2011年09月22日 (木)大家さんとのトラブル防ぐ 新ガイドライン


賃貸住宅を契約するときに支払う「敷金」。この敷金を巡って、多くのトラブルが起きています。
街で聞いてみると・・・
「何回も引っ越したことあるんですけど、敷金が戻ってきたことがない」
「これだけ汚したから、これだけ返ってこなかったと説明があれば・・・」という声がありました。

こうしたトラブルを減らそうと、国は、先月、ガイドラインを改訂しました。ガイドラインの利用によって多くのトラブルは防止できるとみられています。
きょうは、賃貸住宅を退去する際に敷金トラブルを減らすためのポイントをお伝えします。

20110922011.jpg

敷金は、住宅を借りる場合、借り主の過失で修繕が必要になったときなどに備えて、あらかじめ大家さんに支払うお金です。退去時には、修繕費などが差し引かれた分が戻ってきますが、中には、普通に生活していたつもりなのに敷金がほとんど戻ってこないなど、トラブルになることも少なくありません。

こうしたトラブルを防ぐために、国は、大家と借り主のどちらがどのくらい修繕費を負担するのかを示したガイドラインを、社会情勢の変化に合わせて、先月、一部を見直しました。

20110922016.jpgまず、ガイドラインがどのように使われているのか、取材しました。
神奈川県内で暮らす男性は、ことし4月、4年間借りた部屋を退去しました。
このとき、敷金およそ18万円の中から、部屋の修繕費として10万円余りを請求されました。
男性は「少し高いなと思いました。予想以上にかかっているイメージはありました」と振り返ります。

20110922012.jpgそこで、敷金の算定を行っている専門家に相談しました。すると、支払う必要のない修繕費まで請求されていると指摘されたのです。その一つが部屋のクリーニング費用。専門家は
「退去に伴う清掃を果たせば、100%の負担義務はありません」と指摘します。

判断の基準となっているのが国のガイドライン。借り主の負担となるのは、掃除を怠っていた場合とされています。ある程度きれいに掃除されていたことから、話し合いの結果、減額されました。

20110922013.jpgもう一点は、子どもが落書きした壁紙の張り替え費用です。
専門家は「クロスの場合、経年劣化が採用されています。経過年数を考慮すると、100パーセントも負担する必要はありません」と述べています。この壁紙は、張り替えてからすでに6年がたっていました。年数に応じて借り主の負担割合が小さくなるとするガイドラインに従って、この負担も減りました。
当初10万円だった請求額は最終的に7万円ほどになりました。男性は「何も知らなければそのまま払っていたと思う」と話しています。

ガイドラインは、修繕費用を大家と借り主のどちらが負担するのか、きめ細かなルールが示されていいます。
たとえば、畳の表替えですが、飲み物をこぼしたあとに手入れもしないでシミになった場合は、過失として借り主の負担になりますが、日焼けによる変色などは、通常の使い方として大家さんの負担になるんです。

では、壁に貼ったポスターの画びょうの跡は、どちらの負担になるか分かりますか?
壁に故意に傷を付けるので借り主でしょうか。実は違うんです。
ポスターを張った際の画びょうの穴などは、壁を張り替えるほどでないかぎり、大家さんの負担になるんです。ただ、傷が、より大きくなる釘やネジの穴になると、借り主の負担になることがあるので注意が必要です。

社会情勢の変化に合わせて、修繕費を負担する責任も見直されました。大家さんと借り主の負担を見てみましょう。

タバコのヤニによる壁紙の変色は、これまで大家さんの負担でしたが、禁煙の広がりとともに今回から借り主の負担になったんです。
また、車椅子で付いた床の傷は、これまでは借り主の負担でしたが、高齢化が進む中で車椅子を使った生活は普通のことと見なされ、必ずしも借り主の負担ではなくなりました

今回のガイドライン見直しのもう一つのポイントは、私たち借りる側も、事前にこうした内容を知っておけるように工夫をしたことです。住宅を借りる際に、あらかじめ修繕費用について、大家さんと話し合えるように、修繕費の負担について、分かりやすい一覧表の書式が盛り込まれています。

トラブル防止を目指して、今回の書式をいち早く取り入れた千葉市の不動産会社を取材しました。
先月からガイドラインに記載された書式を契約書に使い始めています。契約書には、大家と借り主、それぞれがどの修繕費を負担するのか、細かく記してあります。

20110922014.jpgさらに、借り主の過失で傷などを付けてしまった場合、修繕の費用がどれだけかかるのか、目安となる単価も一覧表にしています。
不動産会社を訪れた人は
「傷を付けたとしても、ある程度、これくらいかかるんだなと分かっていれば安心ですね」とか
「素人だと分からない面がけっこうありますが、表にしてもらったり、グラフにしたりして説明してもらって安心できました」と話していました。
不動産会社の社長は
「退去時に入居者ともめるのは、われわれにとっても非常に負担です。お互いに最初からガイドラインを見て、納得ずくで契約して、退去のときもガイドラインのとおりにやれば、円滑にいくことが期待されます」と話しています。

実は、このガイドラインには強制力はないのですが、不動産問題に詳しい弁護士は、トラブル防止には一定の効果があると指摘しています。

弁護士の吉田修平さんは
「ガイドラインに従ったことをするように、大家さんに勧めない不動産屋さんは、評価されないという形で間接的な強制力が出てくると思います。市場でとう汰される、そういう意味で効果はあると思います」と話しています。

ガイドラインは、国土交通省のホームページで見ることができます。
検索の際は、
「『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
(再改訂版)の公表について」
(平成23年8月16日公表)でお調べいただければと思います。


敷金は、部屋を退去する時に返還してもらうものですから、それまでにガイドラインを活用して大家さんときちんと合意しておけば、トラブルは防げると思います。

投稿者:天間暁子 | 投稿時間:09時00分
twitterにURLを送る facebookにURLを送る mixiにURLを送る ソーシャルブックマークについて
※NHKサイトを離れます。

トラックバック

■この記事へのトラックバック一覧

※トラックバックはありません

コメント

天間記者の地道な取材にもとづく記事、いつも感心いたします。
今回は、大家さんと借り主との間の「敷金」についての問題ですが、「敷金」といえば最高裁第二小法廷平成23年7月15日判決に関する報道でも「敷金」が話題となりましたが、ネット上では単に「最高裁が敷金を認める判決を下した。」のような安易な記述が目立ち、これでは最高裁判決の趣旨とは少し違うように思えます。
この「敷金」について、私は、次のように思います。
日本の賃貸物件には敷金・敷引金・礼金などの慣習が残っており、賃貸物件から賃貸物件へ引越す際には、引越費用が引越の「足かせ」になるばかりか、敷金・敷引金・礼金なども大きな「足かせ」となり、入居者(借り主)を捉まえて逃がさない状況を作り上げているように思えます。
問題はここからです。
平成3年(1991年)に借地借家法が成立したのですが、平成3年以降、三大都市圏において、家賃の先行指標とされてきた住宅地の地価は長期下落傾向にあります。また、長期デフレ経済下、概ねここ10年は所得水準も下落しています。
にもかかわらず、平成3年以降、三大都市圏における賃貸住宅の坪単価はバブル期を上回る水準で高止まりしたままです。
とすると、家賃が高止まりしたまま収入が減っていくため、三大都市圏において賃貸住宅に住む極めて多くの現役世代の可処分所得は、激減していることとなり、個人消費を押し下げていることになります。
こればかりではありません。上述のとおり「敷金」は入居者を縛り付ける作用があるため、入居者の中には経済的に破綻される方々も出てくると予測でき、このことは誰にでも起こりうることだと思われます。
このような状況にならないために、借り主が大家さんに対し借地借家法32条1項により家賃減額請求を行う必要があると思われますが、企業は別として個人レベルで、家賃減額請求ができることは広く知られていません。
そのため、天間記者にこれらのことを取材していただければと思います。

投稿日時:2012年01月19日 19時45分 | トミー

コメントの投稿

ページの一番上へ▲