2013年03月22日 (金)"働き盛り"襲う社交不安障害


「会議で発言するのが怖くなる」「上司の前だとしゃべれなくなる」こうした症状が「あがり症」や「心配症」ではなく、深刻な”病気”につながる患者が出てきています。それが「社交不安障害」。人前に出ると震えや吐き気まで出てくる心の病気で、いま働き盛りの人たちに増えてきています。

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千葉県に住む43歳の女性です。症状が出たのは7年前。会社で非正規から、正規の社員に変わった時、急に周りの目が気になり始めたといいます。

20130322_sad02.jpgこの女性は、「朝のスピーチをやらなきゃいけなくて。そうなったらもう、みんな見てる、どうしようみたいな気持ちになりました」と話してくれました。重要な会議で発言を求められることが多くなった女性は、自分の発言や行動が上司からどう評価されるのか気にするあまり、やがて恐怖感を覚えるようになってきました。「これけいれんしているんじゃないかっていうくらい手が震えました。どうきもすごくて、怖くて怖くてしょうがなくなりました」と振り返ってくれました。

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ついには、人前で手が震え、パソコンを打ち込むことさえできなくなり、業務を同僚にゆだねざるを得なくなりました。女性は、「能力がないんだって思われたり、本当に人にどう評価されるんだろうっていうのが恐怖だったんだと思います」と話していました。このままでは会社にいられなくなると思った女性は診察を受けました。千葉大学病院の精神科医の清水栄司医師が、女性の症状を聞き社交不安障害と診断しました。

20130322_sad07.jpg社交不安障害は、人前に出ることや他人の視線に恐怖を感じる心の病気です。震えや吐き気といった症状が、生活に支障が出るほどひどくなります。この病気は、不安感をコントロールするセロトニンという物質が脳内で不足するためにおきると考えられています。

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清水医師はいま、働き盛りの20代から40代の患者が急増していると指摘し、背景には、社会の風潮の変化があると見ています。清水医師は、「今までは仕事をこつこつやっていれば評価されましたが、今はプレゼンテーションをしてなんぼみたいな風潮がありますよね。そういう時代にあって、ほかの人にはわからないようなつらさや我慢を強いられているような状況なので、非常につらい病気ですね」と分析してくれました。

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症状が重くなり、社会との関係がとだえてしまう患者もいます。大阪に住む35歳の男性です。20代の時、目上の人と向き合うと極度に緊張する社交不安障害と診断されました。

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当時、男性は作業療法士になる夢を持っていました。厳しい教官から指導を受けたことで、吐き気や震え、さらにはめまいまで起こすようになりました。その後3年間、家から出ることさえできなくなったのです。

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男性は、「指導者さんは逐一僕のやること、やることを見てくるし、失敗できないという環境でした。だんだん精神的に参っていきました」と話していました。

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いま、同じ病気に苦しむ患者たちはグループを作り、悩みを語り会っています。社交不安障害などの患者で作る「なかまの会」です。

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参加した20代の女性は、「例えば食事に誘われたりしても、(人の視線が)怖くて、はしを持ってる手とかがおかしいんじゃないのかと思って、食事を食べないとか、悩みがあります」と語っていました。

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この日参加した35歳の男性は、同じ悩みを持つ仲間に巡り会い勇気づけられたといいます。男性は、「僕と同じような症状を持っている方が色々いらっしゃって。やっぱり共感し合うことがあって、前向きな気持ちが生まれたと思います」と話していました。

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また、「なかまの会」の早野強代表は「この病気っていうのは、なかなか理解されにくい症状があるので、やっぱりみんなで支え合いの輪を築いていくことが大切じゃないかなと思っています」と話してくれました。

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新しい治療方法の研究も始まっています。精神科医の清水医師の研究チームです。会議で発言すると震えがとまらないという患者にスピーチをしてもらいその様子を撮影します。そして、その映像を今度は自分で見てもらい、周りからは症状が気にならないことを確かめて自信を持ってもらうのです。

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セラピストと女性は結果について、「ビデオで見てどうでしょう、震えっていうのは見えましたか」「わからなかったですね。自分では結構震えているつもりだったんですけど」とやりとりしていました。

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女性は「自分が思っているより周りに伝わっていないと思いました」と話してくれました。こうしたカウンセリングなどを通じて症状は改善したといいます。

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治療法の研究に取り組んでいる清水医師は、「症状が出てきてもこれがすぐに病気だという風に気づいて頂けない方が多いと思うんですよね。苦しむ期間が長いよりは早めに治療を考えていただく方がよいと思っています」と話していました。


20130322_sad26.jpg働き盛りを襲う社交不安障害。今、病気への理解と増加する患者への対策が求められています。

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社交不安障害は、それまで症状のなかった人が突然発症することもある、いわば、誰にでもなりえる病気です。取材した清水医師によりますと、会社で昇進するなど、責任が増すに従って、発症するケースが目立つと言います。薬などによる治療だけでなく、過度のプレッシャーがかからないよう、周りの人たちが病気だと理解して接することが大切だと話していました。  

投稿者:宮本知幸 | 投稿時間:06時00分

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