2019年11月27日 (水)思いをはせる食の秋


※2019年9月6日にNHK News Up に掲載されました。

夏も終わり、「食の秋」がやってきました。
おいしい野菜に果物、魚、スイーツもいいなあ…。
しかし、そんな期待とは裏腹に、なにやら浮かない顔をしている人たちの姿も…。一体、何があったのか、取材してみました。

ネットワーク報道部記者 和田麻子・ 藤目琴実・ 郡義之

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サンマが高い! 相次ぐ悲鳴

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本格的なシーズンを迎えた、秋の味覚「サンマ」。
しかし、ことしは不漁の影響で、SNS上で悲鳴があがっています。

「高いな。1匹360円って…。もう庶民の食べ物じゃなくなってしまったのか…」
「サンマ高い。庶民のお魚が。。。手が出ない」
「100円以下で売られてたような時代は、大昔だった気もする」

なかには、サンマ2匹637円と書かれた商品のラベルの写真を掲載し、「今後サンマはぜいたく品に分類されます」と投稿した人もいます。

サンマが消えた鮮魚店

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異例の事態が起きている鮮魚店もありました。

東京 渋谷区笹塚の十号通り商店街にある、「福幸 山本鮮魚店」では、例年だと8月下旬から9月上旬には新サンマが店頭に並びますが、ことしはまだ1匹も入荷していません。
お客さんからも「サンマはまだ入らないの?」といった問い合わせが相次いでいるということです。
omoi.190906.4.jpgなぜ、店先からサンマが消えてしまったのか。

山本社長に聞きました。

「ことしは水揚げ量が少なく価格が高い。いいサンマは寿司店などにいってしまい、なかなか回ってこないんです」

omoi.190906.5.jpgサンマは載らない…
太く脂がのったサンマを店先で焼いて売れば、1匹150円で飛ぶように売れたのは、10年ほど前。今では考えられない価格ですが、当時はそれでも十分、採算が取れたといいます。

買い物客に安く提供することにこだわるこの店。
社長は取材の最後にこうこぼしました。

「ことしは、もしかしたら、1匹も入荷しないかもしれません。店を始めて70年ですが、こんなことは初めてで、諦めの境地です」

おはぎに欠かせない小豆が…
秋の彼岸の時期にゆかりの深い「おはぎ」。その味を左右する小豆にも異変が見られます。

omoi.190906.6.jpg日本豆類協会(東京)などによると、小豆はここ数年、天候不順などの影響で全国的に不作の年が目立つと言います。去年は10アール当たりの収量が前年に比べて20%ほど落ち込みました。

omoi.190906.7.jpg生産者の中には、在庫の小豆を取り崩してきたものの、ここにきてその在庫が減ってきたというところもあります。

小豆を生産する近畿地方のJAの担当者は、「和菓子店から、小豆を少しでも分けてほしいとお願いされるケースもあるのですが、在庫がないから分けられない」と苦しい胸の内を語ります。

ぼた餅をおはぎに
近畿地方に本店を置く和菓子店の担当者もこう語ります。

「現状として、どれだけお金を積んでも入手することはできません。確保にとても苦労しています」

そこで、この和菓子店は、ことし7月にこんな貼り紙を出しました。

omoi.190906.8.jpg「ぼた餅の規格変更をさせていただきます」

「ぼた餅」として売っていた商品を「おはぎ」として売る、サイズを120グラムから80グラムに小さくするという規格変更です。

店の担当者はその理由をこう語りました。

「私たちは、あんこをたくさん使って、ぼたっとしているのが『ぼた餅』と考えています。使う小豆の量を減らしサイズを小さくしたものを『ぼた餅』として売ることはできません」

「おでん」の具材でも
肌寒さを感じるようになると「おでん」を食べたくなる人も多いのではないでしょうか。

omoi.190906.9.jpgでも、さつま揚げやちくわなどの「練り製品」にも気になる変化が見られます。大手メーカーの紀文食品や日本水産が、練り製品の一部をことし3月に相次いで5%から15%ほど値上げしたのです。

各地のメーカーも今後、値上げや量を少なくするなどの対応を迫られているといいます。

人手不足による人件費や輸送費の上昇に加えて、原料となる「スケトウダラ」のすり身の輸入価格が上昇しているのが理由です。

あの商品の人気↑が原因!?
なぜ、「スケトウダラ」のすり身の輸入価格が上昇しているのでしょうか。日本かまぼこ協会に話を聞いてみると、ある身近な商品の人気が世界で高まっているのが原因の一つだと説明してくれました。

その身近な商品とは…

omoi.190906.10.jpg「カニカマ」です。
カニの肉ではなく魚の肉を使った“カニ風味かまぼこ”で、1970年代に日本で開発されました。
主な原料は練り製品と同じく「スケトウダラ」などの白身魚です。この「カニカマ」の人気が世界で高まっている理由を、日本かまぼこ協会の奥野勝専務理事が解説してくれました。
「1980年代から90年代にかけてのBSE問題以降、安全な動物性タンパク源として魚食が広がりました。さらにここ数年、健康志向の高まりで欧米や中国を中心にサラダなどの料理に入れるカニカマの人気が高まって、世界的に需要が増加しているのです」

omoi.190906.11.jpgパリの百貨店には冷凍カニカマが並ぶ

秋風に吹かれながら…
もちろん秋の味覚すべてに異変が起きているわけではありません。

それでも。天候不順に世界の動き、今後はどうなるのか…、などと、秋風に吹かれながら、食材の一つ一つに思いをはせることも、ことしは必要なのかなと感じました。

投稿者:和田麻子 | 投稿時間:11時27分

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