2018年04月06日 (金)それは気象病かも


※2018年3月12日にNHK News Up に掲載されました。

3月に入り、春の訪れと共に気分も晴れやかに…と思いきや、ネット上には「頭が痛い」「だるい」など体調不良を訴える声が相次いでいます。その体調不良、もしかしたら天気のせいかもしれません。そして、歴史上有名なあの人も、天気による体調不良に悩んでいたかも!?

ネットワーク報道部記者 飯田暁子・玉木香代子

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急に気温が上がったり下がったり、強い雨や風に見舞われたりと「春の嵐」が吹き荒れた先週。ツイッター上には「頭痛と耳鳴りがする」「頭が痛いというか重い。体もだるい」などの書き込みが相次ぎました。

sor180312.2.jpg中でも活況だったのが、「全部気圧のせい」というハッシュタグ。

「きのうから頭が痛くて治らない」「朝からイライラする」といった投稿に付けられているほか、中には「よかった。ここしばらくずっと調子が落ち気味なのも気圧のせいなのね」などこのハッシュタグで気分が楽になったという投稿もありました。


<それは「気象病」かも>
「古くから『古傷が痛むと雨が降る』と言われているように、気温や湿度、気圧の変化で痛みが出たり体がだるくなったりする。それは『気象病』と呼ばれています」

そう話すのは、愛知医科大学学際的痛みセンター客員教授の佐藤純医師です。

sor180312.3.jpg20年以上にわたって天気と体調の変化について研究を続けています。気象病の症状は頭痛、関節痛やせき、めまい、体のだるさなど人によってさまざまですが、天気の急な変化、特に気圧が大きく下がったり上がったりするときに症状が出る人が多いということです。

なぜ気圧の変化で体調が崩れるのか。佐藤医師に聞きました。
「これまでの実験で、耳の鼓膜の奥にあり体の平衡感覚をつかさどる『内耳』には気圧の変化を感じるセンサーがあるのではないかと考えられます。この内耳が気圧の変化を脳に伝えて体を順応させるのですが、内耳が気圧の変化に敏感すぎると少しの変化でも過剰に脳に情報が伝わり、交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまうのです」

交感神経が活発になると頭痛などの痛みを感じやすくなり、副交感神経が活発になるとだるくなったり眠くなったりするということです。


<歴史上のあの人も『気象病』?>
ところで「気象病」について調べていると、ネット上にはあの歴史上の人物も気象病に悩まされていたという書き込みがありました。

その人物の1人が織田信長。

sor180312.4.jpg織田信長がわずか2000余りの兵で2万5000もの今川義元の軍を破った桶狭間の戦いは雨の中だったということで、ネット上には「織田信長は頭痛持ちで、戦の前に頭痛で天気の急変を感じ取り奇襲を仕掛けたのではないか」という書き込みがありました。
また、邪馬台国の女王、卑弥呼についても「頭痛などで気圧の変化を誰よりも早く察知できたからこれから低気圧が近づくことが分かりもうすぐ雨が降ることを予測でき、人々からあがめられたのではないか」という書き込みもありました。

真偽のほどは分かりませんが、気象病が歴史を動かしたかもと考えると、親近感さえわくかもと思ってしまうのは私だけでしょうか…


<『気象病』の対策は?>
天気の変化で体調が左右される「気象病」。どうすれば症状をやわらげることができるのでしょうか。

佐藤医師は、「天気や気圧の変化と自分の症状がいつ出たのかを記録してみてください」とアドバイスします。

気圧が急に下がるときに頭痛が起きやすいなどの傾向がつかめれば、天気予報から症状が出そうな日を予測して大事な予定はあらかじめ変更しておくなどの心構えができます。
気象庁のホームページでは1時間ごとの気圧の変化を見ることができます。また、6日先までの気圧の変化の予想を折れ線グラフで確認することで頭痛などに備えようというアプリもあります。自分の体調の変化も記録できることから月に40万人の利用者がいるそうです。

sor180312.5.jpgまた、佐藤医師によると「気象病」の人は内耳の血流が悪い傾向があるということで、首のストレッチや耳の周辺をマッサージすることもおすすめだということです。


<『気象病』起きやすい時期は>
「気象病」の症状が出やすい時期としては低気圧が定期的に通過する春や秋、それに梅雨時や台風の時期だということで、まさにこれからが注意が必要になります。

sor180312.6.jpgこの「気象病」、佐藤医師によると日本では知られてきたのはここ10年ほどだということで、「体調不良に悩まされるが検査しても原因が分からず『気のせいだ』『さぼりだ』と言われる」といった不安や悩みを抱えた人も多いということです。

しかし記録を付けてみてそれが「気象病」だとわかると、「天気のせいと考えると気分が楽になった」「体調不良とのつきあい方がわかった」など安心の声が聞かれるということです。

何となく体調を崩しやすい季節の変わり目。みなさんも自分の体と向き合ってみてはいかがでしょうか。

投稿者:飯田 暁子 | 投稿時間:13時46分

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