2013年12月23日 (月)食物アレルギー 増加の背景にあるのは?


食物アレルギーがある子どもの数は全国の公立の小中学校と高校であわせて45万人あまり。9年前の1.7倍に増えていることが文部科学省の調査でわかりました。その一方、医師の診断書などが提出されているのは21%にとどまっていて、明確な根拠がないまま対応している学校も少なくありません。緊急時の対処法や、給食対応など、学校で食物アレルギー対策に欠かせないはずの診断がないままでは現場の混乱を招きかねません。食物アレルギーをめぐる学校や医療現場の課題を取材しました。

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この調査は、去年12月、東京・調布市の小学校で食物アレルギーのある女子児童が給食を食べたあとに死亡した事故を受け、文部科学省が全国の公立の小中学校と高校を対象に9年ぶりに行いました。
食物アレルギーがあると学校に届けられている子どもは45万3962人と全体の4.5%にあたり、9年前(2.6%)の1.7倍の割合に増えていることがわかりました。しかし、このうち医師の診断書などが提出されているのは21%にとどまっていて、明確な根拠がないまま対応している可能性も示されました。特に、誤って原因となる食品を食べた後に重い症状が出るアナフィラキシーを起こしたことがあるとされる子どもでも37%、ショック症状に備えてエピペンと呼ばれる自己注射薬を持っている子どもでも31%しか、医師の明確な診断書などを提出していませんでした。

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こうした場合、学校現場では混乱が起きかねません。このため医師の診断書など明確な根拠がないまま給食の対応を行っていた学校の中には、こうした対応を改める所も現れています。このうち横浜市立小机小学校では以前は保護者の申告だけでも児童を食物アレルギーと判断し、給食から原因とされる食材を取り除いていました。しかし、「卵にアレルギーがある」と申告していながら「うずらの卵やアイスクリームは食べられる」など本当にアレルギー症状が出るのか疑わしいケースは少なくなかったと言います。

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このため学校では今年度から医師の診断がなければ給食のアレルギー対応はしないように改めた結果、申告が2割ほど減り、重い症状の子どもの対応に集中できるようになったということです。

sinndann20131223-4.jpg酒井均校長は「より確実な情報に基づいて学校が判断したいということで決断しました。緊急時の対応も子どもによって違うので、そのためにも正しい診断に基づいて的確に対応できるようにしたい」と話していました。

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食物アレルギーを正しく診断できる専門の医師の不足が混乱に拍車をかけている実態もあります。さいたま市民医療センターを受診した小学校6年生の女の子の母親は、これまで別の診療所などで受けた血液検査で少しでも反応が出たものは全てアレルギーと申告していました。医師から「念のために食べないでください」と指示されていたからです。

sinndann20131223-6.jpgこのため女の子は20種類近くの食材を給食から取り除いてもらっていました。しかし、血液検査ではアレルギーの疑いがあることまでは分かっても、本当に症状が出るかはその食材を食べてみなければ分かりません。

sinndann20131223-7.jpgこのため母親は、本当にアレルギーがあるのか専門医に調べてもらうことにしました。このうち「ごま」の試験では、米粒ほどの量からスタートして食べる量を少しずつ増やしていった結果、4グラム食べても症状は出ませんでした。

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この病院では、こうした試験を受けた子どものうち、実は何の症状も出ないケースはおよそ半数に上るということです。食物アレルギーに詳しい国立病院機構相模原病院の海老澤元宏医師は「血液検査が出た後の指導が十分できていないという状況があるのが問題です。食物アレルギーに関する知識を 一般の医師に広めてレベルアップをはかるとともに専門医と連携して診断や治療ができる体制作りが必要だ」と話していました。

sinndann20131223-9.jpg【取材後記】
食物アレルギーをめぐる医学は、この10年ほどで飛躍的に進歩しました。しかしそれが広く浸透していないことが問題だと思います。食べ物が制限されるということは、栄養障害などを引き起こす恐れがあるだけでなく、子どもの社会生活に大きな制限が出てしまいます。食物アレルギーに関心が高まるのは非常にいいことだと思いますが、「正しくこわがる」ためには明確な医師の診断が不可欠なのは言うまでもありません。何年も前に、診断を受けた・・といった方も、食物アレルギーは成長とともに改善するケースも多いことから、ぜひ一度専門医のもとを訪れて本当は何が食べられて何に気を付けるべきなのか、知ってほしいと思います。

全国の自治体や学校では、食物アレルギーにどう対応するか、現在様々な見直しを行っています。学校現場の責任が重くなる中で、重篤な症状の出る子どもたちに集中して対応し、事故から守ることが必要だと専門家は指摘しています。

一方で今回の調査では学校からの懸念として「曖昧な医師の診断」「曖昧な医師の指示」が問題だとする声も上がっていました。子どもにどのようなリスクがあるのか見極め、万が一の緊急時にどう対処するかも含めて、きちんとした医師の指示がないと、学校では対処できません。自己注射薬の「エピペン」を処方されていながら、打つタイミングなどをきちんと指導されていないケースもあるということです。

そもそも明確な指示ができる医師のみならず、食物アレルギーの原因となる食材を実際に食べて症状が出るかどうか見る「負荷試験」を行っている医療機関もまだ全国的に少なく食物アレルギーに困っている患者に質の高い医療が提供されていない地域も少なくありません。

調布で女の子が亡くなった事故から1年。ぜひ保護者、学校、医師とそれぞれの立場から子どもが健やかに生活できる取り組みを強化してほしいと思います。 

投稿者:山本未果 | 投稿時間:08時00分

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