2013年09月11日 (水)救急搬送 時間短縮の切り札は


命を救うために一刻を争う救急現場。その中で一つの目安となっているのが、「30分」という数字です。脳卒中や心疾患などの病気では、発症からこの時間内に治療を受けられれば効果が上がるとされています。
ところが、救急隊が連絡を受けてから患者を医療機関に運ぶまでの時間は、平成23年には全国平均で38.1分と、目安を大きく超えています。その背景には、救急車を受け入れる医療機関が減少する一方で、搬送される患者が増え続けていることがあります。
この時間をどう短くするか、今、大阪市での取り組みが成果を上げ始めています。

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【救急現場 増え続ける負担】
大阪市内の救急病院には、毎日ひっきりなしに患者が運ばれてきます。

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この男性患者は出先で突然倒れ、救急搬送されてきました。しかし、どんな持病があるのか、ふだん何の薬を飲んでいるのか、全く情報がありません。医師は情報を集めようと、患者に問いかけます。
「ふだん血圧どのくらいか分かりますか?」
「70の120くらい」
「いつも120くらいあるんですね」

qq-4.jpg全国で救急車を受け入れる医療機関は、10年間で7%減っています。その一方で、救急車の出動件数は20%増えました。情報が少ない患者の受け入れは大きな負担となっているのが現状です。
大野記念病院の中河宏治副院長は、「救急現場では、患者の情報は全くなくて、どのような基礎疾患があるのか、既往があるのかということが全く分からないところからのスタートです。どうしても、診断、治療に向けての時間的なロスが出てきます」と話していました。

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【患者と病院つなぐ“ブルーカード”】
こうした中、今、大阪市内で普及が進められているのが「ブルーカード」という仕組みです。患者の名前や住所に加え、現在かかっている病気や、過去の病気、そして飲んでいる薬の情報にアレルギーの有無などが、1枚の紙に簡潔にまとめられています。そして最大の特徴は、いざというときに搬送を依頼する病院名も書かれていることです。

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このカードに命を救われたという人がいます。大阪市内のマンションで一人暮らしをしている、54歳の男性です。糖尿病と脊椎の病気を患い、ヘルパーの介助を受けながら、生活しています。
去年(平成24年)の1月1日、男性は体調を崩しました。熱は40度に達し、ほとんど意識を失っていたといいます。男性は、「もうろうとしていた。相手に伝えようとする意識はあっても、それができなかった」と当時を振り返ります。

qq-9.jpgたまたま訪ねてきたケアマネージャーが、ぐったりした男性を見つけました。その時、取り出したのがブルーカードです。開いている病院の少ない元日にもかかわらず、男性はカードに書かれた病院に運ばれ入院。大事に至らずに済みました。
男性は、「目が覚めたら搬送されていました。ブルーカードがあってよかったと思います」と話し、ケアマネージャーの杉本由希子さんも、「特にお正月なので、すごく心配していたのですが、搬送先の病院の決定はとてもスムーズでした。本当にラッキーだったと思っています」と話していました。

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「ブルーカード」は、地元の医療機関の連携から生まれました。患者の状態を常に見ている「かかりつけ医」がカードを記入し、それを患者に渡すとともに、医師会や提携病院に送り、共有化します。患者の容体が急変した時には、病院はカードを持っている患者であれば受け入れることになっています。浪速区医師会の試算では、病院に搬送するまでの時間は、市の平均よりも約8分、短くなったということです。

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お正月に搬送された男性のかかりつけ医・藤吉理夫医師は、「手応えはあると思います。患者さんの登録数も増えていますし、実際それで助けていただいた症例も、たくさんあります。患者さん側も安心できると思います」と話していました。

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また、病院側にとっても、ブルーカードがある患者は、治療にかかる時間を大幅に短くできるうえ、かかりつけ医が間に入ることで受け入れやすいということです。
愛染橋病院の松田政浩医師は、「当然、ブルーカードの患者さんが来たらすぐ診ます。かかりつけの医師からのきちんとした情報があれば、それはもう信頼ということ。そういうのがあることが、一番のメリットだと思います」と話しています。

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システムができて4年。現在、浪速区を中心に12の病院と31人の開業医が参加し、情報を登録している患者も約450人にまで広がっています。
ブルーカードのシステムを運営している浪速区医師会の久保田泰弘理事は、「自分に何かあったら、必ずこの病院が受け取ってくれる、診てくれると保証してもらえるだけで、患者さんの安心感は違ってくると思います」と話していました。

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【どう共有する?患者の医療情報】 
こうした取り組みは他の自治体でも行うところが出てきています。例えば東京・港区をはじめ、各地の自治体では、救急用の筒型のカプセルを高齢者などに配布しています。カプセルの中には、自分の病気や保険証のコピー、飲んでいる薬の情報などを書いた紙を入れて、いざという時に見つけやすいように冷蔵庫の中に保管しておき、自宅に駆けつけた救急隊を通じて、病院に渡してもらおうという狙いです。

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また、岐阜県では、ICカードに医療情報を入れて患者に持ってもらい、いざというときに救急隊や病院が専用の端末で情報を読み取ろうという取り組みも行われています。

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一方、患者にとってメリットの大きいこうした取り組みですが、最大の課題は集めた情報の漏えいリスクです。病歴などは慎重な取り扱いが必要な個人情報なので、システムを広げるほど管理が難しくなります。大阪の場合、浪速区医師会という、互いに顔の見える地域の医師会単位で進めたことが成果を上げた要因だと言えます。


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私たちにとっても、いざという時に安心して医療を受けられるのは心強いことです。それぞれの地域の事情に応じた形で医療機関同士が連携を強化していく取り組みを広げていってほしいと思います。
 

投稿者:角田 舞 | 投稿時間:06時00分

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