は、高齢者や障害者の介護や看護などをしている人=ケアラーへの支援活動をしている日本ケアラー連盟が作りました。
20130218keara-4tamago.jpgこの団体が2010年に行った調査では、「身体の不調を感じているか」との問いに介護者のうち半数近い48.4%が「はい」と答えました。さらに、「心の不調を感じている」という人も27.4%と3割近くに上ったといいます。日本ケアラー連盟の牧野史子代表理事は「介護する相手のことがすべてになってしまう場合があります。介護をしている人はストレスや病気にうすうす気がついていても自分のことは後回しにすることが多いです」と話しています。そこで、こうしたケアラーに自分の心や体の健康と向き合うきっかけにしてもらおうと、「ケアラー手帳」が作られたのです。
20130218keara-12tamago.jpg表紙には「大切な人を介護しているあなたも大切な一人です」と書かれていて、中では「あなた自身にもケアが必要だ」と呼びかけています。
20130218keara-6tamago.jpgそして、気持ちが落ち込んだ時にどうしたらいいかのアドバイスもあります。
▼何をやってもうまくいかない日は誰にでもあるものです。あまり自分を責めないで。
▼家族や友達など、元気になれそうな人と話をしてみましょう。
▼問題解決は、あせらず、ゆっくり、冷静に、一つづつ。
▼「今日は無理をせず過ごし、また明日からがんばる」と決めてしまうのも一手です。
▼温泉入浴剤や香水を入れたりお気に入りの本を読むなど、お風呂でプチ贅沢を。
▼自分が好きなこどで身体を動かしてみましょう。
そしてアドバイスの最後には「そんなときこそ忘れないで。あなたは決して一人じゃない」と記されています。
20130218keara-5tamago.jpgさらに、健康状態やストレスをチェックするリストもあります。
20130218keara-8tamago.jpgいらだちや愚痴を書き込むページもあります。
20130218keara-9tamago.jpg牧野代表理事によりますと、介護をしていると、つらいことや嫌なこと、悔しさ、不安、罪悪感など色々なネガティブな思いが起こりますが、それを封じ込めようとすると無理が来るので、どんどん外に出したほうが健康のためにはいいといいます。自分の思いなどを書き残せば、後に見返すことができ、それは客観的に自分を見ることになり、自分自身の状況が見えてくるというのです。

手帳は1200部作られ、モデル地区として、北海道の栗山町、東京・杉並区、それにさいたま市で、社会福祉協議会やNPOを通じて配布されています。(手帳の使い勝手などの調査に協力できる人が対象です)。東京・杉並区では介護者が集まるカフェで、79歳の母親を介護する40代の女性に担当者が内容を説明し、どんな項目に特に注目したかなどを聞き取っていました。この女性は「目の前のことに対応するのに精いっぱいで自分のことにまで気を配る余裕がなかった」といいます。そうした中で「あなたも大切な一人」ということばに励まされたということで、「すごく嬉しかったです。今まであまり自分のことをかえりみる時間がなかったので、あなたも大事ですよと言われることで喜びというか、1人ではないんだと心強さを感じました」と話していました。

日本ケアラー連盟の牧野史子代表理事は「この手帳が介護者を救うすべてではなく、介護者と支援する人がつながる仕組み作りをする上での1つのツールです。だから、すべての自治体に導入してもらい、手帳をきっかけに、介護者を定期的に訪問したり見守ったりしてほしいです。訪問する人材も育ててほしいです」と話していました。
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これまで家族を介護している人たちを取材してきましたが、どの人たちも介護に追われ、自分自身に費やす時間はほとんどないと話していました。リフレッシュする時間もなく、悩みが大きくなっても誰かに相談したり病院に行ったりする余裕さえないのです。そうした介護者に自身の体と心と向き合うきっかけになればと作られた「ケアラー手帳」。全国各地で作られ、介護者が手帳を活用することで健康状態の悪化に気づくことにつながれば、また、体と心の健康を少しでも取り戻せればと思います。さらに、介護者を見守る行政などの担当者の育成も大切で、手帳がそうした人と介護者をつなぎ定期的に訪問するきっかけとなる「交換日記」のようになればと思います。家族が介護して当たり前といわれることが多いというケアラーたちの現状や気持ちを周りがきちんと理解し、様々な形でケアすることが必要ではないでしょうか。
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投稿者:中村織恵 | 投稿時間:06時00分

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