2014年07月28日 (月)AEDの課題 使うべきとき使えない!?


心臓発作を起こした場合に電気ショックを与えて心臓の動きを正常に戻す医療機器「AED」。
一般の人が使えるようになってから7月でちょうど10年になりますが、今、さまざまな課題が見えてきています。
使うべきときに使えないおそれがあるのです。

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【AEDで救われる命】

AEDは、駅の構内や学校、商業施設など、これまで全国で50万台以上が設置されてきました。
京王新線の新宿駅でも、改札を出てすぐの所、一番目立つ所にAEDが設置してあります。イラストで使い方が説明してあり、必要な人は誰でもすぐに使えるようになっています。
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心臓の異常が原因の心臓突然死で亡くなる人の数は、年間およそ7万人。普及が進むにつれて、AEDが活用されるケースも増え、最新のデータでは年間900件に上ります。

一方で、気になる数字もあります。
いざ使おうとしたとき「電源が入らなかった」「機械が作動しなかった」など、AEDが不具合で使えなかったというケースが103件あるのです。
うち、42人の方は亡くなっています。aedkanri3.jpg
AEDが正常に作動していたら、命が救えたかもしれないという事例は少なくありません。


【点検していれば…“救えた命”】

▼3年前、15歳の女の子が亡くなったケースでは、家族が、町内会が持っていたAEDを使って、救命処置を試みました。
ところが、湿気が原因と見られる機械的な故障で使えず、女の子を助けることはできませんでした。
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▼また、6年前に、ゴルフ場で男性が亡くなったケースでは、その場で、AEDを使おうとしましたが、バッテリーの故障で使えず、男性の命は救えませんでした。
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いずれのケースも、AEDが正常に機能していれば、命を救えた可能性があります。
しかし、点検など、日常的な管理が徹底されていなかったために、不具合を見抜けなかったのです。

2012年に総務省が行った実態調査では、AEDが設置されている国の施設でも、3割で、日常的な点検が行われていなかったという結果が出ています。


【点検は表示を確認するだけ】

こうした事態を受け、業界団体では、毎日の点検を徹底するよう呼びかけています。

写真の赤色のAEDの場合、正常な場合は、右上の丸い小窓に3秒に1回ランプが点滅し、異常があればこのランプが光らなくなります。
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また、別のメーカーのオレンジ色のAEDでは、表示窓で使える状態かどうか確認できます。
通常は使用可を示す緑になっていますが、異常があるときは赤く×の表示になります。
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他の機種でも、AEDは本体の表面に、使えるかどうかがわかる何らかの表示がされる仕組みは共通しています。


【有効期限に注意】

さらに、身近なAEDを点検する際に、必ず確認してほしいのが消耗品の有効期限です。
胸に貼って電流を流すパッドには、有効期限があります。ほどんどが2年余りで交換が必要です。
また、バッテリーにも有効期限があります。早いものだと2年、長いものでも5年で切れてしまいます。充電式ではないので、こちらも交換する必要があります。
消耗品以外にも、本体の耐用期限(期間)も決まっていて、メーカーによって差はありますが、およそ6年から8年での更新が推奨されています。
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こうした期限を確認しておかないと、いざという時に使えないことにもつながりかねず、電子情報技術産業協会の大高守さんは、「いつなんどき、人が倒れて救助しないといけない場面が出てくるかわからないので、日頃の点検が一番重要です」と話していました。
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【行方不明のAED 5,000台はどこに】

AEDは、医療機器として適切に管理しておくべきですが、NHKの取材によりますと、少なくとも、国内で5,000台の行方が確認できず、適切に管理されているかどうかすら、わからない状態になっていることが明らかになりました。
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【中古AED 個人販売の危険】

行方が確認できないAEDの一部は、インターネットオークションで取り引きされていました。
2年ほど前から、取り引きが急増し、その数は、過去2年間で150台以上にのぼっています。
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本来、AEDを販売する業者には、法律で、購入者の連絡先を把握する義務が課せられています。
消耗品の有効期限や、リコールの情報を確実に届けるためです。
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しかし、個人がネットオークションなどで販売することは、法律では想定されておらず、販売する人に、購入者の連絡先を把握する義務はありません。
こうして、AEDの行方がわからなくなると、有効期限やリコールの情報も届けられなくなり、安全性が担保されなくなってしまうのです。
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【出品者は注目の商品!?】

なぜ、こうした中古AEDの個人売買が横行しているのか、出品者の1人、リサイクルショップの従業員に話を聞くことができました。

廃業した福祉事業者から引き取ったものだと言い、発送前のAEDを見せてもらったところ、バッテリーの残量がありませんでした。
aedkanri16.jpg従業員は、「バッテリーを換えたら、使えると思います」と話していましたが、AEDは充電はできないため、バッテリーは交換しなければ使えません。しかも、個人売買ではリコールなどの安全に関する情報も、購入者の元には届きません。
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この状態のAEDでも、オークションでは50件以上の入札の末におよそ10万円で落札されていて、今、注目の商品だと言います。


【落札者には経済的事情が】

中古品のAEDが大量に取り引きされる背景には、購入する側の経済的な事情があります。

個人で介護タクシーを営む、大島隆一さんは、去年、ネットオークションで中古のAEDを買いました。

AED自体の購入動機は、「非常に重篤な方を搬送する場合が多い。義務化はされていないが、個人の思いとして必要」ということでしたが、中古を選んだのは価格が理由です。新品のAEDは高価なもので40万円するため手が出せず、およそ2万円で中古品を落札しました。
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しかし、価格を重視するあまり、メーカーの管理が行き届かないというリスクについては、思い至らなかったと言います。

大島さんは、その後リスクに気付き、オークションで買った中古品は処分し、現在は新品のAEDを使っています。
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「今考えると怖い。いざ使うときに使えなかったら、非常に怖い」と話していました。


【国はどう受け止める?】

危うい中古AEDの個人売買について、国はどう受け止めているのか。
厚生労働省がNHKの取材に対し、文書で回答しました。
オークションによるAEDの個人売買は不適切であるという考え方を示したうえで、「オークション運営会社とも協力し、適切に対処したい」としています。
ただ、国として規制を強化することについては、「AEDの普及に対して逆効果になる」として否定的な見解を示しました。
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【専門家は「国が保証を」】

専門家は、国がこの事態を深刻に受けとめ、積極的に関わるべきだと指摘しています。
立川病院の三田村秀雄院長は、「AEDは医療機器として命を救うという信頼度が一番高くなければいけないが、それが保証できない状態なので、1台1台の行く先がわかって、電池交換などの状態もわかるような透明性が高く追跡可能な仕組みが必要だ。国が、最低限の信頼度を維持・保証することが必要ではないか」と話していました。
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【取材後記】

(点検と交換を!)

NHKでは、4月から「減らせ突然死~使おうAED~」キャンペーンを続けています。
年間7万人もの方が亡くなる心臓突然死は、若い人でも、健康な人でも起こりえます。
そのとき、すぐにAEDを使えば救える命があります。
これまで積極的な使用を呼びかけてきましたが、取材を進めると、管理不足の課題が見えてきました。

使うべきときに使える状態を保つためには、
▼まず、本体の表示を見て、異常がないかどうか毎日確認を!
▼そして、消耗品の交換時期を意識すること!
AEDは、電気ショックを与える器械ですから、バッテリーの残量がなければ動きません。充電はできないので、交換が必要です。
▼また、電気を流すパッドの交換も忘れずに!期限を過ぎると、乾いてしまったり、腐食してしまったりして、電気が流れにくくなります。
交換にはいずれも数千円から数万円の費用がかかりますが、期限がくる前に必ず交換しましょう。
▼さらに、本体は、耐用期限(期間)を過ぎると、メーカーの保証が受けられなくなるため、これもチェックが必要です。
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(行方不明は5,000台?)

AEDは10年間で50万台以上販売されていますが、実は、そのうちのどれくらいが稼働しているのか、全体像は誰も把握できていません。
廃棄されているAEDもあるでしょうし、捨てずに誰かに譲るケース、使われず倉庫にしまわれているものもあると思います。
法律では、廃棄や譲渡をする場合は、メーカーに連絡をすることになっていますが、義務ではなく、周知も十分ではありません。
勝手に廃棄や譲渡が行われ、行方が確認できないAEDの数々。
放送では少なくとも5,000台と紹介しましたが、メーカー6社のうち2社はデータを公表していないため、実際にはもっと多い可能性があります。
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(難しい中古AEDの安全確保)

ネットオークションに出品されていた中古AEDは、期限が残っているものもありますが、多くは、期限切れ間近や、すでに切れているものでした。
保証を受けるには、落札後、メーカーや正規の販売店に点検を依頼する必要があります。
ただし、点検には数万円の費用がかかり、耐用期限(期間)切れの場合はそもそも点検を受けつけないメーカーもあるので、安易な落札には注意が必要です。
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(中古AED150台を追跡)

今回NHKでは、ネットオークションに出品されていた中古AEDを、150台以上追跡しました。
出品者は、不要品や廃棄されたものを買い取ったというリサイクル業者が、注目の商品として販売しているケースが目立ちましたが、中にはメーカーが「廃棄」と把握しているものもありました。廃棄されたあと、何らかのルートで流通しているとみられます。
一方落札者は、歯科医院や保育園、心臓の悪い身内への備えなどAEDで命を守りたいという人ばかりでしたが、新品は高すぎて買えないというケースがほとんどでした。このうち、自主的にメーカーに点検に出したというケースはありませんでした。

(高度管理医療機器であるならば)

命に直結するAEDは、医療機器の中でも、もっとも厳しく管理される「高度管理医療機器」に位置づけられています。
厚生労働省の見解のように、確かに、規制を強化したら普及にブレーキがかかるという側面はありますが、使うべきときに使えないことがあっては本末転倒です。
AEDの普及と活用をさらに進めるために、いかに価格を下げられるか、そして、いかに安全性と信頼性を担保できるか、今後もメーカーや国などへの取材を進めていきます。
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■追記(平成26年7月25日)■

報道を受けて、ネットオークション最大手、「ヤフオク!」を運営する「ヤフー」は、「生命に直接影響を及ぼす危険性があり、取り扱いを慎重に検討したい」として、当面の間AEDの出品を禁止し、サイトから削除する措置をとっています。


 <関連リンク>

これまでのNHKの放送はこちらから見ることができます。
http://www3.nhk.or.jp/d-station/program/aed/

NHKも連動しているAEDの積極的利用を呼びかける「減らせ突然死プロジェクト」のホームページです。
http://aed-project.jp/

厚生労働省の注意喚起ページです。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/aed/index.html

投稿者:三瓶佑樹 | 投稿時間:08時00分

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