2018年03月29日 (木)"やっぱり起きた" 違法民泊対策は


※2018年3月5日にNHK News Up に掲載されました。

大阪市内の民泊で起きた日本人女性の遺体が遺棄された事件。逮捕されたアメリカ人の容疑者は、1月末に来日してから、許認可を受けていない違法民泊などを転々としながら遺体を遺棄していたと見られています。以前から行政の目が届かない違法民泊は犯罪の温床になりやすいとの指摘があり「やっぱり起きた」との声も。一方で6月からはいわゆる「民泊新法」もスタート。違法民泊対策は大丈夫なのでしょうか。

神戸放送局記者 友澤聡
ネットワーク報道部記者 玉木香代子

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<民泊を転々 遺体を遺棄か>
兵庫県三田市の27歳の女性が行方不明になり、大阪・西成区の民泊用のアパートの部屋のほか、大阪や京都の山林から遺体が見つかった事件。2月28日にアメリカ人のバイラクタル・エフゲニー容疑者(26)が遺体を遺棄した疑いなどで逮捕されました。

yap180305.2.jpgこの事件、凄惨(せいさん)さに加えて、急増している民泊を舞台に起きたことから注目されました。

女性の行方を捜査していた警察が最初に調べたのは、遺体が見つかったのとは別の大阪・東成区にある民泊用のマンションの一室。容疑者が借りていたもので、防犯カメラには、容疑者が女性と一緒にマンションに入るところや、大きなバッグを持って1人で退去する姿が映っていました。

容疑者はこのほか奈良市内や大阪・此花区の民泊も借りていました。警察は民泊を転々とし、遺体を遺棄していたと見て捜査しています。

捜査関係者によりますと、容疑者は、airbnbという、民泊を仲介するインターネットのサービスを使って部屋を予約していたということです。大阪市が調べたところ、容疑者が借りた東成区と西成区の2つの民泊については、市が認定していない「違法民泊」であることがわかりました。こうした違法な民泊は、市内で部屋にして1万を超えると見られています。

「一般の人から『やっぱり民泊は不安だ』というイメージを持たれてしまう」

今回の事件が起きてから、遠く東京で合法的に民泊を経営する人たちからも、危惧する声が相次いでいます。


<違法民泊 なぜ犯罪の温床に>
yap180305.3.jpg民泊は、旅館業法の許可か特区に定められた地域で認定を受ければ営業できます。ただし、多くの場合、泊まりに来た本人の対面確認やパスポートの提示が求められ、犯罪抑止に効果があると考えられています。

一方、許認可を受けていない違法民泊では、こうした手続きがおろそかにされがちな上、そもそも行政や警察がどこで営業しているか把握できないことから、犯罪の温床になりやすいとされているのです。


<6月には新法 違法民泊は?>
こうした中、違法民泊を解消して民泊を適切な管理のもとで全国に広げることを狙いにした新法がことし6月に施行されます。一定の要件を満たせば届け出るだけで営業できるようなり、3月15日には、届け出の受け付けも始まります。違法民泊は本当に解消できるのでしょうか?


<3つのポイント>
民泊や関係する法律に詳しい小池修司弁護士に聞くと、
(1)仲介サイトからの違法民泊の締め出し 
(2)地域の目による怪しい物件の監視 
(3)自治体による監督
この3つが徹底できるかどうかだと指摘します。

yap180305.4.jpg小池修司弁護士


<仲介サイトからの締め出し>
違法な民泊に客が宿泊するのは、仲介サイトに掲載されているからです。観光庁は新法施行に合わせて民泊物件を掲載する仲介サイトの運営業者に自治体に届け出をしていない民泊の削除を求めています。それぞれの運営業者に対応を確認したところ、この分野の世界最大手でアメリカ発のairbnb、新法をきっかけに民泊への参入を決めた日本の楽天ライフルステイ、そして中国発の途家、いずれも、「違法民泊は掲載しない」としています。それぞれのサイトがこうした対応をきちんととれば一定の効果はあると見られています。


<それでもなくならない?>

yap180305.5.jpg中込元伸社長
「それでも違法民泊はなくなりません」

住民からの苦情にもとづき違法民泊の調査を行っている会社「オスカー」の中込元伸社長はこう指摘します。

「民泊の予約は、専門の仲介サイトだけでなく、一般の人がよく使うSNS上にも広がっていて、つきとめるのがますます難しくなっています」

見せてもらったSNSには、大阪市内の民泊の部屋の写真とともに、部屋の詳細な情報が中国語で書かれていました。また、世界には物件を紹介する仲介サイトも、把握しきれないほど多くあるそうです。


<地域の目による怪しい物件の監視>

yap180305.6.jpg「スーツケースを引きずった外国人がいつも出入りしている」

「マンションの特定の部屋で夜中の騒音がひどくなったりゴミ出しのマナーが悪くなった」

地域で起きるこうした異変にいち早く気付くのは住民です。そして次に行うのが、観光庁が設置しているコールセンターへの通報。新法が施行された後は、民泊の苦情を受け付けるということです。通報された物件の自治体への届け出が確認できない場合には、該当する自治体に指導を要請します。

民泊制度コールセンター 0570-041-389

独自に通報窓口を設けている自治体もあります。

大阪市 06-6647-0835
東京・渋谷区 03-3463ー3179


<自治体による監督態勢に課題も>
「届け出もしない」「許認可も得ていない」民泊については、自治体が新たに立ち入り検査ができるようになり、最大で100万円の罰金が課されることになります。課題は態勢の整備。前述の大阪市でも「民泊の数が多すぎるため職員が足りない」と話しています。
特区民泊を導入し、独自の指導に取り組んでいる大阪市では、これまで住民から寄せられた4000件を超える違法民泊の連絡のうち、直接指導できたのは127施設にとどまっているということです。民泊という新たな動きに対応する人員をどう確保するか、どの自治体にとっても頭の痛い課題です。


<北風か太陽か 悩ましい自治体の条例>
民泊新法スタート後は、違法民泊と自治体によるいたちごっこになるのではないか。それに大きく影響すると見られるのが、自治体による民泊の営業制限です。

民泊新法では、自治体が条例を設け、営業できる日数や地域を独自に制限することができます。

たとえば京都市では、家主不在型の場合、民泊が営業できる期間を原則として観光客が少ない1月15日から3月16日までのおよそ2か月間に限っています。

ただ、小池弁護士は「制限をかけすぎると合法民泊は“もうからない”として、“よりもうかる”違法民泊に流れるという心理が働くのではないか」と懸念しています。

ルールを厳しくしすぎると届け出が減って違法民泊が増えるおそれもあり、民泊を適切な管理のもとで広めるという新法の目的も果たせないままになってしまいます。

急増する外国人旅行者の受け皿としてだけではなく、各地に広まる空き家対策などとしても期待される民泊。日本にうまく根付くかどうか、引き続き注視していく必要があります。

投稿者:玉木香代子 | 投稿時間:16時27分

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