2019年04月16日 (火)もう間に合わない?!


※2019年1月30日にNHK News Up に掲載されました。

春といえば、引っ越しのシーズン。「まだ先の話でしょ?」と思った、そこのあなた。実は、すでに予約が取れない事態が起きているんです。中には、引っ越しできずに“引っ越し難民”と呼ばれる人も。引っ越ししたいのに、できない…。今、何が起きているのか取材しました。

ネットワーク報道部記者 田辺幹夫・大窪奈緒子・郡義之

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<あふれる悲鳴!>
ネット上にあふれる悲鳴の数々。
「3月の半ばが良かったんですが、繁忙期のため値段がかなり跳ね上がるので断念」
「かなり(荷物の)量少ないのに夫婦が引っ越すレベルの金額を見積もられた」
一方で、引っ越し業者の側からも悲痛な声が上がっています。
ある営業職の人からは「3月末に近づくほど着実に見積もり件数が増えてきている。先週は支店全体で130件ぐらいだったが、2月になったら200件超えるかも」とのツイートも。


<引っ越し「お断り」>
北海道在住の30代女性は、今月、ネットや電話を通じて複数の業者に見積もりを依頼。そこで、厳しい現実に直面します。

190130mou.2.jpg3月と4月に引っ越しが集中することを見越して、早めに動いてみたものの、引っ越し業者から寄せられるのは「お断りメール」ばかり。「お受け致しかねます」「見積もりができません」中には「他社での混載便の利用をお勧めします」とのメールも。

「まだ大丈夫だと思っていたのに、もうこの時期で予約できないのには驚きました」と話すこの女性。
結局、6社目で何とか予約を取ることができました。


<「もう限界です」>
運送業者でつくる「北海道トラック協会」の引越部会は、今月24日、札幌市内で、3月から4月にかけてのピーク時の引っ越しをできるだけずらすよう、呼びかけを行いました。

190130mou.3.jpg最近は家電製品が高度化し、こん包も大変なので、簡単にアルバイトに任せられない事情もあり、「引っ越す側」に協力をお願いするしかないのだといいます。
北海道トラック協会引越部会の松橋謙一部会長は「トラックも人も足りず、もう限界です。企業や官公庁には、できるだけ引っ越しをずらしてもらえるよう、お願いを続けるしかない」と話しています。
協会の加盟社の1つ、北海道内を拠点に営業している「札幌通運」によると、それでも、ことしは例年より1か月早く、予約が入っているそうです。
担当者は「これまでは日にち指定で予約を入れる客が多かったが、最近は、昨今の“引っ越し難民”と呼ばれる人が出てきている状況を勘案してか、できるだけ早く、なおかつ、期間に幅を持たせて予約する傾向にあります」と話しています。


<全国に広がる“引っ越し難民”>

190130mou.4.jpg引っ越し業者が加盟する業界団体、「全日本トラック協会」に現状を聞くと、引っ越し希望の殺到は、すでに全国規模で始まっているといいます。
「背景にあるのはドライバー不足と作業員不足です。体力的にもきつい引っ越し作業を担ってくれる学生のアルバイトが確保しにくいだけでなく、『働き方改革』で長時間業務がなかなかできない状況です。去年あたりから続く“引っ越し難民”と呼ばれる状況が、ことしも発生しています」

190130mou.5.jpg業界団体では、引っ越しの希望が特に集中する3月から4月の「混雑予想カレンダー」を作り、利用者にはこうした混雑時期をできるだけ避けてもらうよう、また企業に対しては、人事異動や着任の時期をずらしてもらえないかと呼びかけています。


<引っ越し界のLCC?!>
何とかならないものか。こうした声に応える違った形態の企業も出てきています。

190130mou.6.jpg「CBcloud」のホームページ
「いわばうちは、引っ越し業界のLCCだと思ってもらえれば」そう話すのは、物流のベンチャー企業「CBcloud」の営業マネージャー小島卓己さんです。

この会社では3年前、荷主と宅配ドライバーを直接マッチングするアプリを立ち上げました。
スマートフォンのアプリに引っ越しの内容や希望日時を入力すると、登録しているおよそ8000人のドライバーに通知が行き渡ります。

それから、条件に合うドライバーとアプリ上でメッセージをやり取りして依頼内容をすりあわせ、交渉が成立します。

利用者にとっては大手の引っ越し業者に依頼するより安く、ドライバーにとっても、中間業者が減る分、報酬が増えるうえ、困り果てた人たちから、直接感謝のことばをかけてもらえるのも、モチベーションアップになっているといいます。

ただ、このサービス、厳密には引っ越しではありません。
「あくまでも荷物の配送をするサービスですので、“玄関先”までしか荷物を運べず、家の中には入りません。デメリットやリスクをしっかり認識したうえで利用するようにしてほしい」(小島卓己さん)


<自力で運びます>
「もう諦めました」
こう話すのは、大阪在住の20代の女性です。4月から名古屋市内で働くというこの女性、“引っ越し難民”にはなるまいと今月、早めに手をうちましたが、見積もりに目を疑ったといいます。

190130mou.7.jpg今は実家暮らしのため、冷蔵庫やテレビなどかさばる荷物はすべて引っ越し先の量販店で買いそろえる計画で、大きな荷物はベッドとタンス、それに愛用の自転車くらい。

洋服や雑貨などの日用品も、最大で段ボール30箱程度ですが、それでも、ある大手の引っ越し業者の見積もりは30万円を超えていました。

ほかにも何社かあたったものの、いちばん安い見積もりでも20万円弱。新しい仕事、新しい生活への期待で胸を膨らませていましたが、膨らむのは出費ばかり。

結局、女性は引っ越し業者への依頼は諦めました。3月下旬にレンタカーを借り、家族にも手伝ってもらい、荷物を自力で運ぶことにしたのです。
「繁忙期で高いとは理解していたつもりでも、さすがに30万円は出せない額。しかたないとは思ったけど、出はなをくじかれた感じがします。そんなに荷物が多いわけでもないのに、この値段…。もう自力しかありません」


<トラブル避けるには>
引っ越し費用の高騰は、そのままトラブルにつながることもあります。全国の消費生活センターなどには、昨年度、2241件のトラブルの相談が寄せられました。
「どこも予約がいっぱいと言われ、ようやくとれた業者に見積もりを依頼すると約60万円と言われた。別の業者に試しに見積もってもらうと、同じ条件でも20万円を下回る金額で、あまりの違いにびっくりした。60万円はあまりに高額で納得できない」(北陸地方 30代女性)
引っ越しのトラブルを避けるにはどうしたらいいのか。国民生活センター相談情報部の井上竜一さんが消費者にできることを教えてくれました。

(1)見積もりは複数の業者に依頼すること。
料金を比較することで極端に高いケースを見抜くことができるということです。

(2)契約の際に出される料金の見積書と約款(契約条件)を必ず確認すること。
わからない点は業者側に納得できるまで確認しておくことで「思っていたサービスと違った」といったトラブルを防ぐことができます。

(3)引っ越し後、家具や荷物に不足や破損がないか、すぐに確認すること。
時間がたってしまうと、引っ越しが原因かどうか証明することが難しくなるので、疲れていてもなるべく早く確認することが大切だということです。


<3月でないとダメなんですか?>
働き方改革などで変わる昨今の職場環境。そんな中で、同じ時期に一斉に動く引っ越しの在り方も、変革が求められているのかもしれません。引っ越し業界の努力だけではなく、社会全体の理解も必要なのではないかと思いました。

投稿者:田辺幹夫 | 投稿時間:16時51分

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