2019年05月08日 (水)食べても大丈夫?価格は?豚コレラの疑問、調べてみた


※2019年2月6日にNHK News Up に掲載されました。

「恐れていた事態が起きてしまった」
豚の伝染病、「豚コレラ」の感染がさらに広がったことを受けた生産者団体のことばです。ネット上では人への影響や豚肉の価格などを心配する声が上がっています。そこで、こうした疑問、調べてみました。

ネットワーク報道部記者 伊賀亮人・飯田耕太・郡義之

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<疑問や心配の声がー>

190206tab.2.jpg豚コレラの発生が5つの府県に広がっていることが確認されたことを受けたネット上の声です。
「豚肉の相場が上がるんじゃないか」
「飲食業界の一部にダメージでかそう」
「豚コレラが深刻化したら、国産豚の食肉の不足に陥ってしまう。これは死活問題だ」
影響を心配する声に加えてこんな声も。
「実際に人間が食べたらどうなるんだろ」
さらには、どのように広がったのか、感染の原因などについての疑問も相次いでいます。


<実際大丈夫?どうやって感染広がった?>
ネット上で出ている疑問の数々。実際どうなのか、専門家に聞いてみました。
190206tab.3.jpg答えてくれたのはウイルスによる家畜伝染病に詳しい農研機構・動物衛生研究部門の山川睦海外病研究調整監です。

まず強調されたのは「ウイルスはヒトへの影響はないので必要以上に心配しない」ということです。
「『コレラ』という名前がついているので、心配する人もいると思いますが、仮に感染した豚の肉や、ソーセージなどの加工品を食べても健康に影響はありません」
それでは、どのように感染が広がったのでしょうか。
「ウイルスは感染した豚やイノシシの唾液や鼻水、ふんとして体外に排せつされるので、それに健康な豚が接触することで感染します。今回の場合は、ウイルスに感染した野生のイノシシが養豚場に入り込んで豚と接触して広がったことや、豚が密集して飼育されている中で感染して症状が出る前に他の養豚場に出荷されて感染した可能性があります」
そして山川海外病研究調整監は国内では去年9月までの26年間、豚コレラの発生はなかったことから、海外からウイルスが持ち込まれた可能性が高いと言います。
「病気が発生している国からの家畜や畜産物自体は輸入されませんし、動物検疫所でも検査されるので、そこから漏れた形で持ち込まれたと考えられます。例えば、外国人観光客や、日本から海外に出て帰国した人が、ハムやソーセージなど、生きたウイルスが残った加工食品を持ち込んだことなどが感染原因となった可能性があります」


<影響は限定的も拡大に懸念>
190206tab.4.jpgでは、豚肉の流通や価格への影響はどうなのでしょうか。

流通大手の「イオン」では今回、豚コレラが確認された愛知県豊田市にある養豚場から、県内にある「イオンリテール」の3店舗が豚肉を仕入れていましたが、6日からは入荷していないということです。会社では、仕入れ先をほかの農場に切り替えたということで、店舗での豚肉の販売量には影響はないとしています。

また、これまでに豚コレラの発生が確認された農場で飼育されていた合わせて2万7000頭の豚はすべて殺処分されることになっていますが、全国で飼育されている豚は918万頭余りに上り、殺処分される豚は、今のところ全体の0.3%ほどです。

さらに今回、発生が確認された5府県の豚の飼育頭数を合わせても全国の5%ほどと、比較的、生産量は少ない地域です。

このため農林水産省は「発生地域では多少の影響があるかもしれないが、全国的にみれば豚肉の流通への影響は今のところ限定的だ」としていて、店頭価格への影響も今のところ大きくはなさそうです。

ただ、養豚が盛んな九州地方や関東地方に感染が拡大すれば、大きな影響が出ることも懸念されます。


<産地の対策は>
その主要な産地、感染を防ぐ対策に躍起になっています。

豚の農業産出額が鹿児島、宮崎に次いで全国3位の千葉県の畜産関係者に話を聞きました。

190206tab.5.jpg千葉県食肉公社 岩渕行雄代表
「豚コレラの発生は千葉の生産者たちも深刻に受け止めています。最近では、経営の効率化を図るため、豚を繁殖させる農場と、育てる農場を分けるケースも増えていて、農場間の移動は不可欠です。感染拡大のリスクが常につきまとうんです」
そう話すのは、千葉県内およそ200軒の生産者の豚の集荷や加工・販売を行う食肉センター、「千葉県食肉公社」の岩渕行雄代表です。

190206tab.6.jpg消毒用の石灰をまいて感染防止を図っている
国内で豚コレラが確認された去年9月以降、千葉県内の生産者の間では、感染防止の意識が高まり、農場の入り口などに消毒用の石灰をまいたり、イノシシなどの野生動物の侵入を防ぐ柵を設置したりする動きが広まったと言います。

中には、西日本で仕入れた子豚を感染が確認された地域を通らないルートで、県内に運搬する生産者もいるということです。
「海外でアフリカ豚コレラという別の伝染病が発生している国もあり、それらの国からの人や、農場内の資材の受け入れを控える業者もいます。千葉県では成田空港に近い立地を生かし、外国人観光客に農場見学などを通じて産地をアピールしてきましたが、今は立ち入りを遠慮してもらっている状況です。とにかく早く終息してほしいです」(「千葉県食肉公社」岩渕行雄代表)

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<どう防げば?>
一度、ウイルスが国内に持ち込まれれば深刻なリスクとなりうる家畜伝染病。山川海外病研究調整監は海外からウイルスを持ち込ませないための水際対策が重要だとする一方、次のように指摘します。
「以前と比べて国際的なヒトやモノの移動の量も速度も上がっている中、検疫を担当する人員は限られているので、対応が追いついていない部分もあります。旅行や出張などで海外に訪れる人も、感染防止のために国内への持ち込みが禁止されている食品を把握することや、安易に農場に立ち入らないなどの対応を心がけてほしいです」(山川海外病研究調整監)

190206tab.8.jpg禁止されている食品の不正な持ち込みは罰則の対象です。家畜の伝染病が発生している国や、持ち込みが禁止されている食品は、動物検疫所のホームページなどで確認できます。

グローバル化が進み、外国人観光客の増加などで海外との往来が増えること自体は日本にとって大きなプラスとなる一方、豚コレラの発生は、感染のリスクを防ぐ難しさを改めて示した形となっています。

投稿者:伊賀亮人 | 投稿時間:15時13分

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