2019年12月17日 (火)キノコと紅葉と豚コレラ


※2019年9月19日にNHK News Up に掲載されました。

これからシーズンを迎えるキノコ狩りや紅葉狩り。それが今、問題になっている豚コレラと関係があるというのです。感染の拡大は、私たちも無関心でいられない段階に来ているようです。

ネットワーク報道部記者 井手上洋子 ・斉藤直哉

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入山には注意が必要です

先日、SNS上のいくつかの投稿が注目されました。

豚コレラの感染が確認されている長野県内で「キノコ狩りや紅葉狩りで山に入るには注意が必要です」とか、「ことしは自重しよう」といった内容です。

秋の楽しみと豚コレラがどう関係するのか、答えは長野県のホームページにありました。

kinoko.190919.2.jpg長野県ホームページより
豚コレラに感染した野生のイノシシのふんなどに混ざったウイルスが、土などで運ばれるおそれがあり、山に入ったあとは靴や服に付着した土をよく落とすよう訴えているのです。

破られた防衛ライン
その豚コレラ、感染拡大が止まりません。

豚コレラは、人に感染することはなく、感染したブタの肉や内臓を食べても人への影響はありません。

しかし、感染したブタは高い熱や下痢などの症状が出て、多くの場合、数日のうちに死ぬため、養豚業者にとって大きな脅威です。

去年9月、岐阜市の農場で確認された豚コレラの感染は、ことし7月までに中部と関西の合わせて7つの府県に拡大。

これを受けて野生のイノシシによるウイルスの広がりを封じ込めようと、中部地方を取り囲むように、わなの数を増やしたり銃による狩猟を強化したりする、いわゆる「防衛ライン」が設定されました。

kinoko.190919.3.jpgところが9月13日、この防衛ラインを越えた埼玉県の農場で感染が確認され合わせて8つの府県に拡大しました。

そして、その感染経路として野生動物だけでなく、イノシシのふんを踏んだりイノシシのだ液などがついた野草に触れたりした人や車も疑われているのです。

kinoko.190919.4.jpg自転車レースで消毒呼びかけ
周囲を山に囲まれた長野県では、レジャーで山に入る人たちに注意を呼びかける動きが広まっています。

kinoko.190919.5.jpg長野県王滝村で9月15日に開催された、国内屈指のマウンテンバイクのレース。現地では野生のイノシシの感染が確認されていることから、会場では異例の対策が行われました。

ゴール付近には自転車用の消毒マットが置かれたほか、会場付近の駐車場内には自転車のタイヤや出場者の靴底に消毒スプレーを吹きかける消毒エリアも設けられました。

このほか、キノコ狩りのシーズンに入った県内では車で各地を回って山に入る人に注意を呼びかける取り組みも行われているほか、喬木村では、山を所有している人に消石灰を配布する試みも行われました。

「とにかく山に入るときは豚コレラに注意という意識を持ってほしい。入山したあとは靴や衣類について土や泥をとにかくよく落としてほしい」(長野県の担当者)

苦悩する千葉の養豚業者

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感染の拡大に苦悩しているのが、飼育する豚の数が61万頭余りと全国4位の千葉県の養豚業者です。

千葉県では、台風15号による停電が長引き、換気や給水ができず豚が死んでしまうケースが出ています。

生産者らでつくるナイスポークチバ推進協議会によると、各農場では台風による被害の把握や復旧を急ぐのに精いっぱいだと言います。

野生のイノシシの侵入を防ぐ柵の設置などを急ぎたいものの、まだ手が回っていないのが現状だということです。

また、建物の修理のため工事車両が複数の農場にまたがって出入りするケースもあり、農場に入る人や車の消毒の徹底も課題となっています。

“ワクチンの接種を”

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こうした中で養豚業者が求めているのが、ワクチンの接種です。

「関東で感染が確認されたことで豚コレラに非常に強い危機感を持っているが台風の被害で停電が続いていてそれどころではない農家もいる。感染を防ぐためにも国には一日も早いワクチンの接種をお願いしたい」(ナイスポークチバ推進協議会事務局加藤脩三さん)

しかし、国はワクチンの接種に慎重です。

豚コレラのワクチンは効果があるとされる一方、使用することで輸出や流通などに悪影響が出る可能性があるからです。

埼玉県での感染確認を受けて国はワクチンの投与の検討を始めていますが、農林水産省によりますとワクチン投与によるメリットとデメリットについて関係者らに周知して意見を集めたいとしています。

私たちにできることは

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千葉県を中心に活動している獣医師の早川結子さんに、豚コレラ対策で私たちにもできることがないか聞きました。

「やはりこれから秋の行楽シーズンでイノシシなどの野生の動物がいるところにはむやみに立ち入らないでほしい。また、ピクニックなどに出かけてもお弁当の残りを絶対に山に捨てないでください」

早川さんによりますと食べ残ったお弁当などを山に捨ててしまうと餌を求めるイノシシなどを引き寄せてしまい人間が住むエリアに豚コレラのウイルスを近づけるおそれがあるというのです。

そのうえで早川さんは、私たち消費者が豚コレラを正確に理解することが養豚業者を支援することにつながると指摘します。

「感染が確認された地域の豚肉を買い控えるといった風評被害が起きてしまっているが、感染した肉は流通しておらず人間が食べても健康に影響がないので、全く根拠がなく大変残念です。生産者の皆さんは必死で農場を守りながら生産を続けているので、ぜひ、国産の豚肉を食べて応援してほしい」

おいしい豚肉の生産と安定供給をどう守っていくのか、養豚関係者だけでなく私たちも、その行方を十分注意して見守っていくことが必要だと感じます。

投稿者:井手上洋子 | 投稿時間:12時51分

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