2012年09月22日 (土)認知症のお師匠さん


厚生労働省は、8月に介護が必要な認知症のお年寄りの数を305万人と発表しました。65歳以上の10人に1人の割合です。認知症になると、物忘れが進んで、できないことが多くなりますが、そうした中でも、自分らしく生き続けている女性がいます。

 

石川県加賀市にある介護施設「きょうまち」です。

20120922sishou_2.jpgこの中で、ひときわ上機嫌な女性がいました。泉 梅代さん、88歳です。

20120922sishou_3.jpg泉さんは、3年前に認知症と診断され、食事を作るなどの家事が、できなくなりました。1人暮らしで、ご飯を食べたことも忘れてしまうため、日中は毎日、この施設で過ごしています。

20120922sishou_4.jpgこの日の昼食後も。(泉さん)「私、お昼食べた方がいいかもわからん」。(スタッフ)「え、お昼?さっき食べとったよ。僕もさっき頂いたけど」。
20120922sishou_5.jpg実は泉さん、地元では有名な、日本舞踊のお師匠さんです。20代のころから70年近く、地域の人たちに踊りを教えてきました。

20120922sishou_7.jpg今も週に2回、自宅で踊りの教室を開いています。時間になると施設のスタッフに付き添われて自宅に戻ります。

20120922sishou_8.jpgこの日は60代から80代の教え子5人が泉さんの指導を受けました。
20120922sishou_11.jpg泉さんは今も、200曲以上の踊りを覚えています。この日も教え子の踊りを見て「足反対!」との指摘が。

20120922sishou_10.jpg教え子の1人は「右足違うとか、前に出すとか、こっち向くとかって、そういうのがすぐわかるんやって。それがすごいと思うわ」と話していました。これについて泉さんは「たくさん頭に入っていますからね、こびりついておるみたいな感じでね」と言います。

20120922sishou_13.jpg泉さんの稽古を支えているのは、子どもの頃から指導を受けてきた教え子たちです。自分が認知症だと分かった時、泉さんは、教え子たちに「もう踊りはやめたい」と漏らしました。しかし、教え子たちは泉さんが踊りをやめたら、認知症の症状が進むのではないかと心配し、続けて欲しいと頼みました。「もうやめるって言ったんですけど、でもあたしらが先生がおらんと稽古できんし」。

20120922sishou_15.jpgこの日の稽古中、ご飯を食べたことを忘れて落ち着きを失いかけた泉さんに、教え子の1人がそっとおにぎりを手渡しました。教え子の1人は「自分では食べてない、食べてないと思っているから集中できない。私はやっぱりちゃんとしてほしいから隠し技で」と話します。
20120922sishou_16.jpg周囲の人のさりげない支えで、泉さんが主役の稽古は続けられているのです。最後に泉さんに今後のことを尋ねると「まだやめられんね。私の命のある限り。みなさんのおかげや。楽しいですね、やっぱりこれなかったら、私楽しいことない、あはは」と笑顔で語ってくれました。
20120922sishou_18.jpg認知症の専門家で群馬大学の山口晴保教授に、泉さんのように認知症になってもその人らしく暮らし続けるために、何が大切か伺いました。「1週間に1度でも、自分がみんなからほめられて、その人が主役になる時間を持つということが、その人にとっても生き甲斐になるし、生きる意欲を生み出したり、生活意欲を高めたりという効果がある。周りの人は、あれもできない。これもできないという考え方じゃなくて、この能力で何ができるだろうかと、そういうふうに発想を180度変えることが大事です」。

20120922sishou_19.jpg私たちはついついできないことに目がいってしまいがちですが、ちょっとしたことでもできることをやってもらう、役割を担ってもらうことが、認知症の人の生き甲斐につながるということを、泉さんの取材を通じて学びました。

投稿者:松岡康子 | 投稿時間:06時00分

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それは、とっても作業療法だなって

(写真と本文は何の関係もございません。受け狙いです。以下の文章は至って真面目です。本当に。) 「認知症のお師匠さん」 というタイトルで紹介されていたので...続きを読む

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