2013年06月13日 (木)"コイン型電池" 子どもの誤飲に注意!


コイン型のリチウム電池は、車のキーやLEDライトなどに幅広く使われていますが、子どもが誤って飲み込む事故が相次いでいます。のどの奥に張り付いて重症化しますが、死亡するケースも出ています。一時、子どもが生死の境をさまよったという一家が、取材に応じてくれました。

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福井県で暮らす清水さん一家です。
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4年前の冬、当時2歳だった長男の異変に気づきました。急にせきこむようになりました。
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「体調を崩した程度にしか考えていなかった」と話す、父親の清水榮一さん。
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小児科に長男を連れて行ったところ、診断は風邪。せき止めをもらいましたが、飲ませても一向に良くなりません。おかしいと思い、別の診療所に行くと、今度は時折ある子どもの病気だと診断され、薬を処方されました。しかし、それでもせきはおさまりません。
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母親は「たんがからんでウフーという感じでせきをしていたので、もしかしたら死んでしまうかもしれないという不安があった」と話し、さらに別の診療所にも行きましたが、やはり風邪という診断で、せき止めを出されるだけでした。
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異変から10日過ぎてもせきは止まりませんでした。不安を募らせていたところ、夕食にソーメンを食べていた長男が突然呼吸困難になり、苦しみ出しました。母親は食べ物を詰まらせたと思い、吐き出させようとしましたが改善しません。近所で仕事をしていた父親を呼び戻し、長男を抱えて車で近くの総合病院に駆け込みました。
そこで初めてレントゲン写真を撮りました。その結果に両親は驚いたといいます。食道の位置に白い丸が写っていました。コイン型の電池を飲み込み、張り付いていたことが分かったのです。
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母親は、「なぜうちの子がそんなもの飲むのか」と思ったといいます。電池が家にあったことすら認識しておらず、心当たりはまったくありませんでした。しかし、風邪と思われた症状は、のどに張り付いた電池が原因でした。
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重症だと分かった長男は、小児外科がある隣の石川県の大学病院まで救急搬送され、摘出手術を受けました。幸い一命は取り留めましたが、食道とそこに接する気管には穴が開き、動脈が傷つくおそれもありました。
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診察した金沢医科大学小児外科学の河野美幸医師は当時を振り返り、「非常に危険で、命に関わる大出血が起こってもおかしくなかった」と話しています。長男は胃にチューブで直接栄養を送り込む“胃ろう”を作り、1か月半もの間、食事ができない生活のまま治療を続けました。
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なぜ、重症化するのか。子どもの事故を調べている東京の産業技術総合研究所で実験しました。
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コイン型のリチウム電池は、ボタン電池でなじみのある直径1センチ程度の電池より大型です。直径2センチを超えるようなサイズが多く、大きいものを誤って飲み込んだ場合、胃には落ちず、食道の中間に引っかかって止まってしまい、そこで放電することがあります。
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ハムの上に電池を置いて実験すると、すぐに電流で化学反応が起き始めます。タンパク質を溶かす強いアルカリ性の液体が生じ、それが組織を壊していきます。耳を近づけると、ブツブツと音が聞こえるほどです。
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実験開始から40分、ハムには、電池の形に沿って1ミリほどのくぼみができました。電池が胃まで落ちれば、胃は動き、電池は腸へと進んでいくのが一般的ですが、食道に張り付けば、体の中で実験と同じようなことが起きてしまいます。
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産業技術総合研究所デジタルヒューマン工学研究センターの西田佳史さんは、「こういう危険性があることはあまり認知されていないが、身の回りに電池があれば誤飲が起きる。手の届かないところに置いたり、電池を使った製品を管理することが大事だ」と話します。
その上で、「海外では、電池を取り出したときには電気が流れないような仕組みにしたり、飲み込めない大きさに膨らんだりするなどのアイデアが出されていて、コイン型電池の使い勝手を維持したまま、どう安全性を高めるか、これから知恵を出していくべき課題ではないか」と話し、電池そのものの改良の重要性も指摘しています。
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【取材後記】
紹介した重症例は、「風邪だと思っていたら、実は電池の影響だった」というケースです。医師も風邪だと思い、親も、電池の誤飲が身近な事故ではないため、医師が風邪と言うならそうなのだろうと思い、どうすることもできなかったのです。

今回の取材を通じては死亡例も確認されました。岐阜県では、平成17年に1歳3か月の男の子が、コイン型リチウム電池を誤って飲んでしまい、1日余り経って摘出はされましたが、およそ2週後に大動脈が傷つき亡くなるという事故が起きています。重症化にとどまらず、死亡することがあるのです。

子どもがコイン型電池を誤って飲んでしまったことに気づけるかどうか。「子どもから目を離さないように」とはよく言われますが、飲むのは一瞬のことです。その一瞬を目撃しない限り、親は大きな異常がなければ飲んだことはなかなか分かりません。

現状の対策としては、研究者も指摘しているように2つあります。1つは、コイン型電池を子どもから遠ざけることです。誤飲事故の相談は年間200件程度ありますが、子どもがどこで電池に触れているのかは、はっきりしません。ただ、はっきりしているものの中では、電池を使う製品から子どもが取り出して口にしているケースが目立ちます。

するべきことは、まず電池がどこにあるか把握することです。新品の電池、使い終わった電池は1か所にまとめます。そして、家の中でコイン型電池を使った製品がないか調べます。本体だけではなく、リモコンに入っているかもしれません。あれば、その製品は簡単には電池が取り出せないようになっているのか確認します。おもちゃ業界では独自の基準を作り、ねじ止めができるようになっている製品もあります。その場合はしっかりねじを締めましょう。
家の中を総点検して電池の在りかを把握した上で、子どもの手の届かないところで管理することが大切です。

もう1つの対策は、電池そのものの改良です。電池を取り出したときに電気が流れないような仕組みというのは、電池の収納部にセットされたときだけ電池側にスイッチが入るようなイメージです。飲み込めない大きさに膨らむというのは、電池に折り畳める羽根のようなものをつけて、取り出すと羽根が広がり、物理的に口に入らないというイメージです。さらに、電池を飲むと、吐き出した唾液で飲んだことがわかるよう色素を塗っておくというアイデアもあるようです。
親が注意をするのはもちろんですが、万が一のことがあっても救われるよう、そうした製品側の安全対策が進むよう期待したいと思います。

投稿者:三瓶佑樹 | 投稿時間:06時00分

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