2019年08月08日 (木)息ができない 赤ちゃんの危機を救った2つの方法


※2019年4月22日にNHK News Up に掲載されました。

「息子が人参を喉に詰めた」
「ケッケッって言いながら泣いてる」

ちょっとした隙に、にんじんがのどにつまり苦しみ始めた赤ちゃん。必死で命を守った母親のツイートが話題になっています。念のためにと覚えていた2つの方法が危機から救いました。覚えておけば、大人も救うことができる方法です。

ネットワーク報道部記者 牧本真由美・ 大石理恵

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<赤ちゃんがのどを詰まらせた>

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「いま、すごいこわいことがあった」

39歳の女性のツイートはこんな文面から始まりました。部屋に一緒にいたのは生後10か月の長男。離乳食を食べさせていたのです。メニューはやわらかくゆでた、「にんじん」。スプーンで崩しながら口に運びます。

そして、目を離したわずかな隙が、命に関わるような事態を招きます。

iki190422.3.jpg「息子が人参を喉に詰めた」
「気づいたらケッケッって言いながら泣いてる」

にんじんを手でつかみ、丸ごと口に入れ、のどに詰まらせたのです。赤ちゃんは声を出さずに泣いています。

“呼吸ができなくなってしまう” 慌てた女性は赤ちゃんの、口に指を入れてにんじんをかき出しましたが、すべて取りきれません。

「慌てて口の中のものを掻き出した」
「まだ詰まってる」

事態はよくない方に、傾きかけていました。

<胸部突き上げ法と背部叩打法>
さかのぼること5か月。女性は夫とともに消防署にいました。ネットを通じて関心を持ち、一緒に受けたのは子どもの緊急時の対応を学ぶ小児救命講習。結果としてこの時に学んだ2つの救命法が命を救うことになります。

その方法は「胸部突き上げ法と背部叩打法」。のどに詰まったものを、はき出させる方法です。女性は講習を思い出し長男を手の上に乗せ、せなかをたたいたり、胸を突く動作を繰り返しました。

ツイートはこんな文面で終わっていました。

「胸部突き上げ&背面叩打法を思い出してとっさにやった」
「にんじんの塊がスポンッと出た」

女性は当時の状況について、こう話していました。
「自分も終始、心臓がバクバクしていました。のどの詰まりが取れたとたんに大きな声で泣き出したわが子を見て恐怖感がこみ上げてきました」

「やり方を知ってるのと知らないのとでは全然ちがう。講習を受けられる人はぜひ受けてほしいです」

<119番をしてすぐ処置を>
命を救った胸部突き上げ法と背部叩打法。厚生労働省の「救急蘇生法の指針」では、乳児が窒息した時の対応として、まわりに人がいれば119番通報を依頼したうえで、この処置をとるよう呼びかけています。

国の調査では、おととし、0歳から4歳までの子ども12人がのどに食べ物を詰まらせて亡くなっています。

いざという時に役立つ救命法とはどういうものなのか、全国で講習を行っている日本赤十字社に連絡をとると、訓練を受けた指導員が教えてくれました。

 

<背部叩打法>

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 まず背部叩打法です。片手で乳児のあごを包むようにしっかり持ち、

iki190422.5.jpg乳児をうつぶせにして太ももの上に寝かせます

iki190422.6.jpgそして、反対の手のひらの下側の少し膨らんでいるあたり「手掌基部」で肩甲骨の間をたたきます。
頭を傷つけないよう指を曲げることがポイントです。乳児は内臓が弱いのであまり強くたたかず4回から5回試して異物が出てこなければ胸部突き上げ法に移ります。

<胸部突き上げ法>

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空いている手で乳児の頭を抑えてひっくり返し太ももの上で仰向けに寝かせます。乳児の足は腕をまたぐようにして落ちるのを防ぎます。

iki190422.8.jpg乳児の胸を押すのは中指と薬指の2本。押す位置は、乳頭と乳頭を結ぶ線の中央の少し下です。

体の3分の1が沈むほどの少し強めの力で4回から5回素早く押します。肺にある空気を瞬間的に圧迫して押しだし、その力で異物を吐き出させます。

口の中に異物が見えてきたらたたくのをやめて指で取り出します。異物が出るまで2つの方法を交互に行うということです。

<大人にはこの方法で 針の穴程度でも隙間ができれば>
乳児だけではなく幼児や大人が、例えば餅などをのどに詰まらせた時の方法もあります。

<背部叩打法>

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大人への背部叩打法です。苦しんでいる人の横に立ち片手で胸部を支えます。おじぎをするようにできるだけ低く頭を下げてもらいます。倒れるのを防ぐために片足を患者の前に置くのがポイントです。

iki190422.10.jpgたたく位置は、やはり肩甲骨と肩甲骨の間。手のひらの下側で体に響くほどの力でドンドンドンとたたきます。5回ほどたたいてダメなら「腹部突き上げ法」に変えます。“胸部”ではなく“腹部”です。

<腹部突き上げ法>

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患者を後ろから抱くような形で腹部に腕を回します。

iki190422.12.jpg片方の手で拳を作り、へそのすぐ上の位置に当てます。

この時、親指が内側で、もう片方の手のひらでにぎります。

iki190422.13.jpg両腕を引き締めて少し上に向かって患者の体を突き上げます。瞬間的に素早く締め上げるように息が“うっ”と詰まる強さです。こちらも5回ほど。2つの方法を繰り返し行います。大切なのは諦めないこと。

日本赤十字社の救護・福祉部の大西浩子さんは「たとえ針の穴程度でも隙間ができれば息が通る。諦めずに続けてほしい」と話していました。

<近くにいる誰かが救う>

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「子どもがのどにものを詰まらせたらどうしますか?」と街で聞いたところ、子どもが産まれるタイミングで、夫婦で胸部突き上げ法などを学んだという女性がいました。それでもいざという時に対処できるかは不安で「子どもだけでなく大人もいつそうなるかもしれない。忘れないように繰り返し学びたい」と話していました。

今、119番通報をしてから救急車が到着するまでの時間は8分30秒ほど。息ができなくなれば数分で体に影響が出てしまいます。その間に命をつなぐのは近くにいる人しかいません。

おととし全国でのどに食べ物を詰まらせて亡くなった人は4700人を超えています。救命講習は各地の日本赤十字社や消防などで開かれていて、人形などを使って数時間で正しい救命方法を学ぶことができます。誰かの命を、大切な人の命を守る方法、覚えておいてください。

投稿者:牧本 真由美 | 投稿時間:17時09分

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