2017年05月10日 (水)食物アレルギーでも海外へ


※2017年4月7日に首都圏ネットワークで放送されました。

修学旅行で海外へ行く中学や高校が増えています。
しかし食物アレルギーがある場合、
誤って食べてしまう事 故を懸念して、保護者が付き添ったり、
中には参加を見合わせるケースも少なくないといいます。

そんな中、神奈川県のNPOが、
そうした子供たちを支援するための小冊子を作りました。
ことばや習慣の違う海外でアレルギーの不安を解消し、
旅を楽しんでもらおうという取り組みを取材しました 。

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《食物アレルギーでも海外に行きたい》
ことし2月、食物アレルギーのある子供たちの親の集まりで、横浜市の山口雅子さんは、長男を修学旅行で海外に送り出した時の体験を話しました。
山口さんは 「食物アレルギーを持つ子どもたちが、果たして本当に安全に海外に行けるのかという不安は、日に日に増していきました」
と語りました。

are170407.1.jpg山口さんの17歳の長男は、卵のアレルギーがあります。
ショック症状が出た場合に備えた注射も、常に持ち歩いています。

4年前、中学の修学旅行でカナダに行くことになった際は
「カナダで食事するときに、自分の英語で伝わるのか、伝わってもどれくらい配慮してくれるのか、日本と違うと思った」
と当時の不安な思いを振り返ってくれました。

are170407.2.jpg山口さんは、旅行の4か月前から親子で念入りに準備を進めました。
まずホテルや観光で出かける飲食店のメニューの原材料を、
すべて問い合わせました。
また、万が一誤って食べた場合に備え、
受け入れてくれる医療機関を調べたり英文の診断書も準備しましたが、結局無事過ごすことができました。

are170407.3.jpgしかし、去年、高校の修学旅行で再び海外のシンガポールに行った時には、アレルギーへの認識の違いから、なかなか現地とのやり取りが進まず、念のため保存食を持っていったといいます。

母親の雅子さんは「インターネットで情報を探ったりとか、口コミで『食物アレルギーで行った人知ってる?』と聞いたり、そういう方法でしか準備のしようがなくて、ぎりぎり飛び立つ朝まで思いつくことはほぼやりましたね」と話していました。

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《完成したトラベルブック》

こうした食物アレルギーの子どもたちのために作られたのが
「トラベルブック」です。
海外で間違って食べないよう原材料を確かめたり、万が一症状が出た場合に伝えたりするための簡単な英語の表現や、
心がまえなどが冊子にまとめられています。

are170407.6.jpg作成したのは、神奈川県藤沢市で食物アレルギーの子どもの支援をしているNPOです。
「ALサインプロジェクト」代表の服部佳苗さんは「情報が今までなかったのは、食物アレルギーが原因で外渡航をあきらめていた方が多かったからではないか。その背中を押せればと思って作りました」
と説明します。

are170407.7.jpg食物アレルギーのある中学生の長男が、スポーツ遠征でヨーロッパに行くことになり、服部さんも冊子を作る参考にしようと同行しました。
そこで気付くことも多くあったといいます。
文字のメニューだけを見て、さけのフライだと思って頼んだ料理が実際は生のさけに生卵を混ぜて作る料理だったこともあり誤食しないよう原材料を確認する大切さを実感したといいます。

are170407.8.jpg冊子には、密閉空間になる機内での注意点も盛り込みました。
緊急時に備えた注射は手荷物棚に入れず、
すぐ取り出せるようにしておくことなどをアドバイスしています。
専門医の監修も受け、患者会などを通じて紹介されて、
問い合わせが増えています。

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《訪日外国人向けの英語版の冊子も》

さらに、新たに取り組んだのは日本を訪れる外国人向けの英語版の冊子です。
外国人の友人たちに意見を聞きながら、作成を進めました。
中では人気の日本食が何でできているかの紹介や、イラストを見せることで原材料を確認できるような工夫がされています。

NPOが拠点を置く藤沢市は2020年、東京オリンピックのセーリングの会場に選ばれていて、食物アレルギーのある観光客にも、
安心して訪れてもらいたいという思いから作成を決めました。
協力したアメリカ人の女性も「こういった冊子があると心強いと思います」と話していました。

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are170407.12.jpg冊子を紹介するため、服部さんは外国人も多く訪れる江ノ島の老舗の和菓子店を訪ねました。
客からは卵や牛乳などを使っているか、聞かれることが少なくないと言います。

店員の女性は「海外の方だとアレルギーがあるかどうか、会話でわからないので」と話していましたが服部さんは「『私は何のアレルギーです』って、ここに自分のアレルギーを入れて持ち歩くように作ってあります」と冊子の使い方を説明していました。
完成した冊子は、今後こうした店や希望者に配って、活用を働きかけることにしています。

are170407.13.jpgare170407.14.jpg服部さんは「皆さんが楽しむべきところで楽しめないとすごく残念なので、日本にいらっしゃる外国人の方も、そして日本から海外に羽ばたいていく食物アレルギーの子どもたちにも、少しでも食の不安を軽減して、滞在期間を楽しんでもらえるよう活用してもらえたらいいかなと思います」と話していました。
このトラベルブック、
今後は、ほかの言語にも対応できるようにしていきたいということです。

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《取材後記》

修学旅行には携帯電話が禁止の学校もあるということで、持ち運びが出来てさっと取り出せる冊子の形にまとめられました。
食物アレルギーがあるために、修学旅行に行くのをあきらめたという声はいまだにありますが、綿密な準備とまわりの理解、サポートがあれば、十分に可能なのではないかと思います。

患者家族の先輩たちの知恵をこうした形でまとめ、それを英語版にすることで五輪のおもてなしにもつながるという価値ある取り組みが今後も発展していくことを願っています。

投稿者:山本未果 | 投稿時間:15時19分

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