2015年07月01日 (水)組み体操の事故多発で安全対策は


多くの学校の運動会や体育大会で行われている「組み体操」。子どもたちが何段にも積み上がる「ピラミッド」や「タワー」は、運動会の見せ場として披露されています。 組み体操は、ここ数年、規模が大きくなる傾向がありますが、子どもたちの事故が相次いで報告されています。相次ぐ事故と対応の現状について解説します。
0605_08_7dan.jpg
 

【タワーが崩壊下敷きに】
去年、小学6年生の時、組み体操の4段のタワーの練習中に大けがをした女の子がいます。いちばん下の段で四つんばいの体勢で、重さに耐えていた時に事故が起きました。バランスを崩した上の子どもたちの下敷きになったのです。 

0605_02_ushiro.jpg女の子はそのときの状況について「上のほうの人たちがどわーっと上に乗っかってきて、すごく重くて耐えられなくて、死ぬかと思った」と話します。
0605_03_illust.jpg左のひじを脱臼して骨折。3回の手術を受けましたが、今も左腕の動きが悪く、時折痛みを感じるといいます。女の子は「初めて組み体操をしたときは、頑張ろうと思っていましたが、今はすごく怖いです。組み体操をしないほうがよかった」と振り返ります。

【組み体操で重大事故多発】
組み体操の事故を調べている名古屋大学教育学部の内田良准教授は、ピラミッドやタワーの規模は年々高く大きくなる傾向があり、その危険性に目を向けるべきだと指摘しています。
0605_04_junkyouzyu.jpg内田准教授が日本スポーツ振興センターのデータをもとに調べたところ、平成25年度に全国の小学校で起きた組み体操の事故は6345件。障害が残った事故も、平成25年度までの31年間で88件にのぼり、死亡事故も報告されています。
0605_05_sessha.jpg事故が多発していることについて、内田准教授は「組み体操は、一体感や感動という教育的な意味ばかりが強調されているんです。確かに一体感は得られるかもしれない。けれども、どういうリスクがあるのか、どれくらい事故が起きているのか見ないと。事故が起きてしまえば、感動も一体感も得られないと思います」と訴えています。

【重傷を負い搬送される子どもたち】
今年の春の運動会シーズンも、組み体操による事故が相次ぎました。
0605_06_kizu.jpg千葉県の松戸市立病院で治療を受けた小学6年生の男の子は、今年5月、3段のタワーの練習中に、いちばん上から転落しました。男の子は「3メートル以上のところから落ちました。怖かったです」と、そのときの様子を話します。男の子は頭と腹を強く打って出血し、開頭手術を受けました。
 松戸市立病院救命救急センターの庄古知久センター長は「幸い出血量が多くなかったので、手術で血を止めることができ、命が助かった」と命の危険さえあったと話します。この病院では、組み体操によるけがで治療を受ける子どもが、年々増えているといいます。 男の子を取材した日も、タワーから落ちて頭の骨を折った中学生が運ばれました。
0605_07_isha.jpg庄古センター長は「教師が事故を防ぐ手だてをしても、実際に事故が発生していますし、特に練習中の事故が多いことを考えると、学校の運動会において組み体操をやるのは中止すべきだと思います」と強く訴えています。

【規模を小さくする自治体も】
安全性を重視し、組み体操の規模を小さくする方針を打ち出した自治体があります。
0605_08_7dan.jpg去年、愛知県長久手市の小学校で行われた運動会では、7段のピラミッドが披露されました。高さは、およそ4メートル。ビルの2階部分に相当します。いちばん下の段の子どもには、最大で2.4人分の体重がかかります。崩れた時の救助も困難です。
 このため長久手市は、ことしからピラミッドは4段以下にすることを決めました。
0605_09_piramiddo.jpgその決定について、長久手市教育委員会の夏目知好指導室長は「見栄えとかいろんなことを考えて高層化していったんですが、考えなくてはいけないのは子どもたちの安全だと思うので、その点が揺らがないようにしていかなければと思っています」と話します。

【文部科学省も注意を呼びかけ】
組み体操は、授業の目標や内容を定める現在の学習指導要領には記載されておらず、文部科学省は、実施は学校の判断としています。しかし、事故の多発を受けて文部科学省は、6月、全国の教育委員会などに対し、事故防止の対応を求める通知を出しました。通知の中では、体育の授業や運動会での事故を防ぐための対策を再度確認するとともに、必要に応じて組み体操を含めて体育や運動会の内容の見直しなどを求めています。
文部科学省スポーツ・青少年局の日向信和参事官は「十分な安全が保てないと言うことであれば、それはやっぱりやるべきではないと思います。そこは校長先生を中心に、指導の計画をきちんと作っていただいて、運動会に臨んでいただくことが大事だと思います。組み体操も含め、学校での事故防止について、しっかりと取り組んでいきたい」と話しています。
 今回の取材で、子どもたちが、何もつかまるものがない不安定な体勢の中で、高さのあるピラミッドやタワーに挑んでいる現状や、重大事故があとを絶たない実態が浮き彫りになりました。学校や自治体は、事故の実態にしっかり目を向け、対応する必要があると思います。

投稿者:松岡康子 | 投稿時間:17時14分

トラックバック

■この記事へのトラックバック一覧

※トラックバックはありません

コメント

※コメントはありません

コメントの投稿

ページの一番上へ▲

カテゴリー

新着記事

最近のコメント

最近のトラックバック