2013年05月26日 (日)飲酒問題に早期介入できる法律を


飲酒運転やアルコール依存症など飲酒が関わる問題を防ぐための法律を作ろうという集会が5月11日に名古屋市で開かれ、専門の医師が「法律があれば早い段階で治療につなげられる」と訴えました。

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集会は、アルコール依存症の治療に携わっている医師のグループや断酒会などが開いたもので、精神科の医師の猪野亞朗さんが、成立を目指す「アルコール健康障害対策基本法」の骨子案を紹介しました。骨子案では、▼多量に飲酒する人を早い段階で見つけるための健康診断を行うことや、▼問題がある人に、酒の量を減らすための指導やアルコール依存症の専門的な治療を受けさせるための指導を行うことなどが盛り込まれ、国と都道府県に対策の総合的な計画を作ることを求めています。

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国の研究班の調査では全国でアルコール依存症の人は80万人と推計されていますが、そのうち治療を受けている人はおよそ4万人にとどまっていて、治療につなげるため、関係機関が連携し、いち早く問題がある人を見つけ出すことが重要だと専門家から指摘されています。
 

【問題のある人を早期に見つけ指導を】
三重県四日市市を中心とする地域では、アルコール依存症の専門の医師と内科や救急の医療現場、それに、保健所や消防などが連携して、早い段階で、多量に酒を飲む人を見つけ、治療や指導に結びつける取り組みをいち早く行っています。三重県に住む71歳の男性は糖尿病を長年患っています。男性の主治医の三重大学医学部附属病院総合診療科の吉本尚医師は、男性には多量に飲酒する傾向があるのではないかと疑いました。

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吉本医師は、アルコール依存症の専門医ではありませんが、日頃から依存症の専門の医師と交流があり、飲酒の傾向を判断する「専門の質問票」を使っています。この男性に対しても、質問票に沿って▼飲酒の頻度や量、それに▼酒に酔って問題を起こしたことがあるかどうかなどをチェックしました。

20130526aruizon7.jpgその結果、男性は、当初飲んでいた量より多く飲まないと酔えなくなったり飲んでいる時間が長くなったりはしていないものの、毎日、焼酎を飲んでいることがわかり、吉本医師は「依存症には至らないものの、危険な飲酒の状態」と判断しました。

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そして、どうすれば酒を控えることができるか、話し合い、男性は「酒を飲まない休肝日を週に1日作ったらいいだろうな」と話していました。

20130526aruizon9.jpg吉本医師は、今後も男性の飲酒の状況を確認し続け、依存症の疑いが強まれば専門医を紹介することにしています。吉本医師は「早めに問題を見つけて介入した方が、患者さんが酒の量を控えることも難しくなく大変さが減るし、重い病気にならないですみます。医師だけでなく保健師や看護師なども含めて早く介入できればメリットも大きいです」と話していました。

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【救急現場を早期発見の場に】
救急医療の現場も、飲酒の問題がある人をいち早く見つける機会になると専門家は指摘しています。猪野医師などの調査では、成人後に救急車を利用したことがある人は依存症の患者が67%で、内科などの一般的な診療科の患者の31%の2倍以上で、平均の利用回数は依存症の患者が2点4回と、一般的な診療科の患者の0点4回の6倍に上っていることがわかりました。猪野医師は、何度も救急車で病院に運ばれる患者は、アルコール依存症の治療をきちんとしないまま、病気をしたり、酒に酔ってけがをしたりして再び搬送されている可能性が高く、救急隊員や医師や看護師などの負担が重くなっていると考えています。このため、猪野医師などは、救急医療の現場で問題のある人を見つけ出し専門的な治療につなげるために、▼関係機関の役割や▼依存症のチェック方法、▼患者に専門の医療機関を紹介する手順などを記したマニュアルを作っています。マニュアルには、専門医だけでなく救急に携わる医師や看護師、消防、それに保健所や警察、病院のケースワーカーなど関係機関が連携して取り組むことの重要性がうたわれていて、完成しだい、地域の医療機関をはじめ、警察や消防、保健所などに配ることにしています。

20130526aruizon11.jpg (写真はアルコールの専門医や内科医、保健所や消防の職員などが参加し、マニュアルについて議論した会議)

猪野医師は、アルコール健康障害対策基本法が成立すれば、関係機関が連携して問題のある人に早期介入する取り組みを全国に広めることができると考えています。猪野医師は「広く社会の人たちにアルコールの健康問題と飲酒運転や自殺など関連する問題を十分理解してもらい、法律を成立させられればと思います。法律によって、国や地方自治体や医療の関係者が一丸となって飲酒にからむ問題を早い段階で解決できればと願っています」と話していました。

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アルコール依存は「否認の病」とも言われ、自ら専門医にかかったり、断酒したりするのは難しいといいます。家族も長い間苦しみます。だからこそ、少しでも早く問題のある人を見つけ出して、依存症まで至らない段階で、また、依存症でも重くない段階で専門的な治療や指導を受けさせ、酒をやめさせたり減らさせたりすることが大切だと思います。依存症に至っていない段階であれば、酒を減らす「節酒」でも効果があるということです。三重県で行われている早期介入の取り組みは、全国的にみてもまだまだ少ないのが現状だといいます。「酒は百薬の長」とか、酒を通してコミュニケーションをはかる「飲みニケーション」ということばがあるように、飲酒は身近な行為です。適量であればいい方向に作用することも多いでしょう。しかし、飲み過ぎはいろいろな害を及ぼす恐れがあります。誰もが飲み過ぎれば引き起こす恐れのある飲酒の問題を防ぐには、医療に関わる人たちだけでなく、私たち一人ひとりも適度な飲酒の量や依存症などについて、まず、理解を深めることが大事だと思います。そして、社会全体で対策に力を入れ、問題のある人を早期に見つけ出し、専門的な治療や指導に結びつける仕組みが全国に広まればと願っています。




 


 

 

 

投稿者:中村織恵 | 投稿時間:06時00分

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