2013年09月20日 (金)バス車内で高齢者転倒 注意を!


およそ4年で、210件。60歳以上の人が路線バスの中で転んで大けがをした件数です。急発進など運転手の不注意で起きた事故も多くみられますが、もうひとつ、バスを遅らせてほかの乗客に迷惑をかけないようにというお年寄りの気持ちが、かえって事故につながるケースもあることがわかりました。

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【路線バス車内で転倒事故】

暮らしに欠かせない、路線バス。お年寄りには特に大事な交通手段ですが、車内で転倒事故が起きています。
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【事故に遭う人、見聞きする人】

東京・渋谷で、バスを利用しているお年寄りに話を聞いてみました。
▼86歳の女性
「降りようと思って運転手のそばまで行ったら、滑って後ろに倒れたことがある」
▼座席から転がり落ちたことがあるという女性
「一番後ろに座っていた時、急停車でバタバタと前の方に行ってしまったことがある。何かにつかまっていないと怖い」
bus4.jpg▼つえを使っていた男性
「バスの車内では、ちょっとした揺れでも体では倍くらいに感じる。完全に止まってから立たないと非常に危ない」
▼バスの車内で転んだ人を見たことがあるという男性
「一番怖いのは転んで寝たきりになることだ。バスは時間で動いているからか、少しでも遅れたりすると早く乗ってくださいとせかされることがある。乗ったらすぐに動き出すバスがあるが、あれだけはなんとかしてほしい」

事故に遭ったり、見聞きしたりしたことがあるというお年寄りは、聞き取りをした人の2人に1人という印象です。実際に、こうして、路線バスの車内で転んで60歳以上の人が足や腰の骨を折るなど大けがをしたケースは、消費者庁のまとめで、およそ4年で210件にのぼっています。1週間に1件以上起きていることになります。
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【毎週のように起きる事故】

国土交通省が把握した最新の事故情報を2件、ご紹介します。
▼「2013年9月5日(木)午後0時5分頃、福岡県において、同県に営業所を置く乗合バスが乗客4名を乗せて運行中、乗客1名(女性、74歳)が通路に転倒した。この事故により、当該乗客が腰椎圧迫骨折の重傷を負った。事故当時、当該乗合バスが乗車扱いのためバス停に停車し、当該バス停から乗車した当該乗客が座席に着席する前に発進したため転倒した模様」
▼「2013年9月11日(水)午前11時10分頃、北海道において、道内に営業所を置く乗合バスが乗客9名を乗せて運行中、信号待ちから発進した際に、乗客1名(男性、63歳)が転倒した。この事故により、当該乗客が胸椎圧迫骨折の重傷を負った。事故当時、当該乗客は、交差点から50メートル先の停留所で降車するため、信号待ちの間に座席から立ち上がり、保護棒につかまっていたが、発進した際にバランスを崩して転倒した模様」

【最も多いのは発車時の事故】

事故が最も多いのは、急発進などの「発車」する時です。
神奈川と東京で運行する京浜急行バスでは、車内事故の原因は、▼運転手の安全確認の不足と、▼利用者側の注意不足があると考えています。このバス会社ではまず、体の衰えから思うように体が動かなくなるといったお年寄りの特性を疑似体験を通じて運転手に理解させるなどの安全教育に力を入れ、2年前からは、お年寄りが多い路線を中心に、運転手のほかに社員が「添乗員」として乗り込み、発車時の安全確認を徹底してきました。その結果、一時、半数以上に上った運転手側に原因がある事故は、昨年度、31件中9件とおよそ3分の1まで減ったということです。
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【停車時にも事故】

一方、このバス会社の「添乗員」が、発車時のほかにも、必ず注意を払う時があります。「添乗員」の呼びかけを聞くと、「大森神社に到着します。止まって扉が開くまでそのままお待ちください」、「平和島駅です、止まるまでもう少々お待ちください。扉開くまでお待ちください」など、停留所に止まる直前に何度も注意を呼びかけていました。停車時にも事故が起きているのです。
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消費者庁によりますと、バスが停車するときに60歳以上の人が転倒して大けがをしたケースは27件に上っています。消費者庁は、「まだ停車する前に立ってしまっていて、骨折して寝たきりになるなど、けがから回復するのが非常に難しいような事故につながっている事例が多くみられる」と分析しています。
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なぜ、バスが止まる前に席を立ってしまうのでしょうか。お年寄りに話を聞くと、「気が焦っていて、運転手さんに協力しなきゃという気持ちだったのかもしれない」という声が聞かれました。
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【“迷惑かけないように”で事故】

社会現象を心理面から分析している高崎経済大学の久宗周二教授は、お年寄りは、自分がゆっくり降りるとバスを遅らせてしまう、周りに迷惑をかけたくないという気持ちから、早めに席を立つケースが多いと指摘しています。また、周りの人からせかされ、焦って行動していることも事故の背景にあるといいます。
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【焦らずスローペースで】

久宗教授によりますと、運賃後払いでバスを降りる際、1人当たり、どれくらい時間がかかるかを福岡市と群馬県高崎市で調べたところ、平均で2秒から4秒程度でした。バスはもともと数分程度の信号待ちなどを想定しているため、お年寄りがゆっくり降りても運行に影響はなく、早めに行動したり、せかしたりする必要はないとしています。
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久宗教授は、「周りの人が優しい目で見れば、お年寄りもゆっくり降りられる。早めに行動する、人に迷惑をかけないようにするというのは社会人として大切なマナーだと思うが、お年寄りは年齢に伴ってゆっくりとしか行動できない。高齢化が進む中、効率ばかりではなく、人に配慮して、焦らずスローペースでいくということが必要ではないか」と話していました。

【身を守るためにできること】

最後に、事故を防ぐために自らできることを挙げます。
▼バスが動き出すとき、停車するときは特に注意し、乗ったら着席する。
▼座れないときは、手すりやつり革にしっかりつかまる。
▼降りるときは、停留所でバスが止まり、バスの扉が開くのを確認してから移動する。
▼車や自転車の割り込みなどが原因で急ブレーキをかけることがあることを意識し、走行中に決して移動しない。
▼乗り降りするときはつまずかないよう、サンダルなどの不安定な履物を避ける。

運転手がお年寄りに一層配慮して、社会全体もゆとりを持つことが望ましいですが、まずはこうしたことに気をつけて、自分で身を守ることも大切だと思います。

投稿者:三瓶佑樹 | 投稿時間:06時00分

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