2012年12月22日 (土)新たな試み 生活支援付き住宅 



経済的に苦しく、生活保護を受ける1人暮らしの高齢者はこの10年で2倍近くに増え、およそ54万人にのぼっています。こうした人たちが病気や介護が必要な状態になった時に入所できる施設は少ないため、どう支えていくかが課題となっています。そうした中、住まいを提供して、家族に代わって日常生活をサポートするNPOの取り組みに注目が集まっています。 

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【生活支援付き住宅とは】
NPO法人・自立支援センターふるさとの会が、台東区や新宿区など都内11か所で運営している「生活支援付き住宅」です。

20121220seikatsusien2.jpg1か所当たり約20人から30人の高齢者が共同生活しています。いずれも身寄りがなく、経済的に苦しい上に、認知症などになった人たちです。個室の広さは約3畳で、食堂と浴室、トイレは共同。かつて日雇い労働者たちが利用していた簡易宿泊所などを借り上げて活用しています。

20121220seikatsusien4.jpg【お年寄りたちの事情】
住人の1人の林栄さん(83)は、若い頃はパチンコ店などで働いていましたが、高齢になって認知症を発症し、1人で暮らせなくなりました。区役所に相談したところ、生活保護を受けながら、群馬県渋川市にあった無届けの高齢者施設「静養ホームたまゆら」に入所するよう勧められました。ところが、3年前に火災が発生して施設は全焼。再び区の紹介で、生活支援付き住宅で暮らすようになりました。

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【家族に代わって見守り】
この住宅には、1人または2人のスタッフが交代で24時間常駐し、お年寄りたちを見守っています。まず気を付けているのが体調管理です。

20121220seikatsusien7.jpg会話を交わしながら、さりげなく体調に変化がないか確認します。毎日、近所の公園をボランティアで掃除するのが生きがいの林さんにも注意が必要だと言います。夏には出かける際、熱中症にならないよう、水を入れたペットボトルを持たせたり、帰ってきたら汗で風邪を引かないよう、着替えを促したりしています。高齢者の場合、体調を少し崩しただけで重症化するおそれがあるからです。

20121220seikatsusien8.jpg服薬の管理も欠かせません。林さんは高血圧などの薬を数種類処方されていますが、認知症が原因でしばしば飲み忘れてしまいます。そこで、カレンダーに1回あたりの薬をセットし、毎食後、きちんと飲んだかどうかスタッフがチェックしています。

20121220seikatsusien9.jpg食事も提供しています。ふるさとの会が運営する給食センターで作ったものが届けられ、スタッフが盛りつけて出しています。このようにスタッフが家族に代わって見守り、暮らしを支えるのが、生活支援付き住宅の特徴です。

20121220seikatsusien10.jpg20121220seikatsusien11.jpg林さんは毎月、家賃や食費、利用料(=スタッフの人件費)などを生活保護費から支払っています。手元に残るのは数千円ですが、「本当にここは最高だね。良い所です」と話し、ついの住みかにするつもりです。

20121220seikatsusien12.jpg【制度化に向けて議論】
こうした支援付きの住宅は、まだ少ないのが現状です。ふるさとの会は取り組みを広げていきたいと、12月上旬、都内で医療や福祉の関係者を集めたシンポジウムを開きました。

20121220seikatsusien13.jpgこの中で、パネリストの医師や訪問看護師からは、1人暮らしのお年寄りが最期まで地域で暮らすには、在宅医療や介護のサービスだけでなく、生活支援が欠かせないという意見が相次ぎました。このうち認知症の専門医は「日常生活を支障なく送るには、困り事の相談や通院の付き添い、食事の準備や掃除、金銭と薬の管理など、家族のような“寄り添い支援”が欠かせない。これこそが生活支援だと思う」と指摘しました。

20121220seikatsusien18.jpg20121220seikatsusien17.jpg一方、ふるさとの会の関係者は、今後、1人暮らしの高齢者を支えるニーズが増えていく中で、こうした取り組みへの助成など国の支援が必要だと訴えました。

20121220seikatsusien15.jpgこれについて、滝脇憲理事は「民間の活動で資金的に限界があるため、行政が助成するような制度や仕組みを作っていかないと、継続的に行っていくことが難しく、担い手も増えていかないと思う。今後、制度化についても議論していきたい」と話しています。

20121220seikatsusien16.jpg3年前にはお年寄り10人が焼死した、いわゆる「たまゆら火災事件」が起き、“高齢で身寄りのない生活保護受給者が行き場を失って、“難民化”している実態が社会に衝撃を与えましたが、状況は改善されるどころか、ますます厳しさを増しています。こうした中、住まいと生活支援を提供する取り組みは、課題解決への1つのヒントになると感じました。

    

投稿者:本木孝明 | 投稿時間:06時00分

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