2012年12月23日 (日)増やせ 在宅訪問の管理栄養士


いま、在宅の患者を訪問し、食事のアドバイスを行う栄養士を増やそうという動きが始まっています。12月8日、管理栄養士が専門知識を身につけるための初めての大規模な研修会が東京で開かれました。まだ少ない訪問による栄養指導を広めていくのが狙いです。在宅患者への栄養指導とはどのようなものなのでしょうか。

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在宅患者への栄養指導は、通院が困難な人の自宅を管理栄養士が定期的に訪れ、栄養状態をチェックしたり、患者や家族などに何をどのような形で食べたらいいかやその調理方法をアドバイスしたりするものです。糖尿病や腎臓病などを抱えていたり、低栄養だったりして医師が必要と判断した時に行われ、介護保険や医療保険が適用される場合は月に2回まで利用することができます。東京・足立区のクリニックに勤務する管理栄養士の中村育子さんは、1か月におよそ120件訪問指導をしています。この日は東京・足立区の61歳の男性の自宅を訪れました。

20121222zaitaku-9tamago.jpg男性は学生時代にけがで寝たきりになり、糖尿病も発症したことから自宅での栄養指導を受けるようになりました。中村さんは食事の内容を聞き取り、どのようなものをどのくらいとったらいいかアドバイスします。指導は患者の病状だけでなく、食材の好み、料理を作るのは誰か、それに経済状況なども考慮します。男性は、鶏の唐揚げが大好きで夜に週に2回は食べていたといいます。しかし、唐揚げは食べ過ぎるとエネルギー量を取り過ぎてしまいます。中村さんは唐揚げについて「皮がカロリーが高いから、できる範囲で皮の少ない部分を食べて」と、無理をせずに、できることからエネルギー量を減らしていこうと提案しました。

20121222zaitaku-5tamago.jpg                   (手にしているのは鶏肉の模型です)

また、中村さんは食事の量が増えがちな年末年始の食事についても話しました。中村さんは餅の模型を手にして、「これは1つ82キロカロリー。これなら3つ食べられる」と男性が食べていい量を具体的に示しました。さらに、砂糖やみりんを使って調理する煮物について「甘味料で煮ても美味しい」とエネルギー量を少なくする方法を教えました。

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中村さんは男性の食事を作っているヘルパーにもアドバイスしました。男性はエネルギー量を減らそうとサラダをよく食べると言うことですが、注意が必要なのがサラダにかけるドレッシングです。中村さんはヘルパーに「油が多いとカロリーが上がるので、ドレッシングも油が3分の1のものやノンオイルのものがあるので試してほしい」と伝えました。男性は在宅で栄養指導を受けるようになってから、糖尿病の指標となる血糖値などが改善しているといいます。男性は「自分でインターネットで調べることはできてもそれをどう応用するか自分でやりこなせるかは難しいので、何でもかんでも聞いています。中村さんに教えてもらえるのはありがたくて、中村さんのおかげでずいぶん助けられています。以前のまま暴飲暴食を繰り返していたら入院を繰り返していました」と話していました。

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中村さんは「在宅の患者さんは外に出ることがほとんどないため食事が一番の楽しみになってくるので、ストレスになるような制限ではなく、その方のできる範囲で食事を楽しみながら守っていただき疾病の悪化の予防と改善を目指すことを心がけてアドバイスしています」と話していました。

こうした在宅の患者のもとを訪れて栄養指導を行う管理栄養士を増やそうと、12月8日に初めての大規模な研修会が東京で開かれました。国が在宅医療を推進する中で訪問指導を行う力のある管理栄養士がまだ少ないため、日本栄養士会と全国在宅訪問栄養食事指導研究会が人材を育成するために企画したのです。参加したのは病院や老人ホームなどで働く管理栄養士およそ500人。参加者は腎臓病の患者への訪問指導について検討しました。

20121222zaitaku-7tamago.jpg日本栄養士会などは研修会の後に行われた専門的な知識を問う試験に合格するなどした人を「在宅訪問管理栄養士」と認定し活動してもらうことにしています。全国在宅訪問栄養食事指導研究会の前田佳予子会長は「訪問による栄養指導の実施率はまだ低いのが現状です。実践できる管理栄養士を出していき、その名前を栄養士会などのホームページに載せるなどして、活動できる場を広めていきたいです」と話していました。

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 在宅の患者やその家族にとって、食事は非常に重要な問題です。医療機関では患者にあった栄養バランス・量の食事が用意されますが、自宅では患者本人や家族、ヘルパーが病状などにあわせて作らなければなりません。食べ物を飲み込む力が落ちていれば、食べ物などが誤って気管に入り肺炎になる恐れもあり、「食べさせるのが怖い」、「何を食べさせればいいのか悩む」という家族も多いということです。こうした「食」は最期まで続きます。一方で、家でほとんど動くことができない患者にとっては、「食」は楽しみの一つともいえるでしょう。さらに栄養をきちんと取ることは症状の悪化を予防したり改善したりする上で非常に大事だと思います。在宅患者への栄養指導は、管理栄養士1人ではできません。患者と家族、それに医師や看護師、歯科衛生士、ヘルパーなどとの連携が重要だといいます。さらに、患者の自宅に入り、何を食べているかを見るため、患者や家族の理解や協力が大切です。こうしたことから、様々な人とのコミュニケーションをきちんと取ることができる能力も必要だということで、管理栄養士の資格があるからといってすぐにできるものではないといいます。高い能力を持った「在宅訪問管理栄養士」が1人でも増えて、在宅の患者の「食・栄養」の問題が1つでも解決すればいいと思います。

 

投稿者:中村織恵 | 投稿時間:06時00分

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