2018年09月10日 (月)エアコンと汗腺 ホントの関係は?


※2018年7月30日にNHK News Up に掲載されました。

ちょっと外に出かけただけで、止まらない汗、汗、汗。猛暑が続くこの夏、ネット上では、「汗」をめぐって、こんな声が話題になっています。「エアコンを使うと、子どもの汗腺が発達しない」ーーーエアコンと汗腺の発達、実際、どのような関係があるのか、調べてみました。

ネットワーク報道部記者 管野彰彦・飯田耕太・玉木香代子

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<企業のコラムに批判>
「誤解を招きかねないと判断し、削除いたしました」

汗腺をめぐり、大手精密機器メーカーの「コニカミノルタ」は、7月20日、ネット上に掲載したコラムを削除しました。

「コニカミノルタ」の広報担当者に聞くと、コラムでは、体臭に詳しいクリニックの医師の書籍を参考に、保護者が冷房を使いすぎていることから汗腺が十分、発達しない子どもが増えているとしていました。そして、「子どもたちが空調の効いた環境でしか生活できないようになったのは、親である保護者が、子どもが小さなうちからエアコン漬けにし、汗をかく機会を奪ってきたからなのです」などと指摘していました。

これに対し、「コニカミノルタはエアコン反対なのか」といった批判が寄せられたのです。


<3歳までに発達説 本当?>

eak180730.2.jpgエアコンと汗腺の発達をめぐっては、このほかにもネット上でさまざまな声があります。

「汗腺は3歳までに発達するみたいな説も、あれ、本当なのかな」
「3歳までに汗腺がーとか今言われてもなぁ、もう上の子は3歳だ。どれぐらいのクーラーならいいんやろか」

「エアコンは、がんがん使え派でも『3歳までに暑さに慣れさせないと汗腺が…』みたいなのを聞くと親としてはグラッとしちゃうんだよな」
中には、こんなエピソードを投稿する人も。

5歳の娘と0歳の息子がいる母親のペンネーム・たなか丸さん(35)。北海道釧路市に住んでいるたなか丸さんが、先週、家族で猛暑のニュースを見ていた時のこと。自宅に遊びに来ていた65歳の父親が「汗腺が発達するのは3歳までが勝負らしいよ」と発言。

「子どもはエアコンなんて使わなくてもいいんだ」と言われた気がした、たなか丸さん。思わず、ムッとしたそうです。

「暑さで命の危険まで叫ばれている中で、小さい子は暑い中でもエアコンつけずに雑魚寝させていたほうがいいだなんて考え方、『そんなの死んじゃうでしょ!』って。つい腹が立ってしまいました。親世代に、もの申したいです」と振り返ります。

父親には聞き流され、親子げんかにはならなかったものの、世代間の認識のずれも感じたそうです。

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<重要なのは“能動汗腺”>
「人の汗は体じゅうに張り巡らされた汗腺を通じて体の外に排出されますが、このうち、体温を一定に保つための汗をかく汗腺は2歳から3歳ごろまでにできると言われています」

そう話すのは、神奈川県立こども医療センターの皮膚科部長、馬場直子医師です。

eak180730.4.jpg馬場直子医師
馬場医師によると、汗腺の数は生まれた時から変わらないものの、汗をかく機能が備わるのは幼少期のうちなんだそうです。この実際に汗をかいて体温調節を行う汗腺は「能動汗腺」と呼ばれ、暑い場所で育った子どもはたくさん汗をかくため発達しやすく、逆に寒い場所で育った子どもは発達しにくくなるといいます。

馬場医師は「能動汗腺が発達しないと、汗と一緒に熱を体内から逃がしにくくなり、夏バテしやすく、熱中症のおそれも高まります」と話します。


<「エアコンは無関係」>
一方、エアコンの使用と汗腺の発達に関係は無いと指摘する専門家もいます。

発汗による体温調節などについて研究している中京大学スポーツ科学部の松本孝朗教授は「以前は、2歳ごろまでの環境が汗腺の発達に影響すると言われてきましたが、最近の研究では必ずしもそうとは言えなくなっています」と話します。

eak180730.5.jpg松本教授によると、体温調節に必要な能動汗腺の数は成長や環境によって変化していくのだといいます。

松本教授は「汗をかくことで『能動汗腺』は活発になるので、汗をかくことは大切だが、子どもでも日常生活で外に出る機会があれば、十分、汗をかいている。ふだんエアコンを使っているかどうかは関係ない」と指摘しています。


<汗をかくことも大切>
また、熱中症に詳しい桐蔭横浜大学大学院の星秋夫教授(医学博士)も「エアコンの使用自体は汗腺の発達にそれほど影響はない」と指摘します。

eak180730.6.jpg汗腺は3歳から4歳ごろまでの第1次成長期に、ある程度発達し、その後、10歳前後に始まる第2次成長期で、おおむね大人に近づくといいます。10歳ごろまでは、汗腺が十分、発達していないので大人に比べて、汗をかいて体温を調節するのが難しいといいます。

そのうえで、「子どもでも大人でも同じですが、汗をかかないと汗腺が不活性化して、あまり汗をかかないようになる」と話します。

つまり、エアコンの効いた室内にいること自体が汗腺の発達を妨げる訳ではなく、汗をかかないでいることが結果として汗をかきにくい体にしてしまうということのようです。

星教授は対策として、1日のうちに、20分でも30分でもいいので、意識的に汗をかくようにして、汗腺を活性化することが重要だとしています。

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<エアコン利用ためらわずに!>
そして、3人の専門家がそろって口にしたのは、エアコンを適切に使うことの重要性です。

松本教授は「気温が35度を超えるような猛暑の中で、汗腺の発達を気にしてエアコンの使用を避けることのほうが危険であり、子どもを熱中症から守るためには、エアコンの利用をためらわないでほしい」と呼びかけています。

個人差があって、思い当たる体験も人それぞれの汗。熱中症から子どもを守り、健康を保つには汗をかくのも、エアコンを使うのも、状況に応じていく必要があると感じました。

投稿者:管野彰彦 | 投稿時間:17時23分

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