2017年10月11日 (水)O157 ネットの疑問を聞いてみた


※2017年9月14日にNHK News Up に掲載されました。

群馬県と埼玉県にある同じ系列の総菜店の総菜を食べた客がO157に感染し、3歳の女の子が死亡しました。誰もが利用する総菜店で感染が起きたことで、ネットでも関心が高まっています。感染はどのような原因が考えられるのか?何に気をつければ感染を防げるのか?食中毒や感染症に詳しい専門家に聞いてみました。

ネットワーク報道部記者 大窪奈緒子・角田舞・佐伯敏

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<いつものお総菜店>
店の中は先月、群馬県と埼玉県にある総菜店「でりしゃす」の4つの店舗で販売されたポテトサラダやコールスローサラダなどを食べた22人が、腸管出血性大腸菌O157に感染し、このうち前橋市の六供店のタケノコやエビの炒め物などを食べた東京の3歳の女の子が死亡しました。

利用客の話や会社への取材によると、六供店では、一連の問題が明らかになる前は、店内に入ってすぐの右側の大きなテーブルで、炒め物や煮物などさまざまな総菜が、大皿に乗せられて販売されていたということです。大皿の上には直接トングが乗せられていたということです。

o157170914.2.jpg会社側は「当時は1枚の皿に1つずつトングを用意し、ほかの皿には使わないようにしてもらうつもりだったが、結果的に利用客がどう使っていたかは分からない」としています。
保健所はトングを介して2次的に菌が付着した可能性があると見ていますが、感染経路の特定には至っていません。


<ネットに広がる不安の声>
インターネット上では、不安の声が上がっています。

「保菌者が触ったトングやパッケージ、買い物かごから広がったんじゃないか?そう考えると怖くて外で何も触れない」とか、「トングで感染するならビュッフェ、パン屋、寿司屋、総菜屋、コンビニのおでん、ドーナツ店、讃岐うどんも危ない」など、トングを使って食品を取り分ける販売方法について不安の声が相次いでいます。

o157170914.3.jpgトングに菌が付着した可能性があると見られていることについて「トングが原因の1つだったらほとんどのスーパーマーケットで集団食中毒が発生してる!」とか「トング使い回している店(例えばパン屋)はみんなO157に感染してしまう」などと、疑問の声も上がっています。

一方、客の靴についたO157の菌が床に落ちたり、エアコンの風で菌が巻き上げられて総菜についたのではないかという見方があることについて、ツイッターでは「それを予防しろと言うのであれば外出できないし外で食品を買えないという話になってしまう」とか「無菌室で作った料理を真空パックで売るしかない気がする」などといった内容の書き込みが見られました。

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<専門家に聞いてみた>
原因がわからない現状では、不安は大きくなるばかり。そこで、こうしたネットの疑問や不安の声について専門家に聞いてみました。食中毒や感染症に詳しい東京慈恵会医科大学の浦島充佳教授です。

o157170914.5.jpg(記者)
まず、トングによるO157の感染はありえるのでしょうか?
(浦島教授)
トングの使い回しや、落ちたトングによる感染は、理論上は可能性としてありえます。ただ今回はトング自体が汚染されていたのではなく、食品が汚染されていて、トングを介して汚染が広がった可能性があるのではないかと見ています。
(記者)
パン屋やホテルのバイキングなど、トングを使って食品を取り分ける方法で販売するところはたくさんありますが?
(浦島教授)
O157は、水分と栄養分が多く30度以上の温度になると、時間とともに爆発的に増えていきます。パンは比較的乾燥しているので、O157は増えにくいと考えられます。また、O157は4度以下の温度だと増えにくいので、バイキングなどの際は、総菜の温度が低く保たれているかや、長い時間、総菜が放置されていないか、注意することが必要です。

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(記者)
カバーで覆われていないこともある回転寿司やコンビニのおでん、それからセルフのうどん店の揚げ物などはどうでしょうか?
(浦島教授)
まず回転寿司ですが、長時間、陳列されているすしは、店側が廃棄することがほとんどです。注文から提供まで時間が短いことが多く、O157の心配は比較的少ないと言えるでしょう。
次にコンビニなどのおでんですが、汁が長時間熱い温度に保たれている場合は、O157は増えにくいと考えられます。店側は温度管理にしっかりと気を配る必要があります。
セルフのうどん店などの揚げ物は、いったん高温で加熱されていて、表面が乾燥しているので菌は比較的増えにくいと思われます。
(記者)
エアコンなどの風で菌が巻き上げられて感染する可能性はありますか?
(浦島教授)
エアコンでO157が広がった過去の事例は、調べたかぎりは見当たりません。空気感染で発症する病気には、結核や肺炎、ときおりはノロウイルスによる感染症などがあげられますが、空気を介してのO157の集団感染は事例が見当たりません。

o157170914.7.jpg(記者)店側がO157を防ぐにはどうすればよいのでしょうか?
(浦島教授)最も大切なことは温度管理の徹底です!なるべく4度以下の環境で、安定的に管理することが必要です。

総菜などの食品を提供する店は、
(1)総菜は冷蔵庫で保存する。セルフ方式の場合は、温度が上がらないようにスライド式のガラス窓の冷蔵庫を利用する。
(2)夏場の食中毒が増える時期だけはセルフ形式での提供をやめ、パックで提供する。
(3)総菜が残っていても時間で区切って廃棄し、長時間常温で放置しないなどの対策が必要です。
また消費者は、買ってきた総菜は、帰宅後すぐに冷蔵庫で保管して、できるだけ早く食べきることが必要です。


<手を洗おう>

o157170914.8.jpgO157から身を守るためにどうしたらいいのか。ネットにはこんな声も見られました。

「駅のトイレを利用して手を洗っているときに観察すると、男性の約4割くらいは手を洗わずにトイレを出てる。そんな手で総菜店のトングをいじられたらO157がいなくてもヤダね」

夏、冬問わず、食中毒にならないための予防策として欠かせない手洗い。しかし、2年前に消費者庁がまとめた「消費者の手洗い等に関する実態調査」によると、トイレに行ったあと手を洗わない人は合わせて15%にも上ることが明らかになっています。
浦島教授は予防策について「調理する前や肉を触ったあと、そして食事の前によく手を洗うなど、基本的な対策をしっかり守ってほしい」と話しています。


<お総菜は“必需品”>

o157170914.9.jpg共働きの夫婦や一人暮らしが多い現代の社会では、できあいのお総菜は、必需品と言ってもよいほど、今や「あって当たり前」の存在になっています。取材した記者の中にも1週間に複数回、コロッケや煮物を総菜店やスーパーで購入している子育て中の母親がいます。
そうした中で起きた今回のO157の感染の問題。まだ詳しい感染経路などは判明していませんが、3歳の子どもの死亡はあまりにも痛ましい事態です。原因が明らかになり、私たち消費者が再び安心してお総菜店が利用できるようになることを切に願います。

投稿者:大窪奈緒子 | 投稿時間:14時37分

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